当団首席客演指揮者藤岡幸夫の指揮に上原彩子をソリスト迎え、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番ハ長調作品26とラフマニノフの交響曲第2番ホ短調作品27を組み合わせた熱いプログラムだ。プロコフィエフは7月に京都で同じく上原と沖澤のどかの指揮で聴いたばかりだが、上原のピアノは技巧的には一切不満はないのだが、京都の時に比較して音量が不足していささか勢いが無いように聴こえた。これは会場のせいか、あるいはオケの音とのバランスのせいなのかもしれない。一方小さな音の部分ではオケが音量を落とすので透明で繊細なピアニズムに新たな発見があった。抜群の疾走感と爽やかさに貫かれた快演といった印象。アンコールはしっとりと前奏曲op.32-5。まさに対照の妙を感じさせる心憎い選曲だ。休憩を挟んだラフマニノフはもう藤岡の独壇場だった。機能的に充実を極める今のシティ・フィルを存分に鳴らして切ってロマンティックの極致たる表現だった。とりわけジックリ濃厚に歌い切ったアダージョは圧巻だった。心をこめた弦のメロディーに心を掴まれたのは当然のことだが、木管群とホルンの美しい「密かな愛の対話」のごとき掛け合いに滲み出た深い抒情は当日のハイライトだったのではないか。終楽章は厳格なシベリウス的な音をも感じさせながら、ロマンティックな回想も挟んで圧倒的なフィナーレに至るまで、熱いけれど品格を失わない藤岡らしい充実した仕上がりだった。
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