塔12月号掲載 2020-05-31 16:26:04 | 短歌 2019年12月号掲載 うなだれた実こそ食べごろむらさきを捥げば真白き樹液したたる 猫たちはお元気ですかとたずねはる かつて猫らと暮らしていたひと やすやすと山に斬り込む上弦の月の刃に似るあなたのことば にぎりめしみたいに包む猫の頭の今朝は乾いた草の匂いす 真珠母貝かぶさるようなゆうまぐれポストの赤い矩形をさがす 樹のうちにねむる髪切虫の子を突く陽を見ずにとけて吸われよ めくるね、と8月を破りたたむ子よ明日になればまた去るくせに 以上7首、鍵の外でした。
塔11月号掲載 2020-05-29 14:49:17 | 短歌 2019年11月号掲載 羊膜のぷつんと破水する夜を思い出したり葡萄ふふみて 父さんの誕生日やな幾つなるん?透明な日々足して答える きつねよりたぬきの方がよう化ける京風あんかけ蕎麦を啜りて そろそろと声かけ合いて出る路のどん突きの空大の字ともる 点火から消えゆくまでを見守りぬ慌てて浴衣着せし娘と あきらめることも大事と娘に言えりあきらめることは放たれること あの月は薄荷の雫とうたう人あらしの夜の雲のような瞳で 以上7首、鍵の外でした