東京都心から近い、居豆半島、温泉や海水浴場が多く、鉄道や有料道路が開通した、昭和の時代には多くの観光客が訪れたが、それでも、半島の南端や、山奥には、人があまり訪れない秘境の里がたくさんまだ存在した。時は、昭和から平成に移る頃、南居豆と呼ばれた、地域、小浦という小さな集落があった。南居豆有料道路が通過していたが、海水浴場や温泉の規模も小さい、観光にも乏しい過疎の、駅から2時間もかかる風景だけが美しい村で、あった。
このあたりには、小さな漁村が多くあるが、漁師や民宿をやらないものは、ほとんど大人になると、東京へ出ていた。
この小浦も、小さな海水浴場と、美味い魚を出す民宿が多く、その素朴さを求める都会人が夏休みは、訪れた。若者は少なく、みんな幼少期から、遊び相手は海だった。
その小浦集落に、漁業と釣り客の案内をしている18歳の若者をいた。ここで産まれ親の後を継いでいる、隆之だった。基本、高校になると若者は、霜田などの高校へ行くため、この集落に同世代の友人はいなかった。都会から来る若者は、大切なお客さん。
そんな集落で、1人だけ。
おーい!店終わったのかよ!
終わった!終わった!夏休みは忙しくて!
この集落で、かつてあった民宿の、同い年の18歳の娘、真実子だった。
親は身体を悪くしたため、高校進学はせず、民宿を土産物屋に改築して働く、隆之の親友の美しい娘であった。
小さな海水浴場や、他に民宿がある為、このような土産物屋も需要があった。
気質が海女などにも向かないので、海に関する仕事も選ばなかった。
明日さ、港の一番外のデカい防波堤来いよ!明日は満月だぞ。
えっ!あそこまで500メートル以上あるし、流れ速いよ!
防波堤より外行かなきゃ大丈夫だって!俺だったら、5往復は出来るぞ。
お前だって、小浦で産まれて育った女だから、泳げるだろ。ここは、サメもいねえし。
次の夜、夏の終わりの満月の下、隆之は防波堤に座っていた。
しばらくして、真実子が防波堤に登って来た。
疲れたか?
何か変だよ。海浅くて、歩いて来れたの。
何かお月様大きくない?
何でだろうな。
港の向こうに、小さい村があるだろ?あれは、目良って言って小浦と兄弟みたいな漁村なんだぜ。最近は、アスレチック出来て向こうに行くお客さん多いけどな。
すごい昔は、小浦の女の子は、目良に嫁に行く風習あったらしいぜ。
お前は絶対に向こうに行くなよ。
うん、絶対行かないよ。迷惑じゃないなら、こっちにずっといる。
なんか嫌な予感して怖い。海の水が全然無くなったよ。助けて。
真実子は隆之にしがみついて唇を重ねた。
隆之は、真実子の水着をスルッと脱がした。
子供の時から、海岸で着替える海女の裸や、海水浴客の裸は、数え切れない程見ていたが、好意を感じる好きな女の裸は初めてであった。
隆之!あれ何?
水平線500メートル先に黒い海の壁があった。
津波?地震は来てない!
もう江戸時代の話、地震来てないのに、村を津波が襲った言い伝えがあった。
お前は、死なせねえよ!
隆之は真実子を防波堤から突き落とし、防波堤の隙間に押し込めた。
いいか!水の上が明るくなったって感じるまで、俺がどんな状態になっていても出てくるなよ!
俺と仲良くしてくれて、ありがとうな!
俺は女ってお前しか知らない。
神様、、、!どっちかじゃなくて、2人とも、助けて下さい、、、!
嵐のように押し寄せた波は、あっという間に防波堤を通り過ぎて村を破壊した。
周りには、真実子しかいなかった。
私、今夜、防波堤来てなかったら、死んでた、、、。
隆之!!
尚、実際の集落には津波が来た記録は、なく、この物語はフィクションです。
尚、地震がなく起きる津波は、元禄地震など歴史上記録があります。
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