2023年度幕開きのシティ・フィル定期は何とも渋い選曲だ。しかもいづれも祈るように終わる共通点を持つ曲である。そこに込められたメッセージは誠に時節を反映した”平安の希求”ともいうべきものだろう。一曲目はブリテンのシンフォニア・ダ・レクイエム作品20。1970年の大阪万博記念演奏会で、来日直前に急逝したバルビローリの代役を務めたプリッチャード+フィルハーモニア管で聴いて以来、いったい幾度この曲を聴いてきたことだろう。その中で今回の高関建の作る音楽ほどこの曲に「動と静」のめりはりを与えた説得力のある演奏をこれまで聴いたことがない。さらに精緻に研ぎ澄まされたシティ・フィルの演奏が曲の神髄を見事に描き出した。続いては俊英山根一仁の独奏を加えてベルクのバイオリン協奏曲。山根の技巧と繊細な音色がガラス細工のように透明で静謐な曲想とがベスト・マッチし、苦渋と魂の浄化を表すような二曲を静かなアーチで結んだ。ソロアンコールはバッハのパルティータ第1番からサラバンドが静謐に奏でられた。そして最後はオネゲルの交響曲第3番「典礼風」。非人間的なるものに対するプロテストと祈りによる癒しを表したような曲である。ここでも高関の棒は正確さを求めつつ、ただそれだけで終わらずに曲の神髄にどんどん入り込んで意味ある音楽を作ってゆく凄さがある。こういった次元の音楽に到達できたのも、9年間自ら鍛え続けて、今や一部の揺るぎもないシティ・フィルがあっての事であろう。
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