みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0990「しずく113~実戦」

2020-11-26 17:48:07 | ブログ連載~しずく

 水木涼(みずきりょう)には考えている時間(じかん)はなかった。日本刀(にほんとう)の男は涼に斬(き)りかかった。何も持たない涼は逃(に)げるしかなかった。二度三度となんとかかわしてきたが、どんどん追(お)いつめられていく。逃げ場はもうなかった。男はじりじりと間合(まあ)いをつめて、涼を斬りつけた。
 涼は庭(にわ)に倒(たお)れ込んだ。右腕(みぎうで)に痛(いた)みが走り、赤い血(ち)が流れ出ている。涼には命(いのち)がけの実戦経験(じっせんけいけん)などなかった。彼女は完全(かんぜん)に動揺(どうよう)して戦意(せんい)を失(うしな)ってしまった。男はまたニヤリと笑(わら)い、涼に刀(かたな)を向けた。もうダメだ。涼は震(ふる)えながら目を閉じた。
 その時だ。聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。
「何してるのよ。あなたって、そんな弱虫(よわむし)だったの?」
 それは、川相初音(かわいはつね)の声だった。涼が目を開けると、日本刀の男は倒されていて、二人の前には男たちが楯(たて)のように立っていた。初音は涼に叫(さけ)んだ。
「さあ、逃げるわよ。あたしの能力(ちから)じゃこれが精一杯(せいいっぱい)なの」
 初音が涼の手をつかんで立たせると、逃げ道を探した。だが、日本刀の男は、男たちの上を飛び越(こ)えて、二人の前に立ちはだかった。男は刀を二人に向けた。二人は塀(へい)まで追いつめられていく。その時、上の方から指笛(ゆびぶえ)が聞こえた。見上げると、屋根(やね)の上に人の姿(すがた)があった。それを合図(あいず)に、男たちは走り去って行く。屋根の上の人影(ひとかげ)も消(き)えてしまった。
 ほっと息(いき)をつく二人。その直後(ちょくご)、家の中から爆発音(ばくはつおん)とともに火(ひ)が吹(ふ)き出した。瞬(またた)く間に、家は炎(ほのお)に包(つつ)まれた。涼が叫び声をあげるが、爆発音にかき消されてしまった。
<つぶやき>両親(りょうしん)を助(たす)けることはできなかったのか? 涼にとって辛(つら)いことになって…。
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