磯崎新(いそざきあらた)氏がデザインした「水戸芸術館」は
らせんを描くように天空に向かって伸びる三角形の特徴的なシンボルタワーを持つ。
これは歴史ある水戸の街に新しい文化の風を吹き込んだ。
此処のホールはクラシック音楽に最適なウッディな造りとなっているので、音響効果、抜群だ。
http://arttowermito.or.jp/about/about01.html
さて、「演歌顔(えんかがお)」というのがあるように、「クラシック顔」もあると、私は思う。
この日の聴衆は80%が、クラシック顔だった。
彼らは、厳かで、おちついていた。
時おり、ひそやかな話し声が聞こえるのみ・・・
皆、この日の演奏を待ち望んでいたのだろう。
河村尚子(かわむらひさこ)さんの演奏を聴くのは2回目だ。
恥ずかしながら、最初は名前も存じ上げないまま、ショパンの曲が聴ける・・ということだけで行ったのだが、
その素晴らしさ、凄さに衝撃を受けたのを思い出す。
本日のプログラムは、オールショパンである。
華麗なる変奏曲 変ロ長調
マズルカ イ短調
ノクターン 変二長調
舟歌 嬰ヘ長調
ワルツ 変イ長調
ポロネーズ 第六番 英雄
<休憩>
ピアノ協奏曲 第二番ヘ短調 (ピアノ五重奏版)
♪ ♪ ♪ ♪ ♪
演奏の合間に時々トークが入る。
シックなブルーのドレスに身を包み、微笑みながら話す
彼女は、聡明でチャーミングな育ちの良いお嬢さん・・と言った感じだ。
が、演奏に入ると別人のようだ。
時には情熱的にダイナミックに、時には繊細でメランコリックに・・
表情を変え、色彩を変える。
日常に忙殺され、すっかり忘れていた心の内奥に眠る感情を呼び起こされる。
胸に熱いものが込み上げてくる。
数曲のアンコールの後、ラストのラストが
「ノクターン 嬰(えい)ハ短調」
この曲はショパンの中でも、最高に美しい。
映画「戦場のピアニスト」で使われていたので、一躍有名になった。
最後に打鍵されるのが高音の「嬰ハ」音。
(楽譜ではPPP(ピアニシシモ)できるだけ弱く・・と表示されている。)
その最後の一音を弾ききった彼女の右手は
1秒、2秒、3秒、4秒、5秒・・・・とまだ宙に浮かんだままだ。
聴衆も固唾を呑んで、消えゆく「嬰ハ」を惜しんでいる。
そうして終に・・・
彼女の右手はスローモーションのように下がった。
今まで張りつめていた空気が、ほっと抜けた。
満足感いっぱいの、静かな拍手が会場を満たす。
弾き手と聴き手が一体となった素晴らしいコンサートだった・・・
https://www.youtube.com/watch?v=vkEuUf2Fl3c
(フジ子・ヘミングの演奏で)
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長文、駄文を最後まで読んでいただきましてありがとうございました。
私にとって、有意義な旅となりました。
翌日、偕楽園にも訪れました。
梅は、どんなに年月が経っても、まるで何事もなかったよ・・・と言っているように
澄み切った早春の青空に、楚々とした可憐な花を咲かせていました・・・・
「My Sentimental Journey In 水戸」 (完)