神崎(かんざき)つくねは、月島(つきしま)しずくと対決(たいけつ)した日から夢(ゆめ)を見るようになった。いつも同じ夢。見知らぬ女性がつくねに話しかけている。でも、声は聞こえないので、何を言っているのか分からない。そして、女性はつくねをぎゅっと抱(だ)きしめた。――そこで目が覚(さ)める。
つくねは、初(はじ)めのうちは気にもしなかったのだが、だんだんその女性が誰(だれ)なのか知りたくなってしまった。自分と何か関(かか)わりのある人なのか…。それとも――。
つくねは家にあるアルバムを探(さが)してみた。でも、家中探しても、写真(しゃしん)一枚見つからない。つくねは父親に訊(き)いてみた。すると父親は一枚の写真をつくねに見せた。それは、つくねがまだ小さい頃(ころ)の写真。つくねは父親の膝(ひざ)の上にいて、その横(よこ)に女性が座(すわ)っていた。
「これが、お母さん……?」つくねは思わず口(くち)にした。
「そうだ。お前が小さい時に亡(な)くなったから、覚えてないだろうが…」
つくねはがっかりした。夢に出てきた女性が母親だと思っていたからだ。写真の女性はまったく違(ちが)う人だった。つくねは、母親の顔をまじまじと見つめていた。
その日の夜。つくねはまた夢を見た。今度の夢は、誰だか分からないが、女の子と夜の街を駆(か)けている。何かに追(お)われて逃(に)げているのか…。つくねは女の子の顔を見る。最初(さいしょ)はぼやけていたが、だんだんはっきりしてきて…。その女の子は、しずくの顔になった。
つくねは、飛(と)び起きた。「何なの…。今のは…」しずくは汗(あせ)をぬぐいながら呟(つぶや)いた。
<つぶやき>記憶(きおく)が戻(もど)り始めているのでしょうか? 夢に出てきた女性は、つくねの…。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。