「明日、久しぶりに友達と会うの」
突然の来訪からの、
近況報告という名の雑談。
目の前で優雅にコーヒーをすするのは、
我が家のラスボスこと、カーチャン。
「可愛い砂糖菓子の店を見つけたから、
素敵な箱に入れてプレゼントしたいの」
「へぇ……いいんじゃない?
食べ終わった後も小物入れとして使えるし」
「私もそう思って、
高見えしそうな箱を買ったのよ
100円ショップで」
100均かい
素敵さを追求しつつも、
詰めるところは詰めるんだね……
「でも、ちょっと不満が残るの
もう少し手を加えたら、
もっと素敵になりそうかな……って」
そう言って、カバンから箱を取り出す母。
茶色い丸型の箱は、
なかなか凝った装飾が施されています。
「そのままでも素敵だよ?
とても100円とは思えないけれど……」
「500円以上に見せたい‼︎
だから何とかして‼︎
全て任せた‼︎」
丸投げかよ
社長にしろ、
母親にしろ──……
どうして自分の周囲には、
こうも無茶振りしてくる輩が多いのか。
とは言え。
こういうリメイクは嫌いじゃない。
「そうだなぁ……
箱に色を塗れば、
更なる高見えが期待できるかも」
コストを抑えたいし、
材料も100円ショップで購入。
ジェルネイル用のマニキュアを用意して……
とりあえず、塗ってみる。
ベースは白で、
装飾部分は金色に。
んー……
中心部が少し寂しいかも。
同じく100円で買った飾りをペタリ。
どうだろう?
高級感は出たかな?
人数分を少し色を変えて用意。
アンティークな雰囲気が良い味わい。
「ほら、できたよ」
所要時間は30分ほど。
ジェルネイルはすぐに固まるから良いね。
「あら、素敵‼︎」
「100円には見えないでしょ」
「うん……素敵……
素敵ではあるんだけど……」
「どうかした?」
「あげるのが惜しくなった」
おい
「しょうがない……
友達には紙袋を用意しましょ」
待て
しょうがなくない‼︎
何のために作らせた⁉︎
何という本末転倒
「だって素敵なんだもの」
そういうリクエストだもの
いや、まぁ……
気に入ってくれたのなら、
それはそれで良いのだけれど……
この時間は一体、何だったのか