うちのおかん(母親・関西風の言い方)はパチンコ中毒である。80才が迫っているのに、趣味はパチンコしかない。軽く、一億円近くは負けているのではないか?。今はさすがに1円パチンコだけど、その情熱は衰えることはない。別々に暮らしているけど、会えば、「この前10連ちゃんしてね~」と、さっそくパチンコの話題が始まる。
時々、大負けして、電話が掛かってくる。「いや、久しぶりにあんたの顔を見たいから」、「ちょっと体の具合が悪いから、様子を見に来て」と、嘘をつき、心配して行けば、「ちょっと一本(一万円)貸しといて。年金が入ったら、必ず返すから」と、必ず借金の申し込みをする。その時の目は、狩りをするときの野獣の目に似て、容赦ない(笑)。
心配なのは、それで食うものも食わず、体を壊さないか…と言うことである。定期健診で医者に行ったら、「栄養失調」と診断されたそうだ。食物より、パチンコ優先なのだ。この前、久しぶりに部屋に入ったら、佐藤のごはん(チンして2分)と、漬物が置いてあった。「おいおい、まさか、これで済ましているのか?」と言うと、おかんは照れくさそうに笑って「たまには、御馳走も食べている」と、誤魔化していた。
それで、冷凍食品を大量に持って行った。うどん、ラーメン、スパゲティ、焼き飯…。そのなかでもなるべく野菜がたくさん入っている品目を選んで…。お金を渡すと、我慢できなくなり、夢遊病者のようにふらふらとパチンコ屋に入ってしまうのだ。まるで負けることが使命のように…。
若い時は、俺も腹を立てていた。ひどい時は、月に30万円ぐらいのペースでパチンコにどっぷり浸かっていた。「いい加減にしいや。あんたみたいなアホは見たことないわ」と、罵声を浴びせ続けていた。しかし、ある時、驚愕の事実を知り、文句を言わなくなった。
人間には色々な病気があるが、ある日、おかんは脳がマヒして、文盲状態になったらしいのだ。文盲…、そう読み書きが難しいあの状態である。普通の生活には支障はないが、新聞、雑誌、小説などはまったくだめで、テレビなら問題なしということだった。
今の時代、字が読めず、字が書けなければ何もできない。それゆえに、パチンコにハマったという、悲しい物語である。数字は分かるらしいから、そのゲーム性に日々の憂さ晴らしを求めたのも納得が行く。でも、負けすぎである。食事代まで使ってしまうのだから、重症だ。負けが込むと腹を立て、千円札がどんどん玉貸機に吸い込まれ、4,5日で1カ月分を使うこともある。その時は、あらゆる手を考えて、俺を呼ぶ。そして、お金の無心をする。
と言っても、最近は1円パチンコで相場が4分の1になり、せいぜい月に1万円程度である。考えてみれば、おかんは、そのパチンコのおかげで覇気を持ち、生きる望みを維持しているのではないかと思うようになった。友人の何人かは親がぼけていると言う話を聞くが、うちはパチンコのおかげで心身ともに良好である。なにしろ、パチンコ屋に行く前は、目がらんらんと輝いている。
こうなれば、パチンコ大歓迎ではないか。1円パチンコができて、本当にそう思うようになった。おかんよ、お金が許す限り、好きなだけパチンコをすればいい。俺はすっかり足を洗っているが、たまには一緒に打ってやるか~これが最大の親孝行だろうな~。
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