その一の続き
このドキュメンタリーは、当然だが不世出のボーカル、フレディ・マーキュリーを中心に構成されている。制作年も彼の没後20周年に当たり、 フレディを抜きにしてクイーンは語れないのだ。バンドメンバーに加え、クイーンのスタッフによるインタビューも興味深いものだった。ベースのジョン・ディーコンはこの作品でも登場せず、古い映像が使われていたが、いかに音楽業界から引退したにせよ、改めて残念だと思った。
スタッフによればまだ駆け出しの頃からフレディは、「ポップスターに俺はなる!」と宣言したそうで、やはり成功者は気概から違うのか。もちろんフレディも強気ばかりだったのではなく、凹むことも少なくなかった。それでも落ち込んだ後でも、「俺は伝説になる!」と言い放った という。実際に実現させてしまったのだから、単なる自信過剰とは言えないだろう。大言壮語で自らを奮い立たせていたのだろうか。
ブライアンやロジャーらの新証言も面白い。死後20年目にしてやっと語られる心境に至ったと思われるが、我と自己主張が強く(もっとも他のメンバも同じようなものだが)短気でも、基本的にフレディは優しい人物だったようだ。初の米国ツアーで、ブライアンが肝炎で倒れてしまったエピソードはファンの間でも知られているが、続けて彼はまたも病気でダウンしている。
フレディはこの時、ブライアンをクビにするどころか見舞いに来て励ましたそうだ。それがブライアンをどれだけ力づけたのか書くまでもない。 その十数年後、逆に病身のフレディをブライアン以下メンバーが見舞うことになるのは、誰が予測できただろう。
フレディの付き人にポール・プレンターという男がいた。彼もまたゲイで、フレディと関係があったという。それはともかく、フレディのひいきを笠にきてバンドのやり方に口を挟み、音楽