みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1348「肖像画」

2023-01-15 17:34:15 | ブログ短編

 男は、美しい女性が描(えが)かれている絵(え)を手に入れた。それは曰(いわ)く付きの絵で、災(わざわ)いを招(まね)くとささやかれていた。でも、男はそんなことは気にしなかった。
 絵を手に入れてから数日後。男のもとに若(わか)い女が訪(たず)ねて来た。女は、その絵のもともとの所有者(しょゆうしゃ)だと名乗(なの)った。男は、その女の顔を見て驚(おどろ)いた。絵に描かれている女性と瓜二(うりふた)つなのだ。若い女は、その絵のモデルは自分(じぶん)だと言った。男は反論(はんろん)した。
「そんなはずはない。この絵が描かれたのは五十年以上前だと聞いてる。あなたがモデルのはずはないんだ」
 女はそれには反応(はんのう)せず、絵を買(か)い取りたいと言い出した。男は即座(そくざ)に断(ことわ)った。せっかく気に入って手に入れたのに、手放(てばな)すなんてとんでもない話だ。女は帰り際(ぎわ)に言った。
「残念(ざんねん)です。あなたに悪(わる)いことが起きないことを願(ねが)っています」
 女が帰ると、男は画商(がしょう)から聞かされた話を思い出した。この絵の前の持ち主のことだ。なんでも事故(じこ)にあって亡(な)くなったそうだ。その時は偶然(ぐうぜん)だろうと思ったが、今となっては手放した方がよかったのか……。
 その女は、それ以来(いらい)現れることはなかった。男はその絵を大切(たいせつ)に扱(あつか)った。今もその男は、何事もなく無事(ぶじ)に過(す)ごしているそうだ。
<つぶやき>世の中には不思議(ふしぎ)なことがあるものです。どこに災いが隠(かく)れているのか…。
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1347「戦奉行」

2023-01-12 17:44:53 | ブログ短編

 彼はどういう訳(わけ)か、タイムトラベルをする体質(たいしつ)になってしまった。でも、いろんな時代(じだい)へ飛(と)んでると思っていたのに、よくよく確(たし)かめてみると年代(ねんだい)も月日も変わっていなかった。時間を飛び越(こ)えているのではなく、まったく違(ちが)う世界(せかい)に入り込んでいたようだ。
 今回は、戦国時代(せんごくじだい)って感じだった。そこで彼は、ある武将(ぶしょう)に使(つか)えることになった。その武将は、隣国(りんごく)を攻(せ)めて海を手に入れようとしていた。港(みなと)を持てば海外(かいがい)と直接交易(ちょくせつこうえき)をして、国を豊(ゆた)かにすることができるそうだ。そこで彼は提案(ていあん)してみた。
「隣国を攻めるのではなく、共(とも)に豊かになる道を探(さぐ)った方がいいのでは?」
 武将は不機嫌(ふきげん)な顔になり大声を上げた。「あんな奴(やつ)と仲良(なかよ)くできるか!」
 どうやら、隣国の当主(とうしゅ)とは犬猿(けんえん)の仲(なか)のようだ。彼の提案は却下(きゃっか)され、戦(いくさ)の準備(じゅんび)を始めることになった。不思議(ふしぎ)なことに、この世界では武器(ぶき)といえば刀(かたな)と槍(やり)、それに弓矢(ゆみや)しかなかった。大砲(たいほう)や鉄砲(てっぽう)は海外から伝(つた)わっていないようだ。家電製品(かでんせいひん)とか、便利(べんり)なものを普通(ふつう)に使っているのにおかしな話だ。
 武将はスマホを使って家来(けらい)たちに指示(しじ)を出していた。それが終(おわ)わると、彼に言った。
「おぬしは、保険(ほけん)に入っておるか? 怪我(けが)をするかもしれんから入っておけ」
「いや、私は…戦(いくさ)をしたことがないので…」彼は尻込(しりご)みしていた。
 武将はゲラゲラ笑(わら)って、「死(し)ぬことはないから心配(しんぱい)いらん。戦奉行(いくさぶぎょう)がいてな、もし相手側(あいてがわ)に死者(ししゃ)が出たら大変(たいへん)なことになるんだ。下手(へた)をすると、家を取り潰(つぶ)されかねない」
<つぶやき>この戦はゲームのようなものなのか…。それにしても、おかしな世界ですね。
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1346「執着」

