涼子(りょうこ)は再(ふたた)び押(お)しかけ助手(じょしゅ)として等々力(とどろき)教授、いや元教授(もときょうじゅ)の研究所(けんきゅうじょ)で働(はたら)くことになった。等々力を説得(せっとく)するのには時間がかかったが、何とか承諾(しょうだく)させることに成功(せいこう)した。
これには村人(むらびと)たちの助(たす)けもあった。村の人たちは彼女のために研究所の近くの空(あ)き家を提供(ていきょう)して、ことあるごとに涼子のことを等々力先生に強く勧(すす)めたのだ。村にとっても若い人が住(す)んでくれることは良いことだし、村の過疎化(かそか)は深刻(しんこく)な状況(じょうきょう)になっているから…。
涼子は重い荷物(にもつ)をかかえながら研究室に入って来て言った。
「教授、荷物が届(とど)きましたけど。これ、何が入ってるんですか?」
等々力は何かの装置(そうち)を組(く)み立てているところだった。彼は作業(さぎょう)の手を止めることもなく返事(へんじ)をした。「ああ、分かった。そこら辺へ置いといてくれたまえ。それと、わしは、もう教授ではない。そういう呼(よ)び方はやめてくれないか」
「すいません。つい、大学の時の習慣(しゅうかん)が抜(ぬ)けなくて…。以後(いご)、気をつけます」
涼子は荷物を隅(すみ)へ置くと、等々力のそばへ行って作業を見つめながら、「今度は何を作ってるんですか? 私、助手なんですから、いい加減(かげん)教えて下さい」
「まあ、そのうちな…。気が散(ち)るから、向こうへ行ってくれないか」
「はぁい…。あっ、私、これから義三(よしぞう)さんのとこ手伝(てつだ)いに行ってきますからね」
涼子は日銭(ひぜに)を稼(かせ)ぐために農家(のうか)の手伝いをしているのだ。押しかけなので、ここでは給料(きゅうりょう)はもらえないから…。涼子は小さなため息(いき)をつくと、研究室を後にした。
<つぶやき>ひさしぶりの登場(とうじょう)です。けして忘(わす)れていたわけではないんですよ。ほんと…。
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