月島(つきしま)しずくの声で、神崎(かんざき)つくねの狙(ねら)いがそれた。――パチンコ玉は水木涼(みずきりょう)の頬(ほお)をかすめて、後ろの木の小枝(こえだ)を打ち落とした。涼は力が抜(ぬ)けたように、その場に倒(たお)れ込んだ。
つくねは叫(さけ)んだ。「何で止(と)めたの! こいつは、あなたを殺(ころ)そうとしたのよ」
「よかった。これで…」しずくはホッとしたように呟(つぶや)いて、意識(いしき)を失(うしな)った。
つくねは慌(あわ)てて駆(か)け寄って、心配(しんぱい)そうにしずくを見つめる。そばにいた柊(ひいらぎ)あずみが、
「大丈夫(だいじょうぶ)よ。気を失(うしな)っただけだから。さあ、ここから離(はな)れましょう」
つくねは涼を睨(にら)みつけて、「こいつはどうするの?」
「この娘(こ)は、普通(ふつう)の人間みたいね。パワーを全(まった)く感じないわ。あなたはどう?」
「ええ、今はそうだけど…。でも、こいつはしずくを――」
「私ね、前に聞いたことがあるの。人を操(あやつ)る能力者(のうりょくしゃ)が存在(そんざい)するって。もし今回の相手(あいて)がそうだとすると、これは厄介(やっかい)なことになるわよ。本当(ほんとう)の敵(てき)を見分(みわ)けるのが、とっても難(むずか)しくなる」
学校の保健室(ほけんしつ)のベッドに二人は寝(ね)かされていた。しずくのそばには、つくねが不機嫌(ふきげん)な顔で座(すわ)っていた。しずくが意識(いしき)を取り戻(もど)すと、つくねは顔を近づけて言った。
「バカ! 何やってるのよ。どれだけ心配したと思ってるの」
しずくはきょとんとして、「な、何なの? そんなに怒(おこ)らなくても…」
しずくは、横にあるベッドに涼が寝かさせているのを見て、かすかに微笑(ほほえ)んだ。
<つぶやき>彼女たちの敵って、誰(だれ)なんでしょう。これは、その戦(たたか)いの序章(じょしょう)にすぎない。
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