公演名 表裏源内蛙合戦
劇場 シアターコクーン
観劇日 2008年11月24日(月・祝)
上演時間 14:00開演
座席 1階 A列(+XC列)
圧倒的なパワー。すごいインパクト!
この混沌や猥雑さが70年代なんだね。
そして、井上ひさし×蜷川幸雄が生み出すエネルギーなんですよね。
今回も事前情報を封印しておいてよかった。
本草学者にしてマルチタレント、平賀源内の生涯を一気に見せちゃう約4時間の舞台。
正も負も表も裏も、悦楽も嫌悪も歓喜も狂気もぜーんぶひっくるめてオモシロイ。
鏡と光の劇場で、私もあの群衆の一人になって好奇の目で見物してきたよっ。
・・・と書いてから油断していたら、もう東京公演が終わってしまった!(泣)
劇場に通いつめた友人からは、その後さらによくなったという情報が入っている。
私が観たのは11日前の舞台だから、すでに鮮度ゼロ。
しかも、一部大ネタバレです。
ヘンな先入観が入りますので観劇前の方はくれぐれも読まれませんよう・・・。
<源内一座のコーフン大芝居>
照明がつくと、裃をつけた男女が目の前にズラリ。
ああ、芝居小屋気分満点だよ♪
ワクワクする口上は平成の渋谷から江戸時代の高松への橋渡し。
いよっ、隆屋ーっ! 待ってました、座長公演。
定式幕のちょっとした遊びや、義太夫風の三味線&女声コーラスも楽し~♪
物売り、雑踏の群衆、農民たち、吉原の郭、見世物小屋、座頭たち・・・。
この作品の最大の舞台装置は、次から次へと登場する種々雑多の人間たちだ。
とりわけ当時の長崎や両国の賑わいが舞台上に描き出される場面では、自分まで見
物客になったような臨場感。
舞台上の鏡の中に私たち観客の姿が映る時は残酷な大衆の一人となり、照明の光を
浴びた時には(前方席だったので)業火に焼かれたキリシタンの一人になった。
(ピカドンを連想させるあの閃光に、一瞬場内が静まり返ったのが印象的。)
そこへもってきて夥しい量の台詞、芝居の途中に挿入される歌、歌・・・。
でも、このグチャグチャ感が舞台の醍醐味、楽しさ。
今回は友人のおかげで、二幕目を何の障害物もない特等席で見物できた。
(Kさん、ホントにありがとーねー。)
特に目を開けてしっかり見ちゃったのは、腑分け、雲井太夫と絡む源内の手指の動
き、延々と見せる両国見世物小屋の場面。
<オモテとウラで100%源内♪>
平賀源内といえば・・・
「土用の丑は鰻の日」というフレーズを考えた江戸時代のコピーライター。
私の中ではいつのまにかそれだけの人になってしまっていた。
さらにヤバイことに、平賀源内と本居宣長と杉田玄白と新井白石の区別がつかない。
今回の源内一代記はそんな私によく効く、わかりやすい舞台だ。
それにしても舞台の源内はのびのび生きている。
本当にあの時代の空気を吸っているように。
だからなのか。
観終わった後、かの音楽プロデューサーを思い出してしまった。
と同時に、一人の秀でた才能に群がり、短期間で消費し喰い尽くして、平気で葬り去
ることのできる身勝手な大衆を、そして自分を思った。
その源内を演じる二人。
私は上川さんファンだけど、舞台の勝村さんにはいつもホレボレ。
このユニットによる二人一役はもぉ~っ、たまりませぬっ♪
一人の役者が二面性を演じるのとは違って、二人は一人。
表と裏は善と悪の関係ではなく、あるいは片方の願望が作り出した別の人格でもなく。
つまり、表+裏=100%源内
表が97%の時は裏は3%。表が50%なら裏は50%。
その拮抗関係がもう絶妙なんだなー。
表が有頂天になっている時の裏の気配とか、見ているとホント面白い。
特に二幕に入っての表と裏。片方が大きくなると片方が小さくなる(感じ)。
次の瞬間には逆転しているその拮抗状態にハラハラ。
その表と裏が同等に存在していたのが、腑分けの場面。
ここでは私、久々に得体のしれない感情がわいてきてしまった。
されるがままにその感情を楽しんでいるうちに、今度は自然と涙があふれてくる。
ちょっとマズイんじゃないの~と、誰にも見られないようにこっそり泣いちゃったけ
れど、いま思えば相当エロティックなシーンだった。
冷静に腑分けをしている源内、よく見るとオモテの顔は泣いている。
そりゃそうよ、長崎でひと目見て落ちてしまった、特別なひとの死体だもの。
あ、いや? もしかして歓喜の涙? まさかねー。
ウラは・・・斬り落とされた顔に近づき・・・ウ、舐めた。
その舌は・・・体の上部から爪先に向かってゆっくりたどってゆく。ドキドキ。
あ、そんな裏まで・・・(!)
歌に合わせて進行する死体解剖ショー。リアルな臓物。それを掴み出す手。
アカデミックかエロティックか?
表がウラで裏がオモテ。どっちが本能でも理性でもなく、冷静と悲痛と恍惚とちょっ
とカニバリズムの入った状態を目の当たりにして、私は意味もわからず涙があふれた。
この観劇日から東京千秋楽に向かって凄さが加速したと聞く。
なので、ラストに向かっての大事な場面の感想は大阪編にとっておきたい。
あ、一つだけ。
あの定式幕の使い方がいいんだよねー。
裏源内が最初に開けたのと同じ幕で、自分の人生の幕を引く、というダジャレが好き♪
二人一役で完結、これで100%源内。
大阪では何かが変わるのだろうか?
気になる登場人物の感想も含め、この続きは大阪編にて!
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お初にコメントさせていただきます。あまりにも私の感性にピタッときたムンパリ様の文章の筆致の素晴らしさに反応してしまいました。東京千秋楽を見届けた者の一人として、エロもグロも人生の哀歓も非条理性も、ごった煮状態のこの芝居を、到底「退屈な芝居」などと感じる余裕はなく、ただただ、芝居の醍醐味を面白さを久しぶりに味わった感さえあります。私は、ディープな「上川隆也」ファンでございますが、今回はチケ運に恵まれ、ほとんど前方席でこの芝居を観ることができ、やはり表源内の手指の動きの美しさ、優雅さを目の当たりにして、 全身全霊で演じているご贔屓さんに改めて惚れ惚れした私でございました。大阪大千秋楽も見届けます。
これからもムンパリさんのブログを読ませていただきますので、よろしくお願いします。
東京千秋楽をご覧になられたのですね。
ていうか、今回ずっと前方席だなんて、羨ましいですっ!
太夫と寄り添う上川さんの指先、私たちの視線を弄ぶかのように
饒舌に会話してましたね~っ♪ 目が釘付けでした(笑)。
私は上川さんのことは、ほとんど舞台出演時にしか書いてなくて、
ディープなファンの方には物足りないとは思いますが、それでも
よろしかったらまたお気軽にお立ち寄りくださいね♪
あれからいったい何がどう変わったんでしょう? ワクワク♪
それではごいっしょに大楽を見届けましょう!!