みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1069「マイスター」

2021-05-21 17:41:18 | ブログ短編

 彼女は女友達(ともだち)を引き連(つ)れてお店(みせ)に入った。店内(てんない)には男たちが待ち構(かま)えている。彼女は目ざとく彼らの服装(ふくそう)や持ち物をチェックする。そして、目をつけた男の前に陣取(じんど)った。その素速(すばや)さといったら、彼女に勝(か)てるものはいないだろう。彼女が仕切(しき)る合(ごう)コンに外(はず)れはないので、他の女子たちから不満(ふまん)が出ることはない。
 彼女は男たちの言動(げんどう)を観察(かんさつ)し、狙(ねら)った男の好(この)みを推察(すいさつ)する。そして、完璧(かんぺき)に好みの女性を演(えん)じ切るのだ。そして、男をその気にさせる仕種(しぐさ)を仕掛(しか)ける。ある時は胸元(むなもと)をちらつかせ、またある時は髪(かみ)をかき上げてうなじを見せつける。そして最終兵器(さいしゅうへいき)は、男の心を鷲(わし)づかみにする微笑(ほほえ)みだ。これで落(お)ちない男はいない。
 彼女はなぜ合コンをするのか? それは、結婚相手(けっこんあいて)を求(もと)めているのではないようだ。彼女は純粋(じゅんすい)に合コンを楽(たの)しんでいるとしか思えない。その証拠(しょうこ)に、合コンが終わったら男のことなど綺麗(きれい)さっぱり忘(わす)れてしまうのだ。連絡(れんらく)をとることなど一度もない。彼女に、悪気(わるぎ)などないのだ。けど、男性からしてみればお高くとまっていると思われてしまうようだ。彼女の悪口(わるぐち)をふれまわる男もいたらしい。
 彼女は、人の悪口や噂(うわさ)にはまったく無頓着(むとんちゃく)だ。人からどう見られているのか気にすることもない。どうして彼女が、こんな女性になったのか? それを知る人は誰(だれ)もいない。
<つぶやき>彼女に好きな男ができたら。彼女はどうなってしまうのでしょ。見てみたい。
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1068「産みの苦しみ」

2021-05-19 17:44:43 | ブログ短編

「いいぞ…きてる…きてるぞ。ここで…こうして、こうなると……」
「先生(せんせい)、まだですか? もう、これ以上(いじょう)は…」
「ちょっと待ちたまえ。いま…頭(あたま)が出かかってるんだ。あと少しで…」
「先生、こっちも、もう待てないんですよ。早く仕上(しあ)げてもらわないと」
「だから、あと少しだって言ってるだろ。横(よこ)から口を挟(はさ)まないでくれ!」
「しかし、先生。こっちも時間が…会議(かいぎ)に遅(おく)れてしまいます」
「ああっ! ……。ダメだ。引っ込んでしまった。もう…、ここまで出かかってたのに。どうしてくれるんだ? 君が横からごちゃごちゃ言うからだ」
「でも、先生。お願(ねが)いしてるのはあらすじなんですよ。そんなに考(かんが)え込まなくても…」
「君(きみ)は何を言ってるんだ。それでも君は編集者(へんしゅうしゃ)なのか? あらすじを考えるのがどれだけ大変(たいへん)なことか…。こっちは身(み)を削(けず)る思いでやってるんだぞ」
「すいません。…そ、そういうものなんですね。僕(ぼく)はてっきり、ちゃっちゃって書けるものだと思ってました。いや、勉強(べんきょう)になります」
「私は…、別に、君の勉強のためにやってるわけじゃないんだ。ああ…、もう無理(むり)だ。この中から、よさそうなのを選(えら)んでもてってくれないか……」
 先生が箱(はこ)のフタを開けると、中にはなぐり書きしたメモがいっぱい詰(つ)まっていた。
<つぶやき>どれだけストックがあるんですか? だったら、もっと早く出せばいいのに。
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1067「繰り返し」

2021-05-17 17:44:02 | ブログ短編

 彼女はごく普通(ふつう)の女性だ。仕事(しごと)に不満(ふまん)もなく、毎日(まいにち)を楽しく過(す)ごしていた。
 ある日のこと、彼女は気づいてしまった。いつも同じことをしていることに…。会社(かいしゃ)では同僚(どうりょう)と同じ会話(かいわ)を繰(く)り返し、会社の帰りには同じ店(みせ)で同じ商品(しょうひん)を買って…。これって、当たり前のことだと誰(だれ)でも思うだろう。でも彼女の場合(ばあい)は――。
 彼女は会社で違(ちが)う話をしようとしたが、口から出た言葉(ことば)はいつもと同じ会話になってしまった。帰りに寄(よ)る店を変えようとしても、気づけば同じ店の袋(ふくろ)を手にして歩いている。彼女は、何でこんなことになるのか不安(ふあん)になってしまった。
 そんな時だ。彼に出会(であ)ったのは…。彼女はすぐに恋(こい)に落(お)ちた。彼女の生活(せいかつ)は一変(いっぺん)した。毎日がワクワクドキドキで、不安を感じることなどなくなってしまった。そして彼女は、彼と結婚(けっこん)した。彼女は誰(だれ)もが羨(うらや)む幸(しあわ)せを手にしたのだ。
 だが、しばらくすると、彼女はまた気づいてしまった。同じことを繰り返していることに…。会社でも、彼との会話でも、すべて同じ。同じことの繰り返しになっていた。
 あの時の不安が、彼女の心(こころ)にむくむくとわき上がってきた。なぜこんなことに…。どうしたら変えることができるのか…。彼女は、何かに取り憑(つ)かれたようにもがき苦(くる)しんだ。そして、彼女はある結論(けつろん)にいたった。
「そうだ。また恋をしよう。そしたら、変えられるかもしれないわ」
<つぶやき>その結論でいいの? まさか、恋って…。不倫(ふりん)しようってことじゃないよね。
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1066「怪聞」

