トーキング・マイノリティ

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海外留学を呼びかける人々 その①

2010-02-21 20:52:51 | マスコミ、ネット
 先月19日(火曜日)、河北新報の「座標」というコーナーに、「可能性信じに挑戦を」と題したコラムが載った。投稿者は「インターフェイス」代表取締役社長の野澤一美氏。「職業選択」という見出し付きで、野澤氏は海外留学を果たして今の地位を築いたと主張するコラムを書いている。その全文紹介したい。

-13年間暮らしたアメリカのテキサス州ダラス市から、起業するために秋田市へ単身赴任をしてから4年が過ぎた。その間、ゴールデンウイークと年末年始の年2回は米国に住むアメリカ人の夫を訪ねている。成田空港から直行便が米国系航空しか運航していないため、海外への移動はずっとその航空会社を利用していたのだが、JAL(日本航空)に勤務する友人がシカゴに転勤したこともあり、今回の年末年始は久しぶりにシカゴ直行便のJALを使ってみた。
 最近、経営苦で新聞をにぎわせているJALではあるが、機内サービスに関しては全く不満は無かった。美しく身だしなみを整え、丁寧に対応してくれる客室乗務員から受けるサービスはVIPにでもなった気分にさせてくれた。

 そういえば、客室乗務員は私の小さい頃の憧れの職業だった。単純にテレビドラマの影響だ。今、目の前で働いている彼女達を観察すると華やかに見えるが肉体労働の部類に入るのではないかと思うくらい忙しく動き回り、客室の要請に一つ一つ応えている。
 親戚の殆どが教師であったためか、私が生まれた埼玉の、ど田舎(皆野町)には他に選択肢がなかったためか、両親は私に教師か公務員になることをずっと勧めていた。安定しているからだそうだ。教師という職業に特別魅力は感じなかったし、四年制大学に落ちたこともあり、私は親の期待を裏切り簡単にOLに方向転換した。

 他に進むべき道は何も見つからなかった。27歳で典型的負け犬OLとなり米国へ逃げ出したのが幸いし、現代は秋田市で化粧品やサプリメントをテストするモニター試験の会社を起すことが出来た。米国に行くまでは、こんな職業が世の中に存在することさえ知らなかった。英語が話せるようになってからは、英語を使わなければならない、色々な仕事も舞い込んでくる。秋田でも海外留学をする若者達が増えているが、彼女達に「将来どんな職業に就きたいの?」と尋ねると「秋田に来る外国人観光客に英語でガイドしてあげたい」「英語を教えたい」「通訳になりたい」という答えが返ってくる。20年前の私と同じだ。

 国際社会では英語は話せて当り前。英語が国際語と言ってもいい。夫と出会った当時言われたものだ。「米国では皆英語が話せる。君は英語以外の何かを習得しなければ仕事は見つからないよ」。英語が話せることはそれだけで大きな強みとなるけど、世の中には想像できないくらいの数の仕事がある。その仕事に英語を生かすことが出来ればマーケットは日本だけでなく、世界だ。
 学校教育の中で、表に出ない研究職のような仕事などに接する機会や世界中の職業について勉強するチャンスがもっとあれば、子供達の職業選択の幅が増えるのではないだろうか。私は職業について勉強しなかったことをとても後悔している。1人で海外留学できるくらいのエネルギーのある若者達には、自分自身の可能性に挑戦してほしい。そしてカッコよく世界を飛び回ろう!

 野澤氏のプロフィールの紹介には「1964年埼玉県生まれ。米国テキサス州立大学電子工学科卒。化粧品コンサルタントとして独立し、2006年6月から現職。秋田テレビ放送番組審議会委員、秋田人変身力会議幹部」とある。新聞で初めて私は氏の名を知った上、上記の短いコラムだけでは彼女のそれまでの半生や事業活動のことは不明である。コラムに添えられた2㎝角のモノクロ写真からは、化粧品を扱うコンサルタント会社代表取締役だけあり、女社長よりも高級ブランド売場店員のようにお洒落で洗練された印象だった。
 ただ、文は人なりと言われる。コラムへの私の感想を思う存分述べてみたい。同年代であっても野沢氏と私は価値観や性格も異なるため、氏の主張は殆ど共感を感じなかった。

 ズバリ言えば、河北という地方紙に相応しく、未だ海外留学して英語を習得すれば職業選択の道が開けるという、夢物語を煽るコラムに過ぎず、世界を飛び回っていると称する割にまるでカッコよくない。氏は米国の大学で電子工学を学んでいるが、結局はそれと無縁の化粧品のコンサルタント会社社長に納まった。夫婦のあり方は多様だし、他人がとやかく言うべきではないが、4年間単身赴任で夫と会うのは年2回、織姫と彦星よりはマシだが、米国人の夫に同情した。私のようないい加減な性格なら、これ幸いと浮気をしているだろう。

海外留学の実態&高校留学の裏事情!」という興味深いサイトがある。海外留学体験もない上、する動機もないため私はそれまで海外留学情報には全く無関心だったが、この記事を見てマスコミが留学を持ち上げる背景がやっと分かった。記事から一部引用したい。
テレビでも雑誌でもマスコミは留学をなんだか格好いいもののように持ち上げる。それを見たやつらは、つい夢をみちゃうわけさ。「私も留学したらステキな人生が開けるんじゃないかしら?」って。でも現実は、そんなに甘いもんじゃない。今は犬も杓子も留学する時代だから、ちょっと留学して英語が話せるようになったって、それだけじゃいまどき誰~にも見向きもされないよ。「英語が生かせる仕事がしたい!」なんて言う人も多いらしいけど、2~3年留学したぐらいで、英語バリバリの仕事なんかにつけはしない。にもかかわらず、甘い言葉にだまされた女性が「自分探しの旅」とか言って留学するケースが急増してるんだ…
その②に続く

