その一、その二の続き
著者が述べた、「人はある一つの性格面と正反対の面を誰かに指摘されると、自分が納得できる言葉にだけ注目する」(41頁)は興味深い。極度に自己中で己が特別と思い込み、都合の良い面しか耳に入らぬ者がいるが、性格異常者ならずとも総じて人は、自分が納得できる言葉にだけ注目する生き物らしい。
占いがはずれた時、占い師が失敗を目立たなくするために使う手段もあざとい。外れだった内容を広げていき、何かに当てはまりそうなことを言い続ける。または、「私の言ったことは例えです」といった抜け道も抜かりない。ただ、この類のテクニックは政治家も巧だし、メディアに登場するコメンテーターの論点ずらしは十八番なのだ。
第7章「予知能力の真偽」の扉には以下の言葉が載っていた。
「母体となる人口が多ければ多いほど、ある事件の「予知夢」を見たという人は多くなる。」……「大数の法則」
予知夢については古代から論じられており、アリストテレスも『夢による予言』と題する短い論文を書いていた。この哲学者が下した結論は、予言的な夢はまぐれ当たりとして忘れ去ってよい、だったという。
睡眠の科学者は、人がひと晩に平均4つの夢を見ていることを発見したことが本書にある。夢はおよそ90分おきに現れ、それぞれ20分ほど続く。そして目覚めた時にはその大部分を忘れているため、夢を見たという印象は遥かに少なくなる。
ただし、夢を見ている間にたまたま目が覚めた時は、この原則は当てはまらない。また夢は非現実的な場合が多いので、実際の出来事に合わせて簡単に捻じ曲げられるそうだ。
著者の予知夢への見解も意味深いものだった。
「つまり、あなたは沢山の夢を見て、沢山のできごとを経験する。たいていの場合、夢は現実と重ならないため忘れ去られる。
だが、まれに夢が実際のできごとと重なる場合がある。すると突然夢の記憶が甦り、貴方は夢に未来が出てきたと思い込む。だがじつのところ、それは単に可能性の法則が働いた結果に過ぎない。」(261頁)
意外だったのは7章のコラム「フロイトのでたらめ」。フロイトといえば未だに夢判断の権威と思われているが、現代の多くの科学者はフロイトの理論は誤りであり、夢の判断をしても全くの時間の無駄と考えているそうだ。この章の結びに苦笑した読者も少なくなかったかもしれない。
「睡眠の謎には、まだ未解決な部分も多い。だが、一つだけ確かなことがある――超常現象を信じたい人たちにとって、睡眠の科学が発見した事実は悪夢であることだ。」(280頁)
ヒトが何かにパターンを見つける能力で、全く無関係な二つのものの間に関連性を見出そうとするのは、人類が進化の過程で身に付けた能力と著者は言う。パターンを見出す能力が生存にとって極めて重要であるため、ヒトの脳は正しい因果関係が分からない場合でも、いくつか架空のパターンを見つけようとする。
この視点から捉えてみれば、“超常体験”も脳がしくじった結果ではなく、ヒトがそれ以外の時間を最高の状態で過ごすための代償といえそうだ、とも著者は述べていた。
最後の「特別付録 これであなたも超能力者」には、「暗示にかかりやすい度合いテスト」があった。暗示にかかりにくいタイプの人は、現実的で論理的で、パズルやゲームが好きという。かたや暗示にかかりやすいタイプの人は、想像力が豊かで感じやすく、直観的で、本や映画にのめり込みやすいとか。
私などは完全に後者だし、要するに騙されやすいタイプとなる。尤も暗示にかかりやすいのは女性に多いそうで、若年層ほどその傾向が強いという。男性にはパズルやゲームが好きな人が多く、ゲーム脳と揶揄する向きも一部あるが、暗示にかかりにくく現実的・論理的でもあるのだ。カルトに騙されやすい者よりも、“ゲーム脳”の方が健全だろう。
◆関連記事:「宇宙人の存在を信じる人々」
『宇宙クリケット大戦争』というSFを読んだら、英語の試験で「クリケットのルール」についての英文読解が出たとか。
印象深かったので覚えているだけなのでしょうが。
阪神淡路大震災の時の経験
大学の研究室で徹夜で作業するつもりだったのですが、酷い頭痛に襲われて当日のAM2時ごろ帰宅しました。頭痛で寝られずにいたら、地震が来て混乱が収まったら頭痛が治っていました。
その後、大学の研究室に行ったら、作業していた場所に壁にあった鉄製の本棚が落ちていたのです。
そのまま作業していたら死んでたかも。
# もしかして頭痛で地震予知できるんじゃね?と思っていたのですが、その後は地震と関係ない頭痛ばかりですw
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子供のころから科学が好きだったのですが、超常現象も好きでした。それが本物なら、それを科学したいと思っていました。
一般的に、未知への興味が科学者の原動力なので、科学者は頭ごなしに超常現象を否定しません。
否定するのは、その現象が本物ではないからです。彼らは合理的論理的思考に優れているので、本物ではない場合にはすぐ判断できるのです。だから、頭ごなしに否定しているように(他からは)見えるだけです。
そういえば本書には第六感への解説がありませんでした。私も試験の前日、現実逃避で試験と関係ない本を読んだことはありますが、本の内容が試験の題材にはなりませんでした。読んだのがドゴール暗殺をテーマとした『ジャッカルの日』だから、試験の題材になりそうもありませんが。
阪神淡路大震災の時の経験も興味深いですね。第六感が本書で取り上げられなかったのは、科学的に証明することが難しいから?
科学者ならずとも、人は不思議なことに惹かれるそうです。超常現象が好きなのは、あの不思議感が堪らないのでしょう。
科学者とUFO研究者がバトルを繰り広げる年末の特番がありますが、UFO研究者の主張がデタラメなのは素人にも分かります。科学者からすれば聞くに堪えないにせよ、ムキになって頭ごなしに否定している様子が面白いのです。
ただ、私も内心は超常現象があってほしいと思っています。すべて科学で解明できるのは味気ないですよね。