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信州の素晴らしい景色や、日本の謎スポットや謎現象、謎事件をお送りします。時事問題も少し。

もふ小説シリーズ、西陽の帰り道完全リメイク版

2023-02-27 23:48:05 | 日記
ここは、横浜の一番南、横須賀市の少し手前の地域。横浜と言っても、里山や畑が多い、ずっと東京湾側には、砂浜もある。
この学区では、下から3番目くらいのレベルの、創立3年目の県立高校。白山(しらやま)高校。
こんなクラスの高校だから、真面目に大学進学目指す人も少ないそもそも団塊世代の子供の俺たちは、子供の人数が多くて、私立の最低ランクの大学でも、倍率10倍で難関だったり、短大目指す女の子も落ちて浪人なんかする時代。
だから、ほとんどの生徒は、高卒という肩書きが欲しいだけ、それが普通の環境。
それでもリタイアする不良生徒も年に数人は居る。
一番多いのは専門学校進学か、就職、または卒業後フリーター。

時は1986年。
俺は、この白山高校2年の茂之。ギター担いで髪茶色くして、勝手に不良生徒だと思われて、誰も近寄らなかった。
うちは、親父の会社が潰れて収入が無い。
だから誰が何と言おうとバイトしないとメシ食えないどころか、学校なんか来れない。

中学生の時にビートルズが好きになってギター手に入れた。
そんなに器用じゃなくて、難しい曲だと、弾けるようになるのに2年とか掛かった。
コードの理論覚えて、元々小説も好きだったりして、自作で作詞作曲していた。
思春期だから、女の子にも一応興味あったけど、とにかく恥ずかしいという気持ちが強かった。親父は女好きなのに、息子には女に男ならうつつをぬかすなみたいな事をずっと言われた。それと同時に、こいつと決めたら絶対守れよとも教えられた。
そんな事はどうでも良く、周りには俺はお嬢様学校のフェリスの女にしか興味ねえ!とか、突っ張っていた。

ある時、女子4人に取り囲まれて、理不尽な事を一方的に言われている女子が1人いた。
中学生の時からいじめの現場は見慣れていて、関係ねえやって聞き流していた。
でも聞いてると、言ってる内容がもうこの子にも関係ねえじゃん。
言われてる子も反論全然しない。

なんでこんな事言うのか?って事と、言われて反論しない事が不思議で興味湧いて助けようと気持ちは無いけど、聞いてみようと何故か思った。

このいじめられてる子、えっと、名前なんだっけ?普段視野に入ってないからか思い出せない。
小さくて、中学生みたいな子。

名前分かんねえけどとりあえず聞くか!
おい!お前!脈絡無い事言われてるぞ!いいのかよ!

泣きそうにもなってなくて、死んだ人間みたいな顔してる。
お前聞かないなら、この女どもに俺が理由聞くから一緒に聞いてろ!どうせ大した事言わねーから。聞いて、どうするかはお前が自分で判断しろ。

教室の壁際に4人集めて。
どうして、こんな事言うんだよ!

こんな子どうなってもいいじゃん
この子がどうなっても先生もどうせ興味持たないよ
あんたも不良のくせに真面目振らないでよ
こんな子が好みなの?趣味悪いね!

聞いただろ?理由なんかねーんだよ!
死んだような顔してねーで、自分も考えろよ!

かわいそう、、、
え?
そんな言葉しか選べない子なんて、かわいそうだよ、、、
そっかー、世界一変わった奴だな、お前は、ところでお前名前って聞いていいか?

いじめ女子が言った。
なんだ、あんた名前分からないで庇ったのかい?
同じクラスで、直子って言うんだよ。なおちゃんとかって呼ばれてるだろ?

俺学校来ても誰とも話さねえから、分からなかった。

1週間後、そういえば、直子は窓際の席で、1日外を見て流行ってるウォークマンで、何か音楽を聴いていた。

なんか助けてから、俺の視界に入るようになっちまった。
俺も登校してもずっとウォークマン聴いているから、同じ人種だな。

よっ!いつも、何聴いてるんだよ?
こちらを振り向いて、尾崎、街路樹、、、
それだけ答えた。
こちらの顔じっと見て、まだもう少し何か言いたそうな感じだったけど、その一言だけだった。

