みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0989「ふざけた展開」

2020-11-24 18:00:23 | ブログ短編

〈彼女はごく普通(ふつう)の女の子。ただひとつ違(ちが)っているのは、彼女の中指(なかゆび)はおしゃべりおじさんだったのです〉
「先生(せんせい)、何ですか、これ…。ふざけてるんですか? こんなの採用(さいよう)されるはずないじゃないですか。もっと、真面目(まじめ)に考えてください」
「そんなこと言われても…、あたし、もう何も思いつかないんだもん」
「先生なら大丈夫(だいじょうぶ)です。先生の恋愛小説(れんあいしょうせつ)はベストセラーになってるんですよ」
「だって、あたしの中にある恋愛の引出(ひきだし)は、もう空(から)っぽなのよ。何を書いても、同じことの繰(く)り返しで…。ホラーとかオカルトとか、そういうの入れるしかないの。それがダメなら、もうあたしは書かないわ。もう限界(げんかい)なんだから…」
「分かりました。先生が苦(くる)しんでいるのは…。だったら、その方向(ほうこう)で考えるということで…。じゃあ、このおしゃべりおじさんが彼女の恋愛の手助(てだす)けをするんですね?」
「そんなの、つまんないわよ。彼はね、悪(あく)の化身(けしん)なの。彼女の恋愛をことごとく邪魔(じゃま)して、彼女の幸せを奪(うば)っていくのよ」
「ちょっと待ってください、先生。それじゃ、今までの作風(さくふう)が…。読者(どくしゃ)が納得(なっとく)しないと…」
「別にいいじゃん。ハッピーエンドなんてどうでもいいわ。みんな不幸(ふこう)になればいいのよ」
「先生…、何かあったんですか? 私でよければ、話し、聞きますけど…」
<つぶやき>作家(さっか)も悩(なや)み多き人間なのね。でも、ちょっとこのお話し読んでみたいかも…。
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