その一の続き
宗教紛争といえば、私が先ず浮かぶのは印パ分離独立時での衝突と夥しい虐殺。同じインドの街や村に居住しながら宗教が違うというだけで互いに殺戮し合い、大量の犠牲者と難民を生み出す。この時の死者は百万人に上り、1千万人が住み慣れた故郷を追われ、移動を強いられたという説がある。
印パ双方の作家たちは、「動乱文学」という分離独立時での大混乱を描いた作品を発表しており、私も幾つか読んだ。中でも印象的だったのが、インド人作家ビーシュム・サーヘニー作『タマス―暗黒―』と、パキスタンの作家サアーダット・ハサン・マントー短編集『グルムク・スィングの遺言』。
サーヘニーはパンジャーブ地方生まれだが、この地方は最も混乱と犠牲者を出している。『タマス』には文字通り暴動時の暗黒が描かれている。もはやこれまで、と井戸に身を投げて集団自決したシク教の女性たち、家まで送ろうとした親切な香水売りのムスリム商人を刺殺する少年の例を挙げただけでその陰惨さが知れよう。
それ以上に恐ろしいのは、たとえ幼なじみで子供の頃から遊んだ仲でも異教徒を攻撃する者、日頃はシク教徒の知人に手出しはさせないと公言していたムスリム長老も暴動時には庇えず、村を出るように促しただけだった。ヒンドゥー、シク、イスラム教徒等は互いに暴力と殺人、放火を競い合い、隣人を攻撃する。
動乱の中で多くの婦女子が誘拐され、性的暴行を受けた。誘拐された婦女子を救出する勇敢な人々もいたが、救出は困難を極めた。拉致した連中は神出鬼没で捜すのは容易ではない。ようやく女性を発見、連れ戻そうとしても家族が引き取りを拒んだり、ショックで気が狂った女、飲酒癖がついた娘もいた。過去記事からマントーの小説「神に誓って」の一編を引用したい。
「収容された娘や婦人たちについて考えようとしても、わたしの頭に浮かぶのは膨らんだ腹だけだ―あの腹はどうなるのだ―あの中に詰まっている、あれの持ち主は誰だ―パキスタンかインドか?それに、あの9ヵ月間の持ち運び料―料金を払うのはパキスタンかインドか?」
他の動乱文学にも目を覆いたくなる惨状が描かれていたのは言葉もなく、多宗教・多民族国家の暗黒は日本人には理解不能だろう。印パ分離独立時での衝突が、現代に至るまで続くカシミール紛争にも繋がっている。同時に顔見知りでもない異教徒を助けた人々もいたのはせめてもの救いだった。このような人々は少数派であっても。
私が記事で陰惨な“タマス”を書くのは、一旦民族紛争が起きれば、30年以上の友情すら危ういという世界の現実を紹介するためなのだ。多文化共生社会など夢物語なのが現実だから。
河北新報の記事に載ったタチヤナさんのケースは、「夫はウクライナを好きになれなかった」という言葉から、軍事介入以前から夫婦間にすれ違いがあったのではないか......とも感じた。実家には軍人の多い夫がロシアびいきなのは当然だし、軍事介入がなくとも関係は冷え込んでいたのかもしれない。
ちなみにタチヤナさんが住んでいたウクライナ東部ルガンスクは、ウクライナ人の方が多かったそうだが、今はロシア系の方が多いかもしれない。ロシア系住民がウクライナ人の自宅ドアに「出ていけ!」と書けるのも、武装勢力がいるからだ。こうしてウクライナ人は追い出され、人口侵略が完了する。
ウクライナ東部にロシア系住民が多いのは、旧ソ連時代のホロドモールの結果と言う人もいる。ホロドモールのため、人口が大幅減少した東部にロシア人が入植したというが、あり得ないことではない。
いま現在、タチヤナさんの移住したハリコフは大規模な攻撃にさらされており、ユニークなツイートをされる在日ウクライナ人アンドリー・ナザレンコさんの故郷でもある。
◆関連記事:「戦争の一種」
「タマス―暗黒―」
「グルムク・スィングの遺言」
https://www.youtube.com/watch?v=77NQVls5nbw&t=646s
ナザレンコ・アンドリー氏によるとバルト三国の方がロシア系住民が多いのですが、ロシアは軍事介入したことはありません。それはNATOの抑止力が効いているからですが、独立の際ロシア系住民に国籍を与えず、参政権を認めなかったことによることが大きいのです。
ウクライナは独立の際にロシア系に国籍を与えてしまい、そうしたロシア系住民が政治的影響力を駆使して、NATO加盟を阻止したそうです。
ここに国内に異民族を定住させ、国籍や政治的権利を与えることの危険性が見て取れると思います。
日本でも、外国人参政権、二重国籍の要求、多文化共生など声がありますが、日本に帰属意識を持たない、日本人に同胞意識を持たない異民族が定住し、政治的権利を行使したらどうなるか?
日本のためではなく、出身国や自分の帰属する民族の為に行使すれば、日本の安全保障や国の根幹そのものを危機に追いやる危険性をはらんでいることは、今回のロシアのウクライナ侵攻が立証したように思います。
日本人は閉鎖的だ、排他的だ、島国根性だ、外国人差別が酷いなどとお決まりの非難を聞きますが、日本人が異民族という理由でリンチにかけたり、集団虐殺を行ったわけではないでしょう。
日本に忠誠心や帰属意識を持たない外国人に対して、一定の線引きをして扱うのは、差別ではなく防衛行動なのです。日本人は、日本という国を守る権利があるのですから。
三つ合わせてもウクライナよりも小さなバルト三国は賢明でしたね。そもそも米国さえ簡単には市民権も与えないし、米国に忠誠を誓わせます。↓のコメントには同感しました。
「ナザレンコフさんのおっしゃった、「抵抗を止めた段階から虐殺が始まる」は、全くの真理だと思います」
>>日本人は閉鎖的だ、排他的だ、島国根性だ、外国人差別が酷いなどとお決まりの非難を聞きますが、
日本から出ていくどころか、不法入国までして居座る外国人が絶えない事実だけで、これらの非難はフェイクまみれの反日キャンペーンに過ぎません。差別がひどい日本からドイツに移住したはずなのに、早々に日本に戻った辛淑玉のような在日もいる。
ナザレンコ氏のツイッターには、サヨク若しくは特亜ウヨが荒らしに現れますが、「クソ外国人、出ていけ!」はともかく、「島国根性」と言ったヤツまでいました。さすがのナザレンコ氏も呆れていましたが。
日本での異民族集団虐殺に、関東大震災時の朝鮮人虐殺を挙げられます。虐殺はあったと思いますが、私に言わせると他国に比べれば実に温い。他の地震国なら震災がなくとも集団虐殺は起きているし、ロシアはナチスに先駆けポグロムを実行した国でした。
日本にあるロシア料理店やロシア人に嫌がらせが起きているという話がありますが、欧米なら店への襲撃、ロシア人への暴力は珍しくない。米国に忠誠心や帰属意識を持たない外国人に、米国人は決して寛容ではありません。
その前に、アフガン紛争の時のようにウクライナ人が頑張りロシア軍が疲弊して撤するのが理想ですが。
先に牛蒡剣さんがコメントされていたように、ウクライナ自体も北朝鮮や中国に高度な軍事技術をばらまいていたので手放しでは同情できませんが、今は孤立無援の中で奮闘しているウクライナ人を称えます。