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みなまのブログ

短歌、日常、思いつきなど
塔短歌会所属

塔10月号掲載

2020-05-28 13:42:00 | 短歌
2019年10月号掲載

琺瑯の青き花型シェード買うひとりの卓を照らす灯りに
引っ越しにピンチまで持って行きし子よあんたのパンツ干すものがない
窓際の学習机の真ん中に缶切りで切った貯金箱あり
ファミレスの窓から見える社屋には同じ方むく人ら並びぬ
ビニールの傘のドームを伝う雨ひとつぶ一粒信号ともし
花言葉までは聞かれなかったからゆきずりの恋と言わずにすんだ

以上6首、鍵の外でした



塔9月号掲載

2020-02-06 12:33:13 | 短歌
2019年9月号掲載

木工薔薇(もっこう)の白き花びらはらはらと風に流れる今日七回忌
水曜日鳴いて血を吐くリクガメをくるんで紙の袋で運ぶ
上半分の白き影指し「肺炎です」亀を持つ手も透けて映りたり
シン・ゴジラみたいやなあと子は笑う肺炎の亀に薬をやれば
咲きがらに蟷螂の子の潜みおりまだ何も口にしてない顔の
僕にも薔薇わけてくださいあの人を驚かせたいからと小声で
さようならと書きつつ思い出す胸の貝のボタンの割れていしこと

以上7首。鍵の外でした。



塔8月号掲載

2019-12-27 22:47:48 | 短歌
2019年8月号掲載

朝の陽のまず射し照らす場所なのだ最初の蕾ほどけてくるは
尾の欠けた蝶はばたいて薄紅のリラの十字花散らしてゆきぬ
花頸で切るしかなくて匂い薔薇ウエッジウッドのカップに活ける
ひとつずつ薔薇浮かばせた紅茶碗お皿に銀のスプーン添えて
朝はまず水かえてゆく猫のため庭から切ってきた薔薇のため
もう坂を下りゆくらし朝の道 吾子の姿の足より消える
絵空事みたいな元号始まってパートの採用通知が届く

以上7首、鍵外。

塔7月号掲載

2019-12-26 23:20:39 | 短歌
2019年7月号掲載

水瓶のローズマリーに根の生えて見えないところで息をしていた
天気雨またと見上げる浪人の子の還りきて母子の家となる
薔薇蜂の1㎜幼虫葉を食みて食みきれなくて透かしをえがく
子の髪を梳きし日のこと思い出す一枚いちまい薔薇の葉撫でて
吊り革の下の頭を二度見して揺れに乗じて死角へ移る
虹だった夕映え消える曇りぞら川に向かった坂道の上

以上6首

塔6月号掲載

2019-12-26 12:10:34 | 短歌
2019年6月号掲載

金継ぎに繕われし皿ふゆの根の息づくさまをうつしておりぬ
ユリノキの朽ちかけの実を踏みながら博物館の青き屋根見る
錦とは違い屋根なき商店街ビニールの傘傾げつつ行く
梅の花ほどの吸盤ならべたる酢蛸のあしも舟に盛られおり
空に鼻高くかかげて初めての春の風嗅ぐ若き猫らは
胸の丘際立たせゆけ春の娘ら東の風の強く吹く時

以上6首