「ねぇ、パパ」神崎(かんざき)つくねは部屋(へや)に入ってきた父親(ちちおや)に向かって言った。「あたし、もう学校(がっこう)へは行きたくないわ。いいでしょ? 行かなくても…」
「どうしてそんなこと言うんだい?」父親は優(やさ)しく訊(き)いた。
「だって、あの娘(こ)、大(たい)したことないわ。パパが思ってるような能力(ちから)はないわよ。あたし、ちょっと試(ため)してみたの。そしたら、あたしの攻撃(こうげき)に手も足も出なかったわ」
「勝手(かって)なことをしたらダメじゃないか。どうして、パパの言うことがきけないんだ!」
父親の剣幕(けんまく)につくねは驚(おどろ)いて、「ごめんなさい。そんなに怒(おこ)らないで…」
父親は息(いき)を整(ととの)えて、「いや、怒鳴(どな)ったりして悪(わる)かった。でもな、しずくは、パパにとってとても大切(たいせつ)な研究対象(けんきゅうたいしょう)なんだ。だから、パパのために仲良(なかよ)くしてもらわないと…」
「あたし、あの娘(こ)、好きになれないわ。もう、近くにいたくないの」
「何を言うんだ。しずくをここに連(つ)れて来るのがお前の役目(やくめ)だ。忘(わす)れたのか?」
突然(とつぜん)、つくねが姿(すがた)を消(け)した。と同時(どうじ)に、川相初音(かわいはつね)が部屋に飛(と)びこんで来た。それを追(お)って、つくねが迫(せま)っていく。二人は、相対(あいたい)した。初音は、つくねを制(せい)して、
「ちょっと待ってよ。あたしは、あなたとやり合うつもりはないわ」
神崎が初音を見て言った。「君(きみ)は、黒岩(くろいわ)のところにいた…。どうしてここへ?」
「こっちの方がいいかなぁって…。あたしが、連れて来てあげるよ。しずくを…」
「私に、それを信(しん)じろと言うのか…。君は、黒岩を裏切(うらぎ)ったんじゃないのかね?」
<つぶやき>どうしてこんなことをするのか…。神崎は、初音を受け入れるのでしょうか?
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