ここは、まるでゲームの世界(せかい)のようだった。何かを決(き)めるとき、必(かなら)ずサイコロが現(あらわ)れる。そのサイコロの目(め)で次の行動(こうどう)が決まるのだ。
――朝。彼は目覚(めざ)めると、サイコロを振(ふ)った。出た目は〈休日(きゅうじつ)〉。彼は会社(かいしゃ)を休(やす)まなくてはいけなくなった。しかし、今日は大事(だいじ)なプレゼンの日…。彼は同僚(どうりょう)に電話(でんわ)をかけた。
「わるい、今日は行けなくなった。プレゼン、頼(たの)んだぞ」
同僚は、「俺(おれ)に任(まか)せとけ。まあ…、結果(けっか)はサイコロ次第(しだい)だけどな。幸運(こううん)を祈(いの)っててくれ」
彼は、突然(とつぜん)の休日をどう過(す)ごせばいいのか考えてしまった。その時、サイコロが現れた。これは、何を決めろというのか? 彼は首(くび)をかしげた。しかし、サイコロが現れたら、必ず振らなくてはいけない。拒否(きょひ)したら、どんなペナルティーが科(か)せられるか分からない。彼はサイコロを振った。出た目は〈出会(であ)う〉。――彼には付き合っている彼女がいる。もし、これが恋愛(れんあい)がらみだと…、どうなってしまうんだ?
彼は指定(してい)された場所(ばしょ)へ向かった。そこには、年配(ねんぱい)の男性が待っていた。彼はほっと胸(むね)をなで下ろした。年配の男性は、彼に近づくと言った。「今すぐ、娘(むすめ)と別(わか)れてくれ」
その男性は、付き合っている彼女の父親のようだ。彼はあたふたして答(こた)えた。
「待ってください。僕(ぼく)たち、真剣(しんけん)に付き合ってるんです。結婚(けっこん)のことだって…」
「これは、サイコロで決まったことなんだ。もう二度と娘と会わないでくれ」
<つぶやき>こんな理不尽(りふじん)なことがあってもいいのでしょうか。こんな世界は拒否したい。
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