川相初音(かわいはつね)にはどうすることもできなかった。琴音(ことね)の相手(あいて)をするだけで手一杯(ていっぱい)なのだ。エリスは日野(ひの)あまりの首(くび)を後から締(し)め上げると、琴音に叫(さけ)んだ。
「もういい。引き揚(あ)げるよ」
エリスはあまりとともに消(き)えてしまった。琴音は、初音に一撃(いちげき)をくわえると、
「姉(ねえ)さん、次は決着(けっちゃく)をつけましょ。楽しみにしてるわ」
琴音が飛(と)ぼうとしたとき、目の前に突然(とつぜん)、神崎(かんざき)つくねが姿(すがた)を現した。そして、琴音のみぞおちに拳(こぶし)を打ち込んだ。琴音は身体(からだ)を崩(くず)して、つくねに寄(よ)りかかった。初音がよろけながら駆(か)け寄ってきて、琴音を抱(だ)き起こす。
つくねは、「大丈夫(だいじょうぶ)よ。気を失(うしな)ってるだけだから…」
その時、屋上(おくじょう)へ出る扉(とびら)が勢(いきお)いよく開いて、水木涼(みずきりょう)が息(いき)を切(き)らしながら駆け込んで来た。そして辺(あた)りを見回して、悔(くや)しそうに声をあげた。
「くそっ。もう終(お)わっちゃったの? 何でよ。もう、ずるい。私だけ飛べないなんて」
初音は二人に謝(あやま)って、「あまりちゃんが、あの女に連(つ)れて行かれた」
涼が駆け寄ってきて、「日野が…? 何でだよ。何で、日野を連れて行くんだ?」
つくねは琴音を見て、「それは、この娘(こ)に教えてもらいましょ」
初音は、琴音の髪(かみ)を直(なお)してあげながら、何か愛(いと)おしそうに見つめていた。
<つぶやき>あまりはどこへ連れて行かれたの? 初音は琴音を説得(せっとく)できるのでしょうか。
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