これはリモート会議中(かいぎちゅう)の出来事(できごと)だった。男性社員(だんせいしゃいん)の画面(がめん)に綺麗(きれい)な女性(じょせい)が映(うつ)り込んだのだ。それに気づいた上司(じょうし)の男性社員が指摘(してき)した。
「おい、山下(やました)。お前、付き合ってる娘(こ)いるんだなぁ。ちょっと紹介(しょうかい)しろよ」
ちょうど会議が終わったところで、他(ほか)の人たちも興味津々(きょうみしんしん)のようだ。女性社員たちからは、残念(ざんねん)がる声も上がってきた。でも、当(とう)の山下は首(くび)を傾(かし)げて言った。
「えっ? なに言ってるんですか…。僕(ぼく)は、付き合ってる娘(こ)はいませんよ」
「隠(かく)すなよ。さっき、お前の後にいたじゃないか。出し惜(お)しみすんなよ」
「だから、誰(だれ)もいませんって。僕は、一人暮(ひとりぐ)らしだってみんな知ってるじゃないですか」
「じゃあ、証明(しょうめい)してみろよ。カメラで、部屋(へや)の中をぐるっと――」
山下はしぶしぶ答(こた)えて、「分かりましたよ。これは、何かの罰(ばつ)ゲームですか?」
山下はパソコンを持って、ゆっくりと部屋の中を写(うつ)していった。女性社員から、
「へぇ、けっこう片(かた)づいてるじゃないですか。これは、もしかして彼女(かのじょ)さんが――」
「違(ちが)いますって。もう、いい加減(かげん)にして下さい。どうです? 誰もいないでしょ」
確(たし)かに誰の姿(すがた)も見えなかった。突然(とつぜん)、女性社員が声をあげた。
「そこ! いました。ほら、いま、姿見(すがたみ)に映ってましたよ」
山下は、姿見にカメラを向けた。だが、そこには誰もいなかった。山下は震(ふる)える声で、
「ほんんとに…、いたんですか? あの…、最近(さいきん)、おかしなことが続(つづ)いてて……」
<つぶやき>これはどういうこと? まさか、幽的(ゆうてき)な美少女(びしょうじょ)が入り込んじゃったのかも…。
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