「王様(おうさま)、いくら何でもそれは……、国民(こくみん)が納得(なっとく)しないかと…」
「かまわん。わしはあれを手に入れたいのだ。そのためなら、わしは…」
「しかし、それでは、この国が滅(ほろ)んでしまいます」
「向こうは、この国と引き換(か)えなら取引(とりひき)に応(おう)じると言ってきてるんだ。あれは、この世界にひとつだけのものだ。わしは、どうしてもそれを自分(じぶん)のものにしたいのだ」
「王様、お考え直(なお)しを…。この国も、世界にひとつしかないのです」
「お前は、国王(こくおう)の補佐(ほさ)をするのが役目(やくめ)だ。わしに従(したが)うのだ。さもないと――」
「確(たし)かに、私の家系(かけい)は国王の補佐をするのが代々(だいだい)のお役目です。しかしながら、我(わ)が家の家訓(かくん)にこうあります。〈もしも国王が国を危(あや)うくするような愚(おろ)かなことをするならば、その首(くび)をはねてもよい〉と」
国王は顔色(かおいろ)を変えて、「待て…。お前、わしの首をはねるつもりか?」
「そのようなことは…。では、私が探(さが)してまいります。国中(くにじゅう)、いや世界中を回ってでも…」
「いや…、それは無理(むり)だろぅ。だって、世界にひとつだけなんだから…」
「ならば、私が、その取引相手(あいて)に掛(か)け合って…。いや、私よりも、もっとふさわしい交渉人(こうしょうにん)を立てましょう。思いますに、お妃様(きさきさま)が適任(てきにん)かと…。そういうことに長(た)けておられます」
「何を申(もう)すか…。あいつに任(まか)せたら…。あいつに知られたら…、わしは…殺(ころ)される」
<つぶやき>なんて王様なんでしょう。まさか、あれって、あれのことなんでしょうか?
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