みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1061「キセキの種」

2021-05-05 17:44:22 | ブログ短編

 いつも目にする花屋(はなや)の店先(みせさき)に、〈キセキの種(たね)入荷(にゅうか)しました〉と看板(かんばん)が立っていた。僕(ぼく)は、それがどんな植物(しょくぶつ)なのか気になって店に入ってみた。店主(てんしゅ)に訊(き)くと、
「ああ、キセキね。えっ、興味(きょうみ)あるの? これねぇ、なかなか入ってこないんだよ」
「どんな花が咲(さ)くんですか? ちょっと見せてください」
「ああ、花ねぇ…。えっと…花、咲くのなかなぁ…。ちょっと分かんないなぁ」
「分かんないって…。あなた、花屋なんでしょ?」
「仕方(しかた)ないだろ。めったに手に入らないんだから…。それに、値段(ねだん)も…はるんだよねぇ」
 店主は種の入った小袋(こぶくろ)を手にして、「買(か)ってくれないかなぁ。これ、最後(さいご)のひとつなんだけど…。育(そだ)て方は袋の裏(うら)にちゃんと書いてあるから…。どお?」
 僕が迷(まよ)っていると、店主はささやくように、「ここだけの話なんだけど…。ちゃんと育てると、奇蹟(きせき)が起きるらしいんだよねぇ」
「奇蹟って…。ほんとですか? ど、どんな奇蹟が…」
「それは、分かんないよ。これは、あくまでも噂(うわさ)だから…。どお? 試(ため)してみない?」
 僕は、恐(おそ)る恐る値段を聞いてみた。すると店主は、指(ゆび)を1本立てた。僕は、
「千円ですか?」店主は首(くび)を振(ふ)る。「まさか、一万ですか?」店主はまた首を振る。僕は、
「そんなに高いんですか? やめておきます。初心者(しょしんしゃ)の僕にはとても…」
「分かった。じゃあ、必要(ひつよう)なもの全部(ぜんぶ)そろえて、五万でいいから。お買い得(どく)だよ」
<つぶやき>いやぁ、それでも買わないでしょ。でも、ちょっと気になっちゃいますよね。
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コメント
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