2021-05-15 17:55:38 | ブログ短編

 その噂(うわさ)を耳(みみ)にしたのは昨日(きのう)のことだった。野良犬(のらいぬ)が人間(にんげん)の腕(うで)を咥(くわ)えて歩いていたというのだ。まさか、そんなことが…。みんなはデタラメだと思っていた。それに、どうやら警察(けいさつ)も捜査(そうさ)をしていないようだ。
 でも、私はそういう話がすこぶる好(す)きだ。私は、その話を検証(けんしょう)するために現場(げんば)へ向(む)かった。まぁ、噂なので、現場と言っても大雑把(おおざっぱ)なものだったが――。
 その場所(ばしょ)は、町外(まちはず)れの山が迫(せま)っているようなところだった。近くに住(す)んでいる人以外(いがい)、こんな道(みち)を通る人はいないだろう。犬はどこから来たのか? 山からか、それとも…。私は周(まわ)りを観察(かんさつ)してみた。すると近くに川が流れている。
「川という線(せん)もあるなぁ。ここからなら、川原(かわら)に下りられそうだ」
 川辺(かわべ)を眺(なが)めていると、茂(しげ)みの中から犬が姿(すがた)を現(あらわ)した。すこぶる大きな犬だ。これが、例(れい)の野良犬なのかもしれない。犬は立ち止まって、じっとこちらを見つめている。私は…、足がすくんだ。実(じつ)は、私は犬がだいの苦手(にがて)なのだ。子供(こども)の頃(ころ)、ひどい目にあったことがある。それ以来(いらい)、なるべく近寄(ちかよ)らないようにしていた。こんなことなら、誰(だれ)かを連(つ)れて来ればよかったと後悔(こうかい)した。
 犬は、私のことなど気にもしていないようだ。すたすたと私から離(はな)れて行く。
「今日は、帰るとしよう。また、出直(でなお)した方がよさそうだ」
 私は犬が向かったのとは逆(ぎゃく)の方へ歩き出した。でも、こっちで帰れるんだろうか…?
<つぶやき>犬の話が出た時点(じてん)で気づくべきでした。好きなことだと忘(わす)れてしまうのね。
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1065「しずく128~腐れ縁」

2021-05-13 17:58:18 | ブログ連載~しずく

 川相初音(かわいはつね)がアパートへ戻(もど)って来たのは深夜(しんや)になってからだった。部屋(へや)の前まで来ると、扉(とびら)の前に水木涼(みずきりょう)が座(すわ)り込(こ)んでいた。どうやら、眠(ねむ)っているようだ。
 初音は涼を揺(ゆ)り起こして、「何してんの? こんなとこで寝(ね)ないでよ」
 涼は寝ぼけているのか、「もう…寝かせてよ。まだ早いだろ……」
「あきれた…」初音は涼の頭をひっぱたいて、「起きろ!」
 これには、さすがの涼も目が覚(さ)めたようだ。目の前にいた初音に抱(だ)きついて、
「初音…。どこに行ってたんだよ。もう、心配(しんぱい)してたんだからなぁ」
 初音は、涼の腕(うで)を振(ふ)りほどくと、「緊張感(きんちょうかん)なさすぎよ。もし襲(おそ)われたらどうするの?」
「ごめん…。でも、急(きゅう)にいなくなるなよ。一人であいつらのとこ行ったのかと…」
「あたしは、あなたみたいに無鉄砲(むてっぽう)じゃないわ。ちょっと、塾(じゅく)に行ってたのよ」
「こんな時間まで? あっ、まさか…。誰(だれ)といたんだよ。優等生(ゆうとうせい)がそんなことして…」
「なに考(かんが)えてるの。一人で自習(じしゅう)してただけよ。あなたも、ちゃんと勉強(べんきょう)しないと留年(りゅうねん)よ」
「そ、そこまでは……。なぁ、もし、そうなりそうなときは…」
「もう、早く寝なよ。明日も学校(がっこう)あるんだから…」
 初音は、背(せ)を向(む)けた涼に言った。「あたしたち、友だちだよね。何があっても…」
 涼は振(ふ)り返ると、「あんたとは、腐(くさ)れ縁(えん)じゃない。何があっても、私が守(まも)ってやるよ」
<つぶやき>いろんなことがあったけど、この二人の友情(ゆうじょう)は変わらない。何があっても…。
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