◆関連記事:「若者に告ぐ
 「英語を話すサル

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6 コメント

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マスゴミ (人参)
2010-02-21 23:34:06
いろいろ箇条書きみたいになりますが・・
少し前は派遣労働はかっこいいみたいなドラマがあったと思います。
アメリカは厳しい競争社会よっぽど実力と意志が無いと成功しないのでは?
アメリカンドリームは一部の人の為で、実際はパイプドリームなんて言われてる。
ドイツである日本人ビジネスマンはこう言われたりもするようです、「彼はドイツ語も英語もペラペラだけど、日本のことを聞いても日本のことは何もわからない。」
多くのアメリカ留学する日本人はアメリカシンパに作り上げられ帰国する。
かつて大英帝国がインド人を留学させてやっていたことと同じ。
欲ボケ日本人は食い物にされるだけ。
お邪魔しました。
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雑感 (スポンジ頭)
2010-02-22 20:45:41
イギリス駐在をしていた人が喋っているのを漏れ聞きましたが、外国人相手にはどうしても譲れない線を引く必要があるそうで、中々外国暮らしは大変だと思ったのもです。安易に留学すると、却って相手の言いなりになる人間ができるのかもしれません。
日本で就職するのを考えれば分かりますが、言葉は喋れて当たり前で、それとは別に対人交渉能力とか、相手の要求を汲み取る能力とか、語学以外の長所がないと誰も雇ってはくれません。留学先で、語学以外に身につけたい技術を身につける目的で留学するのが自分の利益になる留学になるのじゃないでしょうか。
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Re:マスゴミ (mugi)
2010-02-22 21:53:48
>人参さん、コメントを有難うございました。

 仰るとおり、少し前までは「一生一つの会社に縛られるのはダサい」「社畜」とかこき下ろし、派遣労働やフリーターを持ち上げる風潮がありました。それが不景気で一転、今や社会の哀れな犠牲者扱いです。派遣労働を徹底して悪用しているのも新聞社ですが、そのくせ格差社会を叫ぶ欺瞞性。

 マイケル・ジャクソンのようにアメリカンドリームを実現した人物もいますが、これは極例であり、かなりの実力と意志、さらに運がなければ成功しないでしょう。メディアでは彼のような人物を大々的に持ち上げますが、それを見た者は自分もやれると錯覚する。
 アメリカが多くの外国人留学生を受け入れるのもビジネスだけでなく、シンパを形成するという国家戦略があるのです。帰国した日本人は米国の代弁者となり、その見返りに幾らかの報酬を得る。マスコミには米国の息のかかった業界人もかなりおり、ネット世界でもその類を見かけますね。欲ボケ日本人は彼らに認められたと有頂天になっている始末。

 ただ、インド人独立運動家の多くは大英帝国に留学した者でした。そのような気概を抱く日本人留学生が出てくることを、今は祈るばかりです。
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Re:雑感 (mugi)
2010-02-22 21:57:33
>スポンジ頭さん、

 日本以外は全て習慣や文化が違いますから、滞在先が何処でも現地人に対しては、どうしても譲れない線を引く必要があるのは当然だと思います。ただ、日本人の場合、国内で他人と協調することが常に求められているため、特に外国なら現地人の言いなりになり易い人間が少なくないのかも。

 記事にした女性社長のコラムには、どうも“きれい事”を書いているように感じられ、縁もない秋田県で起業したのも不可解です。この手の女性社長がコンサルタント業で外国人の夫というパターンなのも意味深。女性は広告塔に最適ですし。
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秋田県で起業した理由 (とおりすがり)
2011-02-15 22:19:29
野澤社長が、なぜ秋田で起業したのかネットに載っていましたので、簡単に紹介します。

アメリカでバイトをしたのが化粧品などの治験を行う研究所だった。
こんなに楽しい仕事があったのかと驚いた。 その後、正社員になり、12年間勤務。
秋田県内に住む知人の紹介で、あきた企業活性化センターの創業支援室を訪ね、インター社を起業した。
(夫の一言も、秋田で起業する後押しとなった。旦那さんが日本に来たりしている。)
化粧品メーカーへの営業の際、「秋田美人」という言葉の持つ影響も計算した。
気温が低く日照時間が少ないため、試験結果に外的影響を与えない好環境です。
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RE:秋田県で起業した理由 (mugi)
2011-02-16 21:31:46
>とおりすがり さん、

 野澤氏がなぜ秋田で起業したのか、情報を教えて頂き有難うございました!秋田に住む知人がいたり、伴侶が来日した体験もあったのですね。埼玉県出身の氏が、秋田県で起業した訳が分かりました。

 日本国内だけでも化粧品メーカーは数多くあり、熾烈な商売を繰り広げています。今後、氏の事業がどう発展するのか不明ですが、少なくとも女社長だし、宮仕えの客室乗務員よりはるかによいでしょう。野澤氏に関して別な記事にも取り上げましたが、最近メーカーが新聞広告などでやたら「化粧品モニター」を呼びかけている背景が伺えました。
http://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/8b56e8578c791bbb04708b89647eaa84
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