MY LIFE AS A DOG

ワイングラスの向こうに人生が見える

2円で刑務所、5億で執行猶予

2010年01月07日 23時08分41秒 | 読書
新年早々、目から鱗の一冊に出会った。
「2円で刑務所、5億で執行猶予」(浜井浩一著 光文社新書)、一見ふざけたタイトルであるが、中身は大真面目である。非常に興味深い本だ。

刑事政策の専門家である著者が、専門家を蚊帳の外に置いたまま世論に迎合する形で一方的に(?)進んでいく“誤った”刑事政策に、一つ一つデーターを示しながら反論を加え、真に有効な刑事政策とはなにかを論じる。まさに「警世の書」といった趣がある。

たとえば、私も含めて多くの日本人は「現在の日本は、凶悪犯罪が増加し、犯罪の低年齢化が進み、外国人の犯罪も増え、なんとも住み難い国になってしまった」と感じている。

しかし、実際の統計データをみると、殺人などの凶悪犯罪の認知件数は戦後最低となっており、犯人の年齢別では、年齢60才以上の年寄りの犯罪のみが増加傾向にあるほかは、すべての年齢層において検挙件数は横ばいかもしくは減少傾向にあるということが示される。また、検挙人数全体における外国人の割合も増加はしていない。つまり、実際に治安は悪化しているとはいえない。それどころか、現在の日本は戦後もっとも治安が安定しているとさえ言える。(管賀江留郎氏の「戦前の少年犯罪」という本には、宮崎勤もびっくりするような戦前の少年犯罪がこれでもかというぐらいに紹介されているから興味のある人はご一読を)
にもかかわらず人々は治安が悪化していると感じており、徒に不安を煽るマスコミ報道の影響も相俟って、人々の犯罪者に対する処罰感情は高まりをみせる一方である。

このような流れは、必ずしも日本だけの問題ではなく、欧米の多くの国々で同様の傾向がみとめられるのだという。
何故人々はそんなに不安に駆られているのだろうか?

一方、犯罪の認知件数は減少しているのに、なぜか刑務所に収容されている服役囚の人数はむしろ増加しており刑務所はつねに満杯の状態だという。
何故このようなことが起こるのか?

また、タイトルにあるように、被害金額がたった2円でも懲役刑になる場合があるかと思えば、5億円の詐欺事件(つい最近話題になったあの有名音楽プロデューサーの事件)でも執行猶予になる場合もあるというが、これは何故なのか?

数年前に話題となった「累犯障害者」という本のなかでも指摘されていたが、刑務所に服役している服役囚の実に4人に1人が知的障害者であるという事実を我々はどう考えればよいのか?

我々の誤った常識が次から次へと覆され、真に有効な刑事政策とは何なのかという問題についてさまざまな示唆を与えてくれる良書。

是非ご一読を。
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