みけの物語カフェ ブログ版

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1347「戦奉行」

2023-01-12 17:44:53 | ブログ短編

 彼はどういう訳(わけ)か、タイムトラベルをする体質(たいしつ)になってしまった。でも、いろんな時代(じだい)へ飛(と)んでると思っていたのに、よくよく確(たし)かめてみると年代(ねんだい)も月日も変わっていなかった。時間を飛び越(こ)えているのではなく、まったく違(ちが)う世界(せかい)に入り込んでいたようだ。
 今回は、戦国時代(せんごくじだい)って感じだった。そこで彼は、ある武将(ぶしょう)に使(つか)えることになった。その武将は、隣国(りんごく)を攻(せ)めて海を手に入れようとしていた。港(みなと)を持てば海外(かいがい)と直接交易(ちょくせつこうえき)をして、国を豊(ゆた)かにすることができるそうだ。そこで彼は提案(ていあん)してみた。
「隣国を攻めるのではなく、共(とも)に豊かになる道を探(さぐ)った方がいいのでは?」
 武将は不機嫌(ふきげん)な顔になり大声を上げた。「あんな奴(やつ)と仲良(なかよ)くできるか!」
 どうやら、隣国の当主(とうしゅ)とは犬猿(けんえん)の仲(なか)のようだ。彼の提案は却下(きゃっか)され、戦(いくさ)の準備(じゅんび)を始めることになった。不思議(ふしぎ)なことに、この世界では武器(ぶき)といえば刀(かたな)と槍(やり)、それに弓矢(ゆみや)しかなかった。大砲(たいほう)や鉄砲(てっぽう)は海外から伝(つた)わっていないようだ。家電製品(かでんせいひん)とか、便利(べんり)なものを普通(ふつう)に使っているのにおかしな話だ。
 武将はスマホを使って家来(けらい)たちに指示(しじ)を出していた。それが終(おわ)わると、彼に言った。
「おぬしは、保険(ほけん)に入っておるか? 怪我(けが)をするかもしれんから入っておけ」
「いや、私は…戦(いくさ)をしたことがないので…」彼は尻込(しりご)みしていた。
 武将はゲラゲラ笑(わら)って、「死(し)ぬことはないから心配(しんぱい)いらん。戦奉行(いくさぶぎょう)がいてな、もし相手側(あいてがわ)に死者(ししゃ)が出たら大変(たいへん)なことになるんだ。下手(へた)をすると、家を取り潰(つぶ)されかねない」
<つぶやき>この戦はゲームのようなものなのか…。それにしても、おかしな世界ですね。
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