「あなた、私のこと好きだよね」女は男の目を見つめて言った。
男はまるで魔法(まほう)にかかったみたいにゾクッときた。確(たし)かに、男は女のことが好きだった。でも、高嶺(たかね)の花とあきらめていた。女は言った。
「あなたの持っているものを私にプレゼントしてくれたら、付き合ってあげてもいいわよ」
男は首(くび)を傾(かし)げた。この女が欲(ほ)しがる物を僕(ぼく)が持ってるはずはない。
男は訊(き)いた。「僕が持っているものって?」
女はにっこり微笑(ほほえ)んで、「あなたの人生(じんせい)すべてよ」
「僕の人生? それって、どういうことかな?」
「これからの人生、私のためだけに生きるの。私のことが好きだったらできるわよね」
男は考えた。これから先、この女のことを愛し続けられるのか? 人生をかけてまで、この女に尽(つ)くすことが…。男はこの難問(なんもん)に答えを出した。
「それは無理(むり)だ。君(きみ)のためだけに生きるなんて、僕にはとても耐(た)えられそうもない。でも、もし君が同じことをしてくれるのなら、考え直(なお)してもいいかもしれない」
「私が、あなたのために生きるの? 私、そんなこと考えたこともないわ」
「じゃあ、考えてみてよ。僕のために生きることができるのか」
女はすぐに回答(かいとう)を出した。「私、それほどあなたのこと好きじゃないと思う」
<つぶやき>好きと愛してる。その境界(きょうかい)は? 愛情(あいじょう)はどこからやって来るのでしょう。
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