みなまのブログ

短歌、日常、思いつきなど
塔短歌会所属

塔8月号掲載

2019-12-27 22:47:48 | 短歌
2019年8月号掲載

朝の陽のまず射し照らす場所なのだ最初の蕾ほどけてくるは
尾の欠けた蝶はばたいて薄紅のリラの十字花散らしてゆきぬ
花頸で切るしかなくて匂い薔薇ウエッジウッドのカップに活ける
ひとつずつ薔薇浮かばせた紅茶碗お皿に銀のスプーン添えて
朝はまず水かえてゆく猫のため庭から切ってきた薔薇のため
もう坂を下りゆくらし朝の道 吾子の姿の足より消える
絵空事みたいな元号始まってパートの採用通知が届く

以上7首、鍵外。

塔7月号掲載

2019-12-26 23:20:39 | 短歌
2019年7月号掲載

水瓶のローズマリーに根の生えて見えないところで息をしていた
天気雨またと見上げる浪人の子の還りきて母子の家となる
薔薇蜂の1㎜幼虫葉を食みて食みきれなくて透かしをえがく
子の髪を梳きし日のこと思い出す一枚いちまい薔薇の葉撫でて
吊り革の下の頭を二度見して揺れに乗じて死角へ移る
虹だった夕映え消える曇りぞら川に向かった坂道の上

以上6首

塔6月号掲載

2019-12-26 12:10:34 | 短歌
2019年6月号掲載

金継ぎに繕われし皿ふゆの根の息づくさまをうつしておりぬ
ユリノキの朽ちかけの実を踏みながら博物館の青き屋根見る
錦とは違い屋根なき商店街ビニールの傘傾げつつ行く
梅の花ほどの吸盤ならべたる酢蛸のあしも舟に盛られおり
空に鼻高くかかげて初めての春の風嗅ぐ若き猫らは
胸の丘際立たせゆけ春の娘ら東の風の強く吹く時

以上6首

塔5月号掲載

2019-12-26 00:59:34 | 短歌
2019年5月号掲載

珈琲と煙草のにおいに満ちていて猫がソファで寝ているカフェです
丸ノブは回して押したくなるでしょう、ところがそうじゃないんだこの店
ホットショコラにチリをひと振りきみに似たジョニー・デップの映画まねして
俯いて鍵盤に置く手の動き静かな海の波にも見える
ひとよにはこんな日もあって良いのだと緑の傘に入れてもらいぬ
この夏は樹を太らせると結論し半分ほどに葡萄切りこむ

以上6首。

塔4月号掲載

2019-12-25 09:22:37 | 短歌
2019年4月号掲載

洋梨のアルコホル臭立ち初むをボウルによそう子ら去し午後
瓦色の歌集をひらく一月の朝(あした)の暗さ、ああ、日食か
別れぎわ浮かべし表情思い返す内より腐る蜜入り林檎
そうとれる表現がきっとあったのよまだ父のかたをもつ母を見る

1年前の歌
塔は3ヶ月後に届くからね
タイムカプセル感しみじみ思う
そしてこのときはまさかの4首という衝撃!
ここからしばらく歌詠みとして辛い時期が来る