毎週土曜日に行っている個人的なトレンド確認用の分析の2月26日分。1月31日から2月25日の動きをまとめている。
分析結果と各ペア動きのまとめ まずは、毎週のトレンド分析のサマリ部分だけを以下に載せておく。見方の説明は
2020年2月3日のブログ記事を参照のこと。
各通貨ペアの日足チャートは以下の通り。
出所:セントラル短資FX|為替チャート一覧(https://www.central-tanshifx.com/market/chart/)
ドル円は消費者物価の上昇加速によって3月に0.5%利上げの見方が強まり、2月上旬は強含みの動きとなって2月10日には1月高値に迫る116.3円まで上げた。その後、ウクライナ情勢の緊迫、2月24日のロシア侵攻を受けて114.4円まで下げたが、逆に有事のドル買いとなって115円台半ばまで戻した。
ユーロドルは、ECBラガルド総裁の方針転換で2月3日に急騰した。それまではインフレは一時的というスタンスを取って来たので弱含みの動きだったが、 パウエル議長に続いての急旋回だった。2月7日には利上げ期待の行き過ぎにブレーキをかけるためか政策調整は「漸進的に」行うと明言したが、2月10日には$1.149を付けた。しかし、その後は欧州への影響が大きいウクライナ情勢が緊迫したため下げに転じ、ロシアがウクライナに侵攻し、戦線が拡大した2月24日に急落して一時$1.106まで下げた。ところが、ロシアとウクライナが停戦協議を行う予定とのニュースが流れて翌日は$1.127まで急速に戻した。
ユーロ円はドル円の強含みの動きとユーロドルの急騰で2月10日に133.15円まで上げた。その後はウクライナ情勢を受けて2月28日に一時128円割れまで下げたが、翌日は130.2円台まで戻した。
なお、記事が冗長になるので、今回から全体的な動きのまとめを省き、各通貨ペアの値動きの記載も少し簡略化した。
各国の動きとニュース
米国の消費者物価の上昇が加速しており、1月の米消費者物価指数は市場予想を上回り、前年同月比で40年ぶりの上昇率となった。これによって3月に0.5%利上げされるという見通しがさらに強まった。
ECBのラガルド総裁は、インフレは一時的という見方を示してきたが、2月3日の記者会見で記録的な高インフレを指摘して、予想外にタカ派的な見解を示した。これを受けてユーロが急騰することになった。
利上げ期待の行き過ぎやユーロの急騰に配慮したのか、ラガルド総裁は2月7日の欧州議会で政策調整は「漸進的に」行うと明言した。
ECBもタカ派に急旋回しだが、利上げは最速で7月、まずは量的緩和終了だが3月の政策調整は微妙という見方を以下の記事では解説している。
欧米では利上げ時期の見通しが出ているが、日本(日銀)は利上げの議論自体を否定しているし、現実にも不可能だという見方がある。
しかし、実際には物価は上昇していて、家計は苦しさが増している。農産物等の物不足、原油高、円安によって、このまま値上げラッシュが続き、日本政府にはコントロールできないだろうという見方もある。岸田内閣を見ているといかにもありそうな気がするのが情けない。
オミクロン株については色々情報はあるが、感染力は強いが重症化率は低い、しかしコロナウイルスの特性ゆえの後遺症の懸念は変わらずあるという捉え方を私はしている。
欧米では、重症化率の低さから日本よりも感染者が多くても経済活動優先にかじを切っている。一方、日本では「経済より命」という情緒的なコロナ対策になっている。岸田内閣が野党やマスコミの批判を気にし過ぎているのかもしれないが、多くの国民もそう望んでいるからだろう。その結果、日本経済の正常化が遅れ、世界経済からますます取り残されてていくことになる。
ロシアのウクライナ侵攻については、ソ連時代のクリミア半島のウクライナ移管、その後のソ連崩壊、NATO拡大、ウクライナ併合、ミンスク合意など色々経緯もあって、欧米発のニュースだけが正しいことを伝えているとも思っていない。ただ、何が真実かはわからないし、株式市場や為替に大きな影響を与えるので、動向や情報は注意深く見守ってきた。
ウクライナ誕生以降の状況の図解のまとめが以下にある。
上の図解の中には、クリミア半島併合時の紛争後の和平合意であるミンスク合意についてはなぜか書かれていない(見落とし?)。ミンスク合意のまとめは以下にある。
最近では情報戦も展開されてきて、2月16日に侵攻があるというやけに具体的なニュースや、ロシアが侵攻する場合のシナリオ、経済的損得等から見て実際の侵攻はありえないという識者の解説等も溢れていた。
それで、実際には起こったこと(事実)は以下だ。記録として少しメモしておく。
2月15日にウクライナ東部の親露派が占める地域である「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」 を独立国家として承認するようプーチン大統領に求める決議案がロシア議会で可決された。元々2月16日に侵攻という話はその翌日が想定されたものだった。
2月22日にプーチン大統領は、ドネツクとルガンスクを独立国家として承認し、平和維持という名目で派兵を決定した。ただ、ここまではロシアが侵攻する場合のシナリオとして一番想定されていたことだったので、2月23日までは株や為替も改めて大きく動くことはなかった。
2月24日になって実際にロシアが侵攻したが、東部だけでなく、キエフや各地の空港や基地までもミサイル攻撃した。日本時間の午後に入った頃であったが、ここまでは想定外だったので株やユーロが大きく下げた。
2月25日の夜(日本時間)にはプーチン大統領がゼレンスキー・ウクライナ大統領による停戦交渉の提案に応じ、ミンスクに代表団を送る用意がある旨のタス通信発のニュースが流れていた。日本株や為替は25日に入った時点でもう反発に転じていた。欧米は軍隊を送らず戦火は拡大しそうにないため、材料出尽くしと判断されたのだろう。
欧米等は経済制裁を発動しているが、自国の利害を踏まえた上での決定なので、何か弱々しい制裁になっている。例えば、ロシアの有力な外貨獲得手段である一方、欧州が依存している天然ガスを輸入禁止にするという話は出ていない。SWIFT(国際送金ネットワーク)からの排除という脅し文句も出ていたが、欧州を始めとするロシアの主な貿易相手国へのダメージが大きいので今のところやられていない。
米国でも、iPhonや自動車、戦闘機などさまざまな製品の材料として使用されるアルミのロシアからの輸入は制裁を見合わせるという話になっている。ここまでくると笑い話のようだ。
結局、ウクライナとロシアが対立するよう仕向けてさんざん危機を煽り、各国ともウクライナに武器は支援/輸出しても軍隊まで送って一緒に戦う気はない、ロシアに経済制裁はしても自国に影響の小さい範囲でということだ。国益という観点からは、他の国のことなんてそんなものだろう。日本も真剣に国防のことを考えるべきだと思う人が増えそうだ。