日本も含め東アジア諸国や東南アジア、中東すら膨張する中共の覇権主義に膝を屈する中、インドは中共に対抗できるアジア唯一の国だろう。日本では相も変わらずインド情勢はネガティブなものが大半で、しかも「報道しない自由」となるのもしばしば。
そんな中、2021年02月04日付のブログ記事「インド政府、米歌手らの「農民デモ支持」のツイートを非難 ←当然ですね」は嘆息させられた。以下は記事からの引用。
https://www.afpbb.com/articles/-/3330098?cx_part=top_category&cx_position=1
ツイッターで1億人以上のフォロワーがいるリアーナさんは3日、農民デモの複数の野営地でインターネットが遮断されたことを伝える記事を投稿し、「なぜ私たちはこのことについて話さないの?!」と書いた。これに対し、数十万人がリツイートや「いいね」をした。
(中略)
インド外務省は3日、海外著名人はインドの内政問題からは距離を置くべきであり、「この問題に対する適切な理解」が必要だと指摘。特に著名人や無関係な人によるこのようなコメントは正確ではなく、無責任だと批判した。
インド映画界「ボリウッド(Bollywood)」の女優でモディ氏を支持するカンガナー・ラーナーウト(Kangana Ranaut)さんは、農民デモ参加者らを「テロリスト」、リアーナさんを「愚か者」と呼んだ。
このほかアヌパム・カー(Anupam Kher)さん、アクシャイ・クマール(Akshay Kumar)さん、スニール・シェッティ(Suniel Shetty)さんといった俳優や、監督のカラン・ジョーハル(Karan Johar)さんが「外国人」への反発を示している。
(ここまで)
この出来事に対し、ブログ主はこう述べている。
―碌に現地の事情を知りもしないで、よくこんな戯言吐けますね。この農民デモの原因となっているのは、農業新法の成立により、農産物の最低価格保証の撤廃や大規模農業企業の進出が行われ、中小零細農民が没落することを懸念してのことです。
最低価格保証は消費者にとっては最悪の制度で、日本のコメなど市場価格の5~10倍というぼったくり価格ですから、もし最低価格保証が撤廃されるなら、消費者にとっては朗報以外のなにものでもありません。
一方、農業の大規模化については、他の業界ではとっくの昔から起きていることであり、農業だけを特別視する理由がありません。
それに、米国こそ大規模農業の総本山みたいなところで、このリアーナという歌手がそのことを知って言っているとしたら、極めて悪質ですね。
それから、中国も多くの農民から土地を没収し、その没収した土地を集約して、大規模農業を推進していますが、誰か騒いでいる人いますかね?
最低価格保証については全くの浅学なので今回は触れない。尤も最低価格保証が撤廃されると、不作時に米が暴騰する可能性もあるのではないか?
実は河北新報でも、米歌手らの「農民デモ支持」のツイートを国際面下段で小さめに取り上げていた。当然インド外務省やボリウッドスターたちの反論は「報道しない自由」扱い。
それにしても、名だたるボリウッドスターが碌に現地の事情を知りもしない「外国人」への反発を示しているのは実に羨ましい。同じことが日本で起きれば、メディアは米歌手を絶賛、返す刀で日本政府や日本社会を非難、日本の芸能人もそれに続くはず。ほら、米歌手も指摘している、日本はなんて遅れているのだ云々という論調ばかりになるはず。
迂闊に芸能人が碌に現地の事情を知りもしない「外国人」への反発を示せば、その人物は極右やらアナクロでコッケイな国粋主義者等と散々罵詈雑言を浴びせられ、芸能界から追放させられるのが今の日本である。対照的に愛国主義的ではない、と見なされたら芸人生命のみならず、身体生命の保障も危ういのがインド。作品の内容によっては、映画館が放火されることもあるほど過激なのだ。
もちろんボリウッドスター全てが国粋主義者ではないし、モディを支持しない者もいる。しかし、反体制派でなければ芸人にあらずといった風潮一色の国よりずっと健全ではないか。
チャイナマネーに踊らされるハリウッドは、既に中共の意向に沿う作品を量産するようになって久しい。しかし実写版ムーランが典型で、中国人に阿った作品を制作しても、肝心の中国でコケることもある。最近では映画通の中国人の中にはインド映画に関心を示す者までいるらしい。
英国統治時代のインド知識人には、欧米列強の植民地にならなかった日本に憧憬を抱く者が少なくなかったという。いかに諸行無常といえ、現代はインドを羨む日本人も結構いるかもしれない。
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