「お前は俺(おれ)のものだろ。他(ほか)の男なんかと――」
あたしはこの言葉(ことば)にカチンときた。確(たし)かに、あたしはこの人と付き合っている。だけど、あたしはこの人のものじゃないわ。あたしははっきりと否定(ひてい)した。彼は不満(ふまん)そうに、
「なに言ってんだよ。お前は、俺と付き合ってるじゃないか」
まったくいつの時代(じだい)よ。今は男女同権(どうけん)なのよ。あなたに従(したが)うつもりなんてないわ。
彼はあたしを見て上から目線(めせん)で、「俺がいなきゃ何もできないくせに、よく言うよ」
できるわよ。あなたがいなくても、あたしは何も困(こま)らない。あなたこそ、あたしがいなきゃ困るくせに…。何だかむしゃくしゃしてきたわ。そうよ。今まで、あたしが…。ずっとあなたに合わせてきたのよ。あなたのわがままをきいてね。
何だか今日は変(へん)だわ。いつも聞き流(なが)していたことが、今日はまるで刺(とげ)のように突(つ)き刺(さ)さってくる。付き合い始めた頃(ころ)は、とっても優(やさ)しい人だったのに。今はまったく感(かん)じられない。
彼は吐(は)き捨(す)てるように、「なら勝手(かって)にしろよ。俺と付き合いたいって女は他にも――」
ああぁ。いつになったら、あたしのこと理解(りかい)してくれる人が現れるのよ。もう、いっそのこと…、彼氏(かれし)なんかいらないわ。その方が幸(しあわ)せになれるのかもしれない。でも、あたし一人で…いられるかしら? この先(さき)、どうすればいいのよ。
あたしは、目の前にいる彼を見つめて、大きなため息(いき)をついた。
<つぶやき>男なんて単純(たんじゅん)だわ。手の上で転(ころ)がしてやればいいの。悪女(あくじょ)におなりなさい。
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