お前さ、もし暇なら、俺部員じゃねーけど、軽音部で毎放課後ギター弾いてるから聴きに来いよ。

数日後、茂之は、軽音部でホテルカリフォルニアを弾いていた。
ギターソロの途中、視線と気配を感じた。
ふと見ると、ギターアンプに座って直子が見ていた。

ふーん、単なる不良かと思ったら、ギター上手くてこんな哀愁のある曲弾くんだね?
こないだはありがとうね。

別に助けてねえよ。気になって聞いてみただけで、お前がそれ聞いて自力でなんとか出来たらそれが一番いいからさ。

俺、学校でお友達作りましょうなんて柄じゃねーけどさ、俺のギター褒めてくれる奴とは、色々話してみてーから、もし音楽友達になってくれるなら、明日から15時に毎日居るから来いよ。ホームルームサボる事になるけどな。

次の日から、2人は毎日ギター弾いては、音楽話をするのが、日課になった。

ところでさ。もし興味あるなら、俺曲作るから、一緒に音楽グループやってみようぜ!女言葉で作るから、何かギターとか弾きながら歌ってくれ。

私がボーカル?何で?

いじめられてた奴が、みんなが気持ちが動く歌歌って、みんなが幸せな気分になったら、それはもういじめられっ子じゃないだろ?力を一切使わずにあんな女子にも勝った事になるんだよ。

ギターか、ベースやってくれ。どっちが出来そうだ?

家にガットギターあって基礎は知ってるから、どっちも頑張れば出来ると思うよ。

ジャンケンして、お前が勝ったらギターな!負けたらベースにしよう!

最初は👊!ジャンケン!

私負けた!ベースだ!買わなきゃ!

週末、伊勢佐木町ハマ楽器。

えっと、ベース、ベース、、、

どうしたの?ベースかい?
手小さそうだね?少し音圧は下がるけどショートゲージがいいんじゃないかな?

フェンダー5万高い、、、

フェンダー大きくて重いよ。入門モデルでショートゲージなら、アリアプロ2なんか値段手頃でどうかな?

2万、、、またすごい安いわ、、、

安いから不安かい?弾いてみせるよ。

店長さんのベースの演奏はプロ並みで、素晴らしい音がした。

直子は、この赤いベースと、フェルナンデスのベースアンプを買った。

次の日、中庭、昼休み。

おー!それ買ったのか!赤くてかっこいいな!
ちょっと俺にも弾かせてくれ。

すごーい。ベースも弾けるんだね!

ところで、お前弁当食わないの?

私、お弁当作って貰ってないんだよ。いつも購買でパン買ってるよ。
家でもご飯食べないし。

何でだよ?俺んちみたいに貧乏か?

ううん、、、お母さんに嫌われているから、、、

いじめでも泣かない直子の目に涙が浮かんだ

茂之は、直子の本当の気持ちを見た気がした。

そっかー、色々あるよな、、嫌な事話させてありがとうな。いいメシ食える場所紹介するから、今日行かねーか?

金沢文庫じゃなくて能見台だから、1時間歩くけどいいか?

全然OKだよ。私んち、そっちの方。

学校の正門を出て、普通の生徒の通学路とは逆に行くと、江戸時代の旧街道、金沢道が通る緑地を短いトンネルでくぐった。

その先はニュータウンになる予定の、まだ家が無い広い丘を西陽の中進む。

丘の頂上が、スーパーマーケットと大きな公園。
ここから、能見台駅に向かって下り坂になる。

そうだ、お前も電車通学辞めてチャリで通えよ!
あんな満員電車乗ってると、痴漢されるぞ。

心配してるの?そうしようかな、本当に。
あ、そうそう、私呼ぶ時さ、お前じゃなくて、裕美って呼んでよ、呼び捨てでいいよ。

何でヒロミなんだよ。直子と全然違うじゃねーか。

それはね。もっと私に優しくしてくれて、話そうかなって気持ちになったら、話すみ。

まあ、人それぞれ色々あるからな、俺の事も、シゲって呼び捨てで呼べよ、ヒロミ。

能見台駅の100メートル手前、小さな居酒屋、鳥ぎん。

え?居酒屋じゃん、シゲ。

そうだぜ、安心しろ、怒られねーし、学校の先生に会った事もねーから。

中にガラガラと入ると、他にお客はいなかった。

おっ!シゲか!久しぶりじゃねーか!可愛い女の子連れて来たな!彼女か?

うるせーな!バンド友達だよ!

ここはな。困ってる子供に、200円でメシを食わせてくれるんだ。

家でメシ食えないなら、ヒロミも利用しろよ。一緒に来るぜ。

初めて来た子だから、美味いもの出してやってくれ。200円で収まらないなら、俺が出すよ。店長!

