MY LIFE AS A DOG

ワイングラスの向こうに人生が見える

エルビン・ジョーンズ讃

2004年05月21日 14時01分41秒 | Jazz
ジャズドラマーのエルビン・ジョーンズが死んだ。
心臓病だったそうだ。
ジャズを聴きかじったことのある人ならエルビン・ジョーンズという名前ぐらいは知っているかもしれない。
ましてドラムをやっていた人なら知らないひとはまずいないだろう。

僕が昔師事したドラムの先生は熱烈なエルビン崇拝者であった。
「いいか?次にエルビンが来日したらどんなに金払ってもいいから絶対見にいけよ!!」
と、いつも口癖のように言っていた。
「チャーリー・パーカーなんて一億積んだって、もう絶対ナマじゃみられないんだぜ!
エルビンが生きてるうちに見ろ!そのために一万円払ったってたいした金額じゃない!約束だぞっ!」
と興奮しながら話していたのをつい昨日のことのように思い出す。

エルビンの自由奔放なリズムは譜面に起こされることを頑なに拒絶した。
ドラムのスコアにはしばしば“like Elvin Jones(エルビン・ジョーンズ風に)”などと表記されるのみで、常に演奏者の頭を悩ませた。

エルビンのドラムは一言でいうと“地響き”である。
彼のドラムには光り輝きはじめる前の、宝石の原石のようなずっしりと重みのある質感と、乾いたアフリカの大地の発する咆哮の如き響きがあった。
現在のデジタル技術が贅肉を削ぎ落とし音のエッセンスのみを際立たせることを身上とするのなら、彼のドラムはゼロと1の数字の羅列の中でその輝きを確実に失うに違いない。

彼の音は“塊”なのだ。
“塊”となってはじめて意味を持つ。
太鼓の胴が軋み、シンバルが共鳴し、スティックが撓り、汗が迸り、空気が振動する。
そのすべてが一塊となって命を帯び、その中に緊張と混沌が宿る、、、

時にコルトレーンを凌駕し、トミー・フラナガンを煙に巻いたエルビンの圧倒的な存在感の中に
僕はジャズの“進化”を見ていたような気がする。

ジャズを創った男がまた一人逝った。
そして、僕は先生との約束を果たせなかった。
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2 コメント

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はじめまして。 (h-nkmr)
2004-05-23 13:02:36
僕はバリバリのジャズファンではないのですが、新聞でエルヴィン・ジョーンズの死を知り、うちにあるCDを聴いたりしてました。今はコルトレーンのBalladsを聴いてます。あんまりドラムが目立つアルバムではないですが、All or nothing at allのドラムかっこいいなー。ジャズの中では一曲一曲の時間が短いので僕のような集中力のないポップスファンには聴きやすいアルバムです。上の文章を読んでいろいろ聴いてみたくなりました。kazu-nさんのお薦めのレコードは何でしょうか?
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月並みですが (kazu-n)
2004-05-23 14:04:10
h-nkmrさん。

ようこそいらっしゃいました。

初コメントありがとうございます。



エルビン・ジョーンズは本当にいろんなミュージシャンと共演してるからなかなか難しいですねー、、

でも一枚選んでといわれたら、月並みかもしれないけど、、、

やっぱ“至上の愛”なのかなー。とにかく、あれは突出してると思うんですよ。

なんと言うかマジで鬼気迫るものがある、、



誰かがフルトヴェングラーのバイロイト管弦楽団の第九に匹敵すると書いてたのを見たことありますが、本当にそういう感じです。
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