みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0986「秘宝なのに」

2020-11-18 17:52:20 | ブログ短編

 とある由緒(ゆいしょ)ある神社(じんじゃ)から秘宝(ひほう)が盗(ぬす)まれてしまった。刑事(けいじ)たちは犯人逮捕(はんにんたいほ)に躍起(やっき)になった。その甲斐(かい)あって、三日後に犯人は逮捕された。秘宝も無事(ぶじ)に発見(はっけん)されたのだが――。
 秘宝は桐(きり)の箱(はこ)に納(おさ)められていたのだが、箱の封印(ふういん)がはがされていた。刑事は考えた。
「まさか売(う)りさばいたのか? これは、中を確認(かくにん)しないと。まずいよな…」
 しかし、神主(かんぬし)から箱の中は絶対(ぜったい)に見ないようにと言われていた。
「でもなぁ、もしなくなっていたら…」
 刑事は恐(おそ)る恐る箱の蓋(ふた)を開けてみた。すると、中には一回(ひとまわ)り小さい別の箱が入っていた。
「これは…、めちゃくちゃ重要(じゅうよう)なお宝(たから)ってことなのか?」
 刑事の心にある衝動(しょうどう)がわき上がった。それは、押(お)さえようのない欲求(よっきゅう)に変(か)わった。刑事はそっと中の箱を取り出した。その箱にはしっかりと封印が残(のこ)っていた。封印の感じから、もう何百年も開けられていないようだ。ここで、神主の言葉(ことば)を思い出した。
〈もし秘宝を見てしまうと、災(わざわ)いがふりかかると言われているんです〉
 刑事は迷(まよ)っていた。神主の話は迷信(めいしん)だと思うのだが、もしものことがあったら…。
 そこへ後輩(こうはい)の刑事がやって来た。その若い刑事は何の躊躇(ちゅうちょ)もなく言った。
「これっすか? うわっ、見ましょうよ」彼は箱を手に取ると封印をはがしてしまった。
「何すんだよ! ダメだろ。こんなことして、もしものことがあったら……」
<つぶやき>若い連中(れんちゅう)は、何のためらいもなくやっちゃうんだよねぇ。うらやましいかも。
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