美味しそう、、お魚の定食、、、。

ほら、シゲ、サービスだ。
店長がビールを持って来た。

ヒロミも少し飲むか?

私飲んだ事無いし未成年だよ?

一応そんな決まりもあったなあ。でもさ、その決まりが俺たち変な生い立ちの子供を救った事あったか?結局自力で乗り越えて来ただろ?
だから、俺は自分が気持ち良くなるなら、飲む。
今更、真面目ぶっても仕方ないからな。

苦いけど、空飛んでる感じがする、、、。

あまり、無理はするなよ。1杯にしとけ。

シゲ、こんな気まで遣ってくれて、本当にありがとうね。初めの時にありがとうって言いたかったけど言葉出なくて、やっと言えたみ。

俺こそ助けたつもりは無いって言ったけど、助けてヒロミと友達になれたから、よかった。

茂之と、直子こと裕美の出会い、バンド結成の話でした。

~以上、続編に続く~


もふ小説シリーズ、十三峠

2023-02-13 17:07:13 | 日記
物語は、もう100年も前の、神奈川の横須賀。米国のペリーがやって来て、日本が開国をした明治の頃。文明開花と言っても、まだまだ田舎の横須賀は遅れていて、江戸時代の風景を残していた。

江戸から京都へ上る東海道からは外れていたが、鎌倉時代より前は、古東海道という街道が通り、日本武尊が通った伝承もあり、古代から人が住み文化があった三浦半島。
長い歴史でたくさんの悲しい出来事や幸せな出来事を見つめて来た。
横須賀市の逸見、京浜急行の逸見駅周辺は、東海道保土ヶ谷から、浦賀までの旧街道浦賀道の通る山里だった。横須賀は平地が少なく山が、東京湾へ張り出し、山と山の間の僅かな谷や山の上に人が住んでいた。これを、谷戸と呼んだ。
逸見の村も典型的な谷戸の集落で、山に囲まれて、農家は谷の底や山の斜面に住み、東京湾で漁師をする者は、海辺に住んだ。豊かではないが自然と共存した生活だった。子供は、明治以降は、東京や横浜に出る者が増えた。

この逸見の村に2人の幼なじみの子供が居た、漁師の息子雄太と、農家の娘理恵だった、逸見にひとつだけある旧制の小学校に通い、山や海で遊んだ親友であった。

村の外れに鹿島神社という古い神社があった。
おー、やっぱりここにいたのかよ。理恵が昔からなんか居ないなって思うとここに来てるからな。
何、ボーッと考えてたんだ?
、、、、
まあ、いいや、理恵だって考えたい事もあるだろうからな。
それよりあの件考えてくれた?
何だっけ、、、雄太、、、
俺、中学卒業して16になったら、横浜に出て船知識勉強して海軍に入りたいんだ、理恵にも一緒に横浜来て欲しいって話だよ!
、、、すごく行きたいけど、うち貧乏農家だから、お父さんお母さん残して、逸見を離れられないよ、それどころか、どこかへ奉公に行かないといけないくらいだから、、、
そんなの、理恵の事も、理恵の父ちゃん母ちゃんも俺が頑張って食わしてやるよ!
もうだいぶ前に商人のところに奉公に行った、逸見の俺たちの親友の清子ちゃんだって全然帰って来なくなっただろ?理恵までそうなったら嫌なんだよ!明後日、田浦との村の境目の十三峠に朝来て欲しい!
雄太、、、、

2日後、理恵は、十三峠とは逆の汐入との境目の稲荷山に居た。
ごめんね雄太、、、1人で十三峠で待っているんだろうな、、、
私が働かないと、うちはみんな死んじゃうの、、、
さよなら、、、逸見の村、、、

稲荷山を東京湾を見ながら下ると今で言う京浜急行の汐入の街。そして横須賀中央の街。
横須賀中央から、浦賀道は、海を避けて再び山を登った。ここを、うぐいす坂と呼んだ。うぐいすが鳴く、山深い道。理恵は、南に向かった。
登り切ると上町。
ここから、下り坂。今の京浜急行、県立大学駅方向へ下る。
下り切ると、まだ埋め立てられていなかった当時は走水まで続く海岸へ出た。
安浦という街だった。
逸見とは、全く違う海の景色に、理恵は立ち止まった。
まだ、第二次世界大戦前、安浦は、開国で入って来た外国人を相手にした、商人と吉原のような色町であった。
理恵は、色町の小料理屋に向かった。
本当はこんな仕事したくない、、、
私が生まれて来なければお父さんお母さんは、もっとご飯食べられた、、なのに育ててくれたから、恩返ししなきゃ、、、
本当は雄太と、、、もう忘れなきゃ、、、

