「よくやった。俺(おれ)の言った通(とお)りにしたんだろうな?」
「もちろんさ。何の問題(もんだい)もなかったよ。でも、兄貴(あにき)が行った方が早(はや)かったんじゃ…」
「バカか? 俺が盗(ぬす)んだら、簡単(かんたん)にばれるだろうが。関係者(かんけいしゃ)なんだから。で、間違(まちが)いなくディーの棚(たな)から持ってきたんだろうな?」
「ああ、ティーの棚から盗んできたよ。ちゃんと試験管(しけんかん)にもティーって貼(は)ってある」
「ちょっと待て…。ティーって何だよ。俺はディーの棚だって言っただろ。見せてみろ」
男は鞄(かばん)から試験管を取り出した。そして、渡(わた)そうとしたとき思わず落(お)としてしまった。さらに悪(わる)いことに、男はその試験管を踏(ふ)みつけてしまった。ガラスの割(わ)れる音がした。
――ここはウイルス研究所(けんきゅうしょ)。誰(だれ)かに侵入(しんにゅう)されたので警察(けいさつ)が現場検証(げんばけんしょう)をしていた。
刑事(けいじ)が所長(しょちょう)に事情(じじょう)を訊(き)いていた。「それで、盗まれたウイルスというのは?」
「それが、まだ発見(はっけん)されたばかりのウイルスで、どうしてあんなものを…」
「それは価値(かち)のあるものですか? 人体(じんたい)に害(がい)をあたえるようなことは?」
「それはないですね。ティーの棚に保管(ほかん)してあるウイルスはほとんど無害(むがい)です。まあ、あえて言うなら、良(い)い人になってしまうことでしょうか…。どういうわけか、このウイルスに感染(かんせん)すると、寛大(かんだい)な性格(せいかく)になってしまうみたいです」
<つぶやき>これはやっちゃいましたね。このあと、二人の男はどうなったのでしょうか?
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