退院して5日後、木曜日の朝9時から病院での検査予約である。
朝8時過ぎ、家を出て京王線に乗って、病院の最寄り駅まで行く。電車でこの病院に行くのははじめてというか、1度だけしか行ったことはなく、その時は救急搬送であったわけだ。
駅から10分程度だろうか、のんびり歩く。大きな病院なので、すぐわかるだろうと思っていたが、近くに大きな施設がいくつかあり、近づいているのかどうか自信が持てないで歩いていた。結局、病院の裏側に着き、遠回りしていたようだ。
ちなみに歩いていると、警察大学校があって、警察だけあって、門番に警察官が立っていた。厳しい顔つきで立哨しているが、「ご苦労さん」という気持ちもあるにはあるが、「人間らしい顔つきじゃあないなあ」などと思いながら通った。
そういえば、夕方にこの前を通ったことがあったが、この学校の生徒、つまりのちの警察官たちだが多少の馬鹿騒ぎをしていたものだ。「それでよろしい。若者らしくて」などと思ったものだ。私の反応は一般の人と違うかなあ?
さて、病院に到着。受付をするのははじめてだ。受付の窓口に行き、診察券と保険証、それと予約票を渡しつつ、事務員に予約があることを告げる。受付前で待つように案内される。ちなみにこの病院は紹介状がなければ初診の受付をしないし、再診も予約のみである。
15分程度待つと、受付のファイルを持って名前を呼びながら事務員が座っている所までやってきた。呼ばれるのではなく、1件1件事務員が座っている所までやってくるのだ。丁寧なことだ。その時、診察券の写真を見ながらなので、それで確認しているようだ。
3Fにある核医学検査用の部屋を案内される。はじめて行く場所だが、私は回りくどい説明が嫌いなので、ポイントだけの説明だったので、よかった。ちょうど予定通りの9時である。
よくある馬鹿丁寧な案内や説明は情報のエントロピーという点で結局分かりづらくなるだけだ。そんなに丁寧に扱ってもらって、訳のわからない自我を満足させてもしょうがないではないか。マナーはほどほどでよろしい。
検査室に入ると、まず検査用の待合室があり、そこは8畳程度の広さで、テレビと検査の冊子が置いてある。検査受付用のスタッフが来て、着替えるように指示される。更衣室に入り、パンツ一枚になり、病院着となり、貴重品等はロッカーに入れる。少し待っていると、おそらく医者や検査技師がやって来て、奥にある部屋にはいいていく。5分程度でお呼びがかかる。ちなみに検査のため、絶食どころか、水分も取れないことになっていた。
核医学検査は放射性同位元素を用いた検査である。微量の放射線を出す薬を静脈注射で体内に入れて、放射線のγ(ガンマ)線を測定できる画像診断の機械で臓器や体内組織の様子を観察する。私の場合は、心臓やその周りの血管の動きなどを観察するために行うとの説明を受けた。
ガン検査でPET検査という名前を聞くと思うが、あれである。ただ私の場合は少し違う検査になる。誰が考えついたのかは調べる気もないが、放射線を体内に入れるとは如何なものかと思いながら、まあいい歳だし、大した問題もないだろうとも思う。
先のパンフレットではさすがX線よりは被曝量が多いが、自然被曝と大差ないとして安全であるとの説明がなされていたが、自然被曝と検査での被曝を安易に比較していいのだろうかと感じる。そういえば、フクシマの放射線量をよく自然被曝と比較したりする解説が当時あったなあと思い返していた。
こういう解説は安全であることを補強しようとする意図があったように思うが、自然な環境での自然な放射線量が危険にならないのは、生物が存在するとして、長い歴史的経過を元にその環境に、その生物が適合しているからであろう。その意味で、人工的な被曝とはまた違ったものの見方をする必要があるのではないかと、当時思っていたのだ。今回も同様のことを考えたりした。
検査技師が確か青い薬品の入った注射器を準備していた。
(つづく)