最近(さいきん)の僕(ぼく)はツキ過(す)ぎている。商店街(しょうてんがい)の福引(ふくび)きで2等(とう)を当て、少額(しょうがく)ながら宝(たから)くじも…。それに、見ず知(し)らずの女性から告白(こくはく)もされてしまった。
これはどういうことなんだ? 今まで、こんなことなかったのに。これはもう、誰(だれ)かが僕のために動いてくれているとしか――。まさか、未来(みらい)から来た人が僕のために…。僕の子孫(しそん)がやって来ているのかもしれないぞ。
僕は付き合うことになった彼女に訊(き)いてみた。どうして僕なんかを好きになったのかと。
彼女は答えた。「だって、あなたって有名(ゆうめい)な小説家(しょうせつか)になるんでしょ」
僕は小説なんか書いたことないし、読書好(どくしょず)きでも…。
「あなたのお友だちから聞いたのよ。あなたって、すっごく才能(さいのう)があるんだよね」
誰だ? 誰なんだ。僕には思い当たる友だちなんていない。どういうことだ? まさか、子孫が…。僕に小説家になれってことなのか? 僕は思わず言ってしまった。
「いや…、才能があるかどうか分からないけど…、小説家を目指(めざ)してはいるよ」
彼女は嬉(うれ)しそうに目を輝(かがや)かせた。僕は、そんな彼女を見て胸(むね)がキュンとなった。もう、彼女から目をはなすことができない。彼女を失(うしな)うなんて耐(た)えられない。僕は決意(けつい)した。絶対(ぜったい)に有名な小説家になってやる。彼女を幸せにできるのは僕だけだ。彼女は言った。
「ごめんなさい。あたし、次の約束(やくそく)があるの。また会いましょ。連絡(れんらく)してね」
<つぶやき>いやぁ、これはムリでしょ。それに、この彼女、すごく怪(あや)しいと思います。
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