みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0979「恋したい」

2020-11-04 17:51:21 | ブログ短編

 彼女はまだ、恋(こい)とかそういうのに不慣(ふな)れな女性だった。そんな彼女が恋をした。でも、恋の駆(か)け引きなどできるはずもなく、彼女は彼に直球(ちょっきゅう)を投(な)げつけた。
「あの、結婚(けっこん)されてますか? それとも独身(どくしん)……」
 そんなことを突然(とつぜん)ふられても――。でも、彼は手慣(てな)れた感じで答えた。
「もちろん、独身だよ。僕(ぼく)と付き合いたいの? いいよ、君(きみ)みたいな――」
 彼女はおどおどしながら、「でも…、でも、好きな人とかいるんじゃ…」
「好きかどうか分かんないけど、たまに会ってる娘(こ)はいるかなぁ。でも、かまわないよ。僕のこと好きなら、付き合っても。これから、どっか行くかい?」
「いや、わたしは…。そういうのは…。ふ、不倫(ふりん)とか、そういうのダメなんで…」
「別にこんなの不倫じゃないでしょ。それに、男はみんな不倫をするもんだと思うけど」
「そ、そんなこと…。わたしは……」
「まさか、一人の人と死(し)ぬまでって思ってる? 今どき、そんなこと流行(はや)らないよ」
 彼女はうつむいてしまった。何をどう答えればいいのか分からなくなっていた。
 彼は、そんな彼女の顔を覗(のぞ)き込んで、「いや、いいねぇ。何か新鮮(しんせん)だよ。ねぇ、僕、もっと君のこと知りたくなっちゃった。どうかなぁ、これから一緒(いっしょ)に――」
「ごめんなさい。やっぱりムリです」彼女は逃(に)げ出してしまった。
<つぶやき>人は見た目では分からない。付き合ってみなければ本心(ほんしん)は見えないのかもね。
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