MY LIFE AS A DOG

ワイングラスの向こうに人生が見える

コレクター的映画鑑賞とは。。

2006年02月07日 13時33分58秒 | どうでもいい話
精神科医の斉藤環氏によると、オタクとマニアの違いは“対象”に対する性的な思い入れがあるか否かだという。性的な思い入れを持つほうが“オタク”、そうでないほうが“マニア”なのだそうだ。例えば“アニメオタク”の人は、アニメの登場人物に何らかの性的な感情を抱いており、この一種独特な性的感情のことを“萌え”と表現するのだという。したがって、性的な感覚を抱きにくいと思われる対象、たとえば「切手」とか、「くるま」に対しては通常オタクは存在しえないと斉藤氏はいう(逆にいたら怖いけど。。。)。つまり「切手」は切手オタクではなく切手マニア、「くるま」もくるまオタクではなく、くるまマニアなのだ。
さらに斉藤氏は、マニアとコレクターの違いについても言及している。それによるとコレクターというのは、まさに「蒐集」が自己目的化している人のことをいうらしい。

なぜこんな話をいきなり持ち出したかというと、この斉藤氏の指摘が、僕の最近の映画の見方の傾向をそれなりに言い当てているように思えたからだ。
たとえば、僕は自分が“映画好き”だとは思うけれども、決して“映画マニア”だとは思っていない(もちろん映画オタクであるとも思わないのだが)。僕が考えるところの映画マニアというのは、それこそ
TVチャンピオン(今もやってるのかな)とかクイズカルトQ(懐かしい!)に出てくるような人たちのことである。
昔、クイズカルトQでホラー映画カルトの回があったのを覚えている。そこでは映画の「キャーッ!」という悲鳴の音声だけを聞いて、映画のタイトルと監督名を当てるというのをやっていた。僕の耳では、到底聞き分けられないような悲鳴のトーンを、マニアの人たちが見事に聞き分けるのを見て「うーむ。これこそマニアだ!!」と感動した覚えがある。
ということで、そういう人たちと比較すると自分は単なる“映画好き”以上の何者でもないことは明らかなのであるが、実は最近こんな自分の映画の見方にもある傾向があることに気が付いたのだ。

たとえば、しばらく前にデビッド・リンチの「マルホランド・ドライブ」を観たのだが、その後、リンチの全作品をどうしても見たくなって、レンタルビデオ屋をあちこち梯子したり、あるいはレンタル出来ない作品があると分かると、買ってでも観たいという衝動に駆られたりした。
はるか昔に「エレファントマン」「デューン/砂の惑星」「ブルー・ベルベット」の3本は観たことあるので、とりあえずこれらはいいとして、それ以外のもの、すなわち「イレイザー・ヘッド」「ストレイト・ストーリー」「ロスト・ハイウエイ」「ワイルド・アット・ハート」「ツインピークス」etcを見るために、ヒューストン中の(ちょっと大げさかな。。。)ビデオ屋をチェックしまくったのである。さらに、「ツインピークス」のセカンド・シーズンが版権の問題でDVD化されていないなどという話を聞いた日には、もう大変な落ち込みようなのである。
「あーー、なんで手に入らないんだーーー!!!」という具合に。

そしてはっと気が付いた。
これこそまさに斉藤氏の言う“コレクター”の心理に近いのではないかと。

正直なところ、自分はそれほどのリンチファンではない。であるからして、彼の映画が観たくて観ているというというよりも、むしろ、一通り見てしまわないとなんとなく気分が悪いというか、居心地が悪いというか、まとまりが悪いというか、そんな気になってくるのだ。もっと言うなら、彼の作品を網羅するという行為が半ば自己目的化してしまっているのである。そしてもちろん、この傾向はリンチにとどまらず、対象がペドロ・アルモドバルだろうが、へクトール・バベンコだろうがデレク・ジャーマンだろうが同様なのだ。(ただし、お金がないので、買ってまで見ることは稀なのだが)
思うに、自分には、“全部観たい願望”が普通の映画好きの人よりは強いのではなかろうかと感じる。

確かに、自分は幼い頃から漫画本一冊買うのにも、なぜか「ドカベン」とか「釣りきち三平」のような巻数のめちゃめちゃ多いものを一生懸命買い集めていたような気がする。
そして、(これが最大のポイントなのだが)実際の「釣りきち三平」の内容自体は途中からどうでもよくなってきたように思えるのだ。つまり、すべてを揃えて本棚にきれいに並べるために「釣りきち三平」を買い漁っていたような気がするのである。
これこそ“コレクター気質”以外の何者でもないではないか!

以前、あるクラシックCDの蒐集家のHPをみていたらこんなことが書いてあった。
「買ってくるけど、ほとんど聴かない」と。

「えっ? 買うだけで、聴かない???」
もう少し正確に言うと、一応は聴くつもりでCDを買ってくるのだが、聴きもしないうちに新しいCDを次々に買い込んでいてしまうので、結果的に一度も聴いたことのないCDがどんどん増えてしまうということらしい。そのため、その人のコレクションは、「CDだけを一生聴き続けたとしてもとても全部を聴きとおすことができない」くらい膨大なものになってしまったそうだ。
そうなると、まさに本末転倒のような気もするが、しかし、これがコレクター心理というものなのではなかろうか。

ということで、こういう人を見ていると、自分なんてまだまだ普通じゃん、と思うのだがその反面、このCD蒐集家と同じ匂いを自分自身にもどことなく感じてしまう今日この頃なのであった。

おわり。
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