母からのLINEで目が覚めました。
叩かれていたのはスイカの方か……
内容は至ってシンプル。
『力仕事を頼みたい』
……台風対策かな?
強風で飛びそうな物を片付けたり、
やる事は意外とありそうです。
汚れても良いよう愛用の作業着に身を包み、
髪を結んで軍手を用意し準備万端。
庭の薔薇は風に煽られようとも、
負けずに咲いています。
……このまま頑張って欲しいね。
──そして
「ミルや、これを見ておくれ」
やや疲れた表情の父と、
何故かテンション高めの母。
彼女が指し示す所に転がるのは──……
「えっと……麺棒……?」
何故か麺棒。
しかも2本。
……どうした?
夫婦喧嘩で叩き合いでもしていたか……?
「こっちがメインなのよ」
続いて母が持って来たのはスイカ。
丸ごとの、結構……大きなサイズ。
「台風で外出も出来ないし、暇でしょ?
スイカ割りでもして過ごそうと思ったの
でもお父さんの力じゃ割れなくってねぇ」
「…………。」
叩かれていたのはスイカの方か……
夫婦喧嘩ではなかったようで、
とりあえずは一安心だけれども。
力仕事って……
スイカ割りの事かい……ッ‼︎
「我が家で一番力が強いのはミルでしょ?
遠慮は要らないから、やっちゃって」
「おう、やったるわ」
確かスイカを割る際は、
ヘタの部分を下にすると綺麗に割れるはず。
上手くは表現出来ない、
色々な感情を込めて。
どかっ⭐︎
一撃で真っ二つ。
良し、勝った。
ミッションは成功です。
やり遂げた感たっぷりに振り返ると、
何故か両親は部屋の隅で身を寄せ合っている。
「「怖い……」」
いや、怯えるなよ。
割れって言うから割ったんだよ。
「お父さんが何度叩いても、
ヒビひとつ入らなかったのに……
お前は親を超えた、もう教える事は何も無い」
「ミルよ、落ち着いて凶器を渡しなさい、
今ならまだ間に合う……自首するんだ」
妙な寸劇を始めるな
この夫婦、ノリが良過ぎる
早朝からスイカ割り始めちゃう2人だものね
うん
楽しそうで何よりです
とりあえず
「……そろそろ食べない?
せっかく冷えてるんだから」
割ったスイカを皿に移して。
でも、このままじゃ食べにくいかな?
「包丁で切り分けようか?」
「それだと割った意味がないじゃない」
「そうなの?」
「スイカは打撃属性の物理攻撃で
割ると美味しいって聞いたの。
だから斬属性は今回、封印でお願いね」
説明がゲーム脳
いや、確かにスイカは
金気を嫌うって聞いた事あるけどさ……
「じゃあスプーンも木製の奴を使おうか」
いそいそとスプーンを持って来る父。
この瞬間、3人で鍋の如く
スイカを突く事が確定しました。
ワイルド過ぎる……
ちなみに味は凄く美味しかったです。
これが打撃属性の物理攻撃の
おかげなのかどうかはわかりませんが……
この夫婦、2人仲良く揃ってボケ担当。
誰かが間に入らなければ、
ツッコミ不在の恐怖に陥る事に。
……大抵、被害を受けるのは自分なのですが……
まぁ、2人が幸せそうで何よりです。