みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1072「写らない娘1」

2021-05-27 17:42:05 | ブログ短編

 とある学校(がっこう)の、クラスの同窓会(どうそうかい)が開かれている。卒業(そつぎょう)してから5年たっていたが、集まった若者(わかもの)たちは学生(がくせい)のときと同様(どうよう)に和気(わき)あいあいと談笑(だんしょう)していた。
 卒業アルバムを見ていた一人が、変なことに気づいた。クラスの集合写真(しゅうごうしゃしん)の中に、ちょうど一人分のスペースが空(あ)いているのだ。普通(ふつう)なら詰(つ)めるはずなのに、どうして空いているのか? 周(まわ)りにいた人たちも、その話題(わだい)に加(くわ)わった。
「これってお前だろ? どうして詰めなかったんだ?」
「えっ、そんなこと…。覚(おぼ)えてるわけないだろ。何でだ…?」
「あたしたちのクラスって全部(ぜんぶ)で30人だったわよね。今日、出席(しゅっせき)してるのって…」
 幹事(かんじ)が答(こた)えた。「出席してるのは25人で、欠席(けっせき)は4人だけよ」
「おかしいじゃないか。30人なんだろ? 29人じゃ、一人足(た)りないぞ」
「集合写真に写(うつ)ってるの、先生(せんせい)を除(のぞ)くと29人よ。あなたの勘違(かんちが)いじゃないの?」
「卒業前に転校(てんこう)したヤツがいたんじゃ……。やっぱり、いないかぁ…」
「ねえ…」卒業アルバムを見ていた一人が言った。「名簿(めいぼ)の番号(ばんごう)…。最後(さいご)、30になってる」
 みんなは名簿の名前を順番(じゅんばん)に追(お)た。すると見覚(みおぼ)えのない名前を発見(はっけん)した。
「〈神野(じんの)とき子〉って、どんな娘(こ)だったっけ……。誰(だれ)か、覚えてる人いない?」
 みんなはざわついたが、その問(と)いに答えられる人はいないようだ。
<つぶやき>目立(めだ)たない子っていますよね。でも、写真に写らないほど目立たないなんて。
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