星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

日本人のへそ 観劇メモ

2011-04-17 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)
公演名    日本人のへそ
劇場     シアター・ドラマシティ
観劇日    2011年4月16日(土)18:00~21:00 
       (一幕・二幕)
座席     4列

いちおうストーリーは、東北出身で東京暮らしの娘の物語。
時期が時期だけに、井上ひさしさんが舞台の上から、東北パワー
ここにあり、と言っているような音楽喜劇だった。
マスメディアでは表現できないことも劇場でならできる。
演劇って本当は自由なのだ。何も恐れることはない、どんどん
自由に芝居を作ればいいし、観客はそれを自由に享受すればい
いんだよ、って。そんなメッセージさえ感じてしまう作品。



<出演>
石丸幹二、笹本玲奈、辻 萬長、植本潤、吉村直、
古川龍太、久保酎吉、明星真由美、今泉由香、高畑こと美、
町田マリー、たかお鷹、山崎一、小曽根真

作/井上ひさし 演出/栗山民也
音楽/小曽根真 振付/謝珠栄

<あらすじ>
東北岩手から集団就職で上京した田舎娘は
希望に胸膨らませていた。
しかし現実は、希望に膨らむ胸でなく、
彼女のはじけそうな二つのオッパイに、
男達の欲望がふくれてあがる。
職を転々、男を変転と流転続きで、
果てはストリッパーへと転落なのか・・・・、
いやいや、男の玉を手玉にとって、
天下に成り上がる。
その娘の名前は、 ――― ヘレン天津。

(公式サイトより)


井上ひさし『表裏源内蛙合戦』新潮社

この「日本人のへそ」は「表裏源内蛙合戦」の原作を購入した際
にいっしょに収蔵されていた戯曲だ。井上さんご本人のあとがき
によれば、大学時代、アルバイトで浅草のストリップ小屋で働いて
いた時期があり、ストリップの演目(だしもの)は歌と踊りと小芝
居の寄せ集めで殊のほか気に入ったそうだ。
放送作家時代に熊倉一雄さんに芝居とコントと歌と踊りの寄せ集め
の新劇を書いてくれないかと誘われて書いた作品が「日本人のへそ」
で、1969年に恵比寿エコー屋根裏劇場で初演し、連日大入満員。
再び熊倉さんに依頼され「表裏源内蛙合戦」を書いたということだ。

観劇後に、ざっと戯曲に目を通してみると、台詞も言葉遣いも人物
名も全く当時のままのようだ。
登場人物を見ただけであの世界が思い出せるのでメモしておこう。
教授、ストリッパーのヘレン、ストリッパー群、ストリップ劇場の
支配人・振付師、ストリップ・コメディアン、国鉄職員、ピアニスト、
組合のオルグ、全学連の活動家、右翼、ヤクザの親分・子分、博徒、
プロ野球審判員、同性愛者(複数)、代議士、代議士の秘書など。

ストーリーの流れとしては、吃音症の治療のために患者たちを集め、
音楽劇を演じさせることにより治療を行い成果を出す、というもの。
その治療に携わる大学教授自らが芝居の脚本を書くのだが、内容が
ストリッパー「ヘレン天津」のサクセスストーリーになっている。
・・・のはずが、どんでん返しやら、そのまたどんでん返しやらで
いったいどれがほんまやねん!という感じ。
笑い転げて終わり、ただそれだけの舞台のようにも思うが、あえて
分別くさい見方をするならば、人間、見た目では何もわからない。
表面だけで物事の本質を判断するのはナンセンス!と言っているよ
うにも受け取れる。

42年前に書かれた喜劇だし、いま見ると異常にエネルギッシュで、
そのうえヘンテコリンな作品だと思う。
こういう喜劇性の強い作品は、やはり書かれた当時の世相を反映し
ているため、笑いのツボは当時の事件や風俗がわかっているほうが
面白いに決まっている。
でも、それだけでは若い人をはじめ現代人がついていけない。
私の場合、笑いの場面で素直に笑えたのは同性愛ネタを中心に3割
~4割かな。妙にナットクしたのは歴代天皇と国力の関係について
ヤクザのボスが論破する台詞。真剣に聴いちゃった~!
笑いのツボ、他の人はどうだったのだろう?
ミュージカルが苦手な私。一幕の音楽劇のほうは落ちちゃった部分
もあるけれど、二幕はバッチリ。

震災とリンクして見てしまった場面もある。
「日本のボス」の歌の箇所。日本独自の慣習を面白がっている歌詞
なのだろうけれど、日の丸の扇を持っての群舞を見ると、みんなで
がんばろう日本!と言っているように見えた。
ある意味、観劇者としてはこの作品と特殊な出会い方をしてしまっ
たのかもしれない。
時代や環境が違うと違う受け止め方をしてしまう。それって、そ
れこそが演劇的なのでは?

<出演者>
私にとって今回が初ナマ見の、石丸幹二さん
いきなり、股引と腹巻姿をキョーレツに植え付けられてしまった。
ヤクザな石丸さん、にせ大学生な石丸さん、インチキくさく軽薄な
役がステキ、ステキ。歌はどう歌ってもうまいのは歴然です♪
ぜひまた長塚演出作品とか新感線の舞台などに出演してほしい。
笹本玲奈さん。田舎娘の純朴さも、人気ストリッパーの華やかさも、
代議士せんせいの東京妻の貫録も。私たちが思い描く通りのティピ
カルな役をうまく演じ分けておられ、楽しませていただいた。
辻萬長さんを初めて拝見したのが、ナント長塚さんの「TANGO」。
こまつ座はあまり見ていないけれど、この方、歌もお上手なんです
ね。キホン教授役でしたが、お祭りの法被姿がかわいらしかった~。
たかお鷹さんが可笑しくって。蜷川さんのシェイクスピア劇では
ぜったいに見られない役を次々と・・・感服です。
植本潤さん、もっともっとお声を聞きたかったかも。可愛い書生
さんでした。
明星真由美さんもハマリ役だった。とてもウケていた!
山崎一さん、やっぱり好き♪(笑)


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表裏源内蛙合戦 東京公演

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2 コメント

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まさに・・・ ()
2011-04-24 22:22:31
ヘンテコリンな作品でしたね。(笑)
歌あり、踊りあり、笑いもサスペンスも・・・。
そして、何度も繰り返されるどんでん返し!
でもすごく楽しかったぁ~♪

同性愛と天皇の話のシーンは、
どう反応したらいいのか戸惑いましたが、
妙に納得させられる展開に、
(そういうもんなの?)って思っちゃいました。(笑)

たかおさんの振付師には大笑いさせてもらいました♪
返信する
麗さま♪ (ムンパリ)
2011-04-25 00:59:32
井上ひさしさんのこの頃の作品はすごい、ってゆうか
楽しいんだけど、それ以上に観る側も元気じゃないと
全部は受け止められないと思いました。
あのドンデンドンデンした持って行き方、びっくりですよね~。
でもすでに井上さんがやっちゃったから、他の人はこのテ
使えないだろうな~(笑)。

いろんな人が意外な役で笑わせてくれたけど、出色は
なんといっても、たかお鷹さんだよねー!
返信する

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