アフガンでタリバンが全土を掌握、20年目にして政権奪還を果たした。米軍撤退後はタリバンが国を制圧するのは時間の問題と見ていたが、それにしても早すぎる。
タリバンの復活にはイスラム世界に関心のない日本人でも衝撃的だったはず。中東史に関心があると言え、私の関心は専らイランとトルコなので、アフガンには私も詳しくない。それでもタリバン政権奪還に思うことを書いてみたい。
タリバン政権復活ということで、今後のアフガン女性はどうなる?と危惧した日本人は少なくないはず。アフガン女性には別に親近感がなくても、同性ということもあり、私も気になった。現にタリバン支配地域では未婚女性や少女が誘拐されたという情報や動画も出ており、やはり……と思った人は少なくないはず。日本や欧米ならこの行為は完全な犯罪行為だが、現アフガンならば犯罪にもならない。
実はタリバン政権奪還以前から、アフガンでの女性虐待は続いており、アルファブロガー鈴木傾城氏の記事「タリバンの首都奪還。アフガニスタンの女性は、なぜ焼身自殺しようと思うのか」にはアフガンでの重い実情が描かれている。
実は私も鈴木氏のブログで、焼身自殺を図るアフガン女性が多いことを初めて知った。キリスト教と同じくイスラムの教義では自殺だけで大罪だが、死後の復活を否定する行為なのは、少しでもイスラムを知る人なら判るはず。そのため火葬を認めず、土葬を行おうとする日本在住のムスリムがトラブルを起こしている。
飛び降り自殺や入水自殺というやり方もあるのに、インドならともかくアフガンで女性の焼身自殺が多いのが不思議だった。その背景を鈴木氏はこう述べている。
「生半可な死に方では、生き残ってしまえばそのまま結婚に追いやられてしまう。しかし、焼身自殺ではどうだろうか。生き残ったとしても、皮膚は溶解し、容姿は破壊されている。
そんな姿の少女と結婚したい男はいない。彼女たちは本気で死ぬつもりで焼身自殺するが、万一助かったとしても二度と結婚の話はない。それが彼女たちの望みだったのかもしれない。」
この見解は衝撃的だった。返って男性の鈴木氏の方が追い込まれた女性の心理を理解していたのだ。記事には焼身自殺を図っても未遂に終わり、大やけどを負った女性の画像が5点ほど載っているが、顔や体が覆われているはじめの一つを除いて、酷いものばかりで言葉を失う。匿名のコメントも重いが見方は鋭い。
「イスラム教で「焼死」というのは復活(転生)の否定なので、随分重い死に方ですね。もう来世などいらない程、現状が苦痛なのでしょう。地獄を終わらせる方法が焼身自殺とは…」
以下は記事の1章。
「アフガニスタンでは、まだ10代の女性が貧困のために無理やり父親に結婚を強要されることが当たり前に起きる。
金で若い娘を買って結婚する男がいて、貧困家庭はそれを拒めない。結婚の60%はこうした結婚であると言われている。
10代で結婚というのは、実はアフガニスタンでは珍しいケースではない。今でも花嫁の半分以上は10代であると言われている。中には10代どころか、10代に満たない少女ですらも結婚させられるケースもある。
先進国から見ればそれは人身売買であるが、アフガニスタンから見れば、それは「結婚」である。
アフガニスタンでは敵対する相手に娘を嫁に出して互いに休戦するような、昔の日本の政略結婚のようなものも残っている。こうした結婚が成り立つというのは、女性の人権がこの国では制限されているということに他ならない。
結婚する当事者の女性がどんなにその結婚を嫌がっても、それは結婚を止める理由にはならない。父親がいったん結婚させると決めれば、それは有無を言わさず従わなければならないのである。」
続けて記事からの引用。
「アフガニスタンでは、女性や少女が数百人単位で投獄されている。彼女たちの犯した犯罪は「モラル・クライムズ」と呼ばれている。モラル(道徳)を破ったのだ。
どんな道徳を破ったのか。
その多くは、「虐待する夫から逃げた」とか、「強制結婚から逃げた」というものだった。つまり、アフガニスタンでは夫からの暴力は受け続けなければならないものであり、強制結婚は受け入れなければならないものなのである。」
「モラル・クライムズ」とは聞きなれぬ用語だが、日本で言うと風紀紊乱罪とでもなるのだろうかと鈴木氏は述べ、この国の「モラル・クライムズ」を解説する。
「アフガニスタンで投獄される少女の90%、成人女性の50%は、この「モラル・クライムズ」で投獄されている。虐待する男から逃げて投獄されるとは、信じがたいがこれがアフガニスタンの現実である。」
その二に続く
◆関連記事:「子供の情景」
「アフガン零年」
「アフガニスタンの社会と文化」
一方的に嫁(というか〇〇)として買ったような場合でも、その対価分は尊重するはずで、なんか釈然としません。
安いからといって中国産の野菜を食べてはなりません。違法農薬が使われている可能性が高く極めて危険です。
我々が行動を変えることで世界への貢献め考えるべき時期だと思います。
アフガンは未だに部族社会なので、部族同士の政略結婚は珍しくないでしょう。ただ、その場合は嫁はそれなりに尊重されるはずだし、粗略には扱われないと思います。
この場合は政略結婚というよりも、貧しさゆえの娘の身売りの方が相応しいでしょう。つまり口減らし。日本も戦前にはそれがあったし、売られる先が遊郭だったという違いがありますが。
タリバンにもウイグル人が参加しているそうですが、彼らは主導権を握れません。トルコさえ中共の顔色を窺っている有様。イスラム諸国で中共を非難する国はなく、行動を変えること自体が難しい状況には絶望的になります。