オオカミになりたい(遺言)

ずっとそばにいるよ

新形三十六怪撰より 「蘭丸蘇鉄之怪ヲ見ル図」

2018-08-16 | 新形三十六怪撰

~ 帰ろう... 帰ろう... 妙国寺へ帰ろう ~

『蘭丸蘇鉄之怪ヲ見ル図』

らんまる そてつの あやかしをみるず

 

 大蘇芳年筆

 

森蘭丸(もり らんまる)は安土桃山時代の武将

織田信長に小姓として仕える

 

ある夜更け信長は庭の方から「妙国寺へ帰ろう。」と声がするのを聴いた。

原因を突き止めてこいと命じられた蘭丸が、灯りを手に深夜の庭に立ってみれば

遠い地鳴りのように「帰ろう... 帰ろう... 」とやっぱり聞える

声を頼りに正体を突き止めると、犯人は蘇鉄だった。

しかし秋の虫が鳴きはじめれば聞き漏らしそうな声でもあり

これが天主上層の信長の耳にまで届いたのだから

きっと城ごと念によって揺さぶっているのである。

この城では安息できないとでも云うのか。

少年とはいえ信長の信任を得てきたほどで、蘭丸の肝は据わっている

魔物と見れば斬り捨てんとばかり、臆することなく大蘇鉄に近付いて

左手に持つ灯りを寄せた。すると蘇鉄は黙った。

遠ざかってみると、また呻き声が聞えはじめた。

 

その後、蘇鉄は元にあった妙国寺に戻された。