水木涼(みずきりょう)とアキは烏杜高校(からすもりこうこう)に到着(とうちゃく)した。正門(せいもん)は閉(し)まっているので休校(きゅうこう)なのだろう。
アキは高い門を見て言った。「ねぇ、どうやって中に入るの?」
とても乗(の)り越(こ)えることはできそうにない。それに、二人には飛(と)ぶ能力(ちから)はない。
涼はにっこり微笑(ほほえ)んで、「こっちよ。抜(ぬ)け道を使いましょ」
学校の裏(うら)は林になっていた。二人は歩道(ほどう)から低いフェンスを乗り越えて、その林に入っていった。道があるわけではないので、木の間(あいだ)をぬうように進んで行く。しばらく行くと、学校の境(さかい)の塀(へい)に突(つ)き当(あ)たった。塀に沿(そ)っていくと土が盛(も)り上がっているところが見えてきた。そこからだと楽(らく)に塀を乗り越えることができそうだ。アキは涼に訊(き)いた。
「どうして知ってるの? こんなところがあるのを…」
「それは、まあ…、いろいろとあるわけよ」涼は曖昧(あいまい)に返事(へんじ)を返して、「さあ、行きましょ」
二人は塀を乗り越えて学校の敷地(しきち)に入った。校舎(こうしゃ)の裏手(うらて)にたどり着くと、開いている窓(まど)がないか確認(かくにん)していく。さすがに戸締(とじ)まりのしていない窓はなかった。
校舎の玄関(げんかん)まで来て涼が呟(つぶや)いた。「ここは開いてるはずないよね」
涼が扉(とびら)を引くと開いてしまった。涼は驚(おどろ)いて、「何だよ。無用心(ぶようじん)だなぁ」
二人はゆっくり校舎の中へ入って行った。その時、千鶴(ちづる)からのテレパシーが届(とど)いた。
「三階の教室(きょうしつ)にいるわ。彼の他には誰(だれ)もいないみたい。気をつけてね」
<つぶやき>男の正体はいったい。これ以上(いじょう)人を増(ふ)やすと、もう分かんなくなっちゃうよ。
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