3月も半ばだと言うのに、北関東の茨城県水戸市は風が冷たい
女ひとり旅、「マイ センチメンタルジャーニー」が今から始まろうとしている
水戸は私が結婚後、初めて暮らした街・・・
もう30年も以前の思い出深い街なのだ
それまでは関西から出たことが一度も無かった
他県に住むことなど、想像だにしていなかった
ここで、夫と二人っきり、これからどんなことが始まるのか・・
嬉しくもあり、恐ろしくもあった
今から思うと、野のユリのような?清純なうら若き乙女であった
今夜は水戸芸術館で「河村尚子ピアノコンサート ショパンプロジェクト」を聴く予定になっている
その後、水戸駅南の「東横イン」(会員になっている)に一泊して、翌日は「偕楽園」で観梅をしてから、帰宅する
ピアノコンサートを兼ねた <過去を辿る旅>である
20歳そこそこの頃、この地の某楽器店で4年間、仕事をした
今はどうなっているのだろう~
未だ健在だろうか・・・
靴音が次第に不安なリズムを刻み出す
〇○楽器店の看板がだんだん、近づいて来る・・・
あった、あった!
当時の栄光はもはや消え失せて、店頭もひっそりしている
もう誰も私を憶えている人など、いないだろう・・
初老の男性が、二人うつむき加減で何か作業をしている
その一人に
目が釘付けになってしまった
すっかり薄く白くなった毛髪、小柄な体が、ますます小さく見える
でも、あの面影は、確かにOさん!
0さん!と呼び掛けてみたいのだが、声が、出ない
そう言えば
いつだったか、この店の店長として活躍していると、聞いたことがあった
年月は、過酷だ
人の風貌をこれほどにまで変えてしまう
私も同じだろう・・
声をかけたところで、誰だか解ってもらえない
おぼろげな記憶の糸を辿って、やっと思い出せても・・・
それが何だというのだろう・・
店内をゆっくり歩きながら
黒と黄色の音符のクリップをふたつ選んだ
Oさんは、ていねいに包んで、にこやかに私に手渡してくれた
「ありがとうございます」と、彼・・
私もにっこり微笑んだ
30年の歳月が、一瞬にして通り過ぎるのを、感じる
ドアを開けて、外に出る
夕暮れの冷たい風にふいに目を覚まされる
さてと!
深呼吸~!(^O^)/
足取りは打って変わって軽くなる
今日のディナーは
水戸の老舗、木内酒造の経営する創作料理の店「なか屋」である
(続く)