2023-01-09 17:33:43 | ブログ短編

 レイコにはとても優(やさ)しい姉(あね)がいた。彼女は姉のことが大好(だいす)きで、いつも一緒(いっしょ)にいたいと思っていた。姉が都会(とかい)の大学(だいがく)へ進学(しんがく)すると聞いたとき、レイコはとても不機嫌(ふきげん)になって周(まわ)りに当たり散(ち)らすようになった。
 姉はなだめるように、「あなたも、あたしと同じ大学に進学すれば…」
 姉は知っていた。レイコには入学(にゅうがく)できる学力(がくりょく)はないと。でも、その日からレイコは必死(ひっし)に勉強(べんきょう)した。そして二年後、同じ大学に入学することができた。
 春になり都会へ出たレイコは、姉と一緒に住むことになった。両親(りょうしん)もそれを望(のぞ)んだのだ。姉と一緒に暮(く)らし始めて、レイコは知った。姉に恋人(こいびと)がいることを…。レイコは、大好きな姉をとられてしまうと思い込んだ。そこで、レイコはある計略(けいりゃく)を実行(じっこう)に移(うつ)した。
 姉と偽(いつわ)って、彼を家に呼(よ)び出したのだ。そして、姉が帰ってくるのを見計(みはか)らって彼を誘惑(ゆうわく)した。姉が帰ってきたとき、ちょうど二人はキスをしていた。彼は姉の顔を見て動揺(どうよう)して、部屋(へや)から飛(と)び出して行った。レイコは姉に気づかれないように微笑(ほほえ)んだ。
 レイコは姉に問(と)い詰(つ)められると、彼が迫(せま)って来たのだと嘘(うそ)をついた。でも、姉には分かっていた。妹(いもうと)が誘(さそ)ったことを…。これはいつものことだ。姉はうんざりしたように言った。
「もう、止(や)めてよ。あたしのことはほっといて。あたし、ここを出て行くから…」
 レイコには、姉を手放(てばな)すなんて耐(た)えられなかった。そこで、姉を閉(と)じ込めることにした。もう、その準備(じゅんび)はできている。レイコは、嬉(うれ)しそうに姉を見つめた。
<つぶやき>これは、とってもやばいです。お姉(ねえ)さんは逃(に)げることができるのでしょうか?
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1345「しずく184~見えない壁」

2023-01-06 17:40:50 | ブログ連載~しずく

 ここは市外(しがい)へ出る県道(けんどう)の一つ。自動車(じどうしゃ)が何十台も停(と)まっていて道を塞(ふさ)いでいた。どうやら通り抜(ぬ)けができなくなっているようで、集まっていた市民(しみん)たちは困惑(こんわく)しているようだ。
 そこへ、川相初音(かわいはつね)と琴音(ことね)が姿(すがた)を見せた。みんなの話を聞いていると、どうやら見えない壁(かべ)があるらしい。二人は、止まっている車の先頭(せんとう)へ向かった。そこにも大勢(おおぜい)の人たちが集まっている。壁の向こう側(がわ)にも人が集まっていて、両側(りょうがわ)の先頭の車は衝突(しょうとつ)で壊(こわ)れていた。
 二人は人の間をすり抜けて、見えない壁がある場所(ばしょ)に立った。手を出して前へ進んでいくと、何かにぶつかった。ふわふわしたもので、押(お)すと押し返してくる。これは一体(いったい)何なのか? 二人は顔を見合わせた。
 柊(ひいらぎ)あずみからテレパシーが届(とど)いた。初音は現在地(げんざいち)を伝(つた)えた。あずみたちと合流(ごうりゅう)するのにさほど時間はかからなかった。四人が壁の前に集まったとき、それは起こった。
 突然(とつぜん)、集まっている人たちが耳(みみ)をふさいでしゃがみ込んだのだ。四人もそれぞれに、耳鳴(みみな)りがして顔をしかめた。でも、すぐにそれはおさまった。その後、集まっていた人たちは、何事(なにごと)もなかったように無言(むごん)で引き返していく。これは異様(いよう)な光景(こうけい)だった。
 あずみは、その人たちの顔を見つめて呟(つぶや)いた。「これは、正気(しょうき)じゃない。操(あやつ)られてる」
 初音もそれに答(こた)えて、「そうね。でも、あたしが使う能力(ちから)とは違(ちが)うみたい。それに、これだけの人に能力(ちから)を使えるなんて…。そんな能力者(のうりょくしゃ)、いるのかしら?」
<つぶやき>強力(きょうりょく)な能力者が登場(とうじょう)するのかもね。しずくの行方(ゆくえ)も気になるところです。
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1344「天使のお仕事」

2023-01-03 17:47:08 | ブログ短編

 天使(てんし)が男の前に現れて言いました。「神様(かみさま)のお告(つ)げを伝えにきました」
 男は、その天使があまりにも不細工(ぶさいく)なので、「何だ、お前…。俺(おれ)に近づくんじゃねぇ!」
 天使は男の剣幕(けんまく)にビビりまくってしまいます。でも、神様のお告げを伝(つた)えなくてはいけません。天使は持っていた鞄(かばん)を開けて…。中から……。鞄の中をかきまわし始めました。これはどういうことでしょう。中に入れたはずのメモがなくなっています。天使は泣(な)きそうな顔になって呟(つぶや)きました。
「神様に怒(おこ)られちゃうよ。どこにいっちゃったの…」
 そこへ別の天使が現れました。今度の天使は、この世のものとは思えないほどの美(うつく)しさでした。美しい天使は、不細工な天使に言いました。「大事(だいじ)なものを忘(わす)れちゃダメでしょ」
 大事なメモを受け取ると、不細工な天使に笑顔(えがお)が戻(もど)りました。天使は男の前に近づいて、神様からのお告げを言おうとします。すると、男はそれを止(と)めて言いました。
「俺は、お前じゃなくて、あっちの天使さんにお願いしたいな」
「いや、それは…。あなたの担当(たんとう)は、あたしなんで…。それは、ちょっと…」
「いいじゃないか、それくらい…。チェンジしてくれなきゃ、俺は聞かないぞ」
「そんな…。無理(むり)なこと言わないでください」
 美しい天使が耳打(みみう)ちをしました。「あなた、ビジュアルモードになってないわよ。ここでは、美しく見えないと仕事にならないんだから。よく覚(おぼ)えときなさい」
<つぶやき>天使は美しいって、誰(だれ)が決(き)めたのでしょう。でも、美しい方がいいですよね。
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