今、俺の仕事場は業界のビッグイベントの最中で、
毎日、有名ゲストが参加している。きのうはあの坂上忍が来て場内を沸かせたし、
今日は鈴木亜美が舞台で歌っていた。担当スタッフはてんやわんやの忙しさで、
声も掛けられないほどだが、そのスタッフの中にもミーハーがいる。
「鈴木亜美ですよ。あの、亜美ちゃんです。舞台見に行きませんか?というより、
我々は関係者なんだから、楽屋に行ってサインもらいましょう」と、誘われるのだが、
「何が悲しくて、俺が鈴木亜美にサインをもらわなあかんねん!」と断った。
「ほんとМさんはいつもクールですね!」と、その男は言うのだが、
俺は以前から芸能人、有名人に対しては、ほとんど何も感じることはない。
クールと言うより、関心がないだけである。
初日(12月18日)、仕事が終わって通用門を出ると、3人の若い女性たちが
ビニールシートを敷いて、座り込んでいた(17時ごろ)。明日の漫才イベントで
一番前にに座りたいのだと言う。「9時半開門だから、8時ごろ来ても大丈夫ですよ」と、
ガードマンが諭したそうだが、「いや、絶対一番で入りたい」と言って
聞かなかったそうだ。その日は、強めの寒風が吹いており、
これから明日の開門(9時半)までどう堪えるのだろうか?と、心配した。
もちろん、防寒着を着て、その他、いろいろな防寒グッズを用意してはいたが…。
そのエネルギッシュさに驚く。自分は、どんな有名料理店でも絶対並ばない。
意地を張っているわけではなく、他に選択肢があるからだ。しかし、
この女性たちに、やめとけやとか、家に帰りなさいとか、おせっかいをすることもない。
彼女たちにとっては、それが現在の生き甲斐であり、無上の喜びなのだ。
以前、今は亡き、飯島愛さんが、ゲスト出演するということで、
記者席に挨拶に来たことがある。その時に言った彼女の言葉には
感心した。いわく、「私と一緒に写真を撮りたいとか、サインしてくれとか、
絶対お断りですからよろしく!」、顔がウゼエんだよ、お前たち!と言っていた(笑)。
その啖呵に皆は唖然としていたが、俺はひとり拍手を送った。「ええぞ、それでこそ飯島愛や!」と。