数日後、、、
小料理屋の女将のお富
理恵ちゃん、また裏で泣いていたのかい?
たまたま貧乏な家に生まれたけどみんな普通の娘だもの、こんな場所でこんな仕事誰もしたくないのはすごく分かるよ。
吉原みたいな高級遊郭じゃないけど、男がやってくる事は同じだしねえ、金髪の外人さんは身体大きくて怖いし。
あ、そうだ村の北の離れには行ったらダメだよ。行っても理恵ちゃんに、何もいい事ないからね!

理恵ちゃんも故郷には好きな人も居たんだろうから、必要な分だけ稼いだら帰る事を考えな。

1週間後、理恵は村の北の外れに来てしまった。
安浦の鎮守のお寺があって、近くには、小屋があった、隙間から覗くと、自分と同じくらいの女性が布団に横になって苦しがっていた。
苦しい、、、水、、、水飲みたい、、、!

理恵は思わず水を持って中に入って、立ちすくんだ。

苦しんで居たのは、逸見の幼なじみ清子だった。
あ、ああ、、お水ありがとう、、え?理恵ちゃん?
ついに見られちゃった、、、

清ちゃん、、?この症状、まさか?梅毒?
なんで?嘘?なんで清ちゃんが、、、、
商人の家に奉公行ってたんじゃなかったの?

商人の家に行ったんだけど、商人の旦那さんに、男を知らない生娘は価値があって外人に高く売れるから、お客取れって言われて。

貧乏な家に生まれたけどさ、、、私だって雄太好きだったし、好きな人にって夢見てた。
名前も知らない外人の男に毎日抱かれて、気がついたら身体ボロボロだったの、、、
清ちゃん、、、理恵は大きな涙をボロボロ流した。

帰りたいよ、、、みんなで逸見の村で、また遊びたい、、、。

清ちゃん、私お客これから、毎日2人取るよ!そのお金でお医者さん呼ぶから一緒に帰ろう!

そんな事したらダメ。私は、もう間に合わないもの、、、もうすぐ、理恵ちゃんとも、雄太とも会えなくなる。
理恵ちゃんは、まだ、間に合うから、こんな場所に居ないで、雄太のところに戻って、幸せになって欲しい、、、。私みたいな事したらダメ。

ここの、遊女は、お寺のお墓にも入れないから、特に私みたいに病気になっちゃった子は、お店の評判を落とせないから、安浦の海からそのまま流されるの、、、逸見の海も同じ東京湾だから、、、私の死体、逸見の海岸に流れついて欲しいな。そうしたら、やっと帰れるね。なんか最近はずっと逸見に居るような幻見るから、脳に病気が行ってるんだね、、、。
私の穢れた身体の死体見たら、雄太には嫌われるだろうな、、、こんな事やってた、女の子だからね。
雄太分かってくれるよ!泣いてくれるよ!

泣いてくれる人が居るなんて、、私幸せだった、、

清ちゃん!死んじゃやだよ!死なないで!
清子は、静かに眠った。17年の命だった。

ううっ!嫌だよお!

次の日清子は、安浦の浜から流された。
理恵は泣きながら砂浜を叩いた。

なんで、、、どうして、、、嫌だよお!

次の日、理恵は、約束の2倍の金額を渡されて、帰るように言われた。給料の他に口止め料の意味もあった。

うぐいす坂の上から、安浦の海を見ると、青くキラキラと光っていた。
まだ春には早い2月の三浦半島の風は暖かく、理恵の大粒の涙を飛ばして行った。
さよなら清ちゃん、お疲れ様、辛かったね。
ごめんね、私逸見に帰る。
清ちゃんも一生掛けて言えなかった事を私は、雄太に言う。

稲荷山を超えて、逸見に戻って、実家の母親にお金を渡し、鹿島神社に向かった。

あ、、雄太、、、
鹿島神社に雄太が来ていた

お前あの時十三峠に来なかったけど、神社来たらなんか会えるような気がしてさ、たまに来てた

雄太!雄太!
なんだよ!なんで泣いてるんだよ!

春、3月、今度は2人で十三峠を超えて、横浜に向かった。
横浜の教会で晴れて2人は夫婦になった。
その後、理恵は遊郭で働く女性の健康を守る研究を医師仲間とする人生を送った。

~完~
この物語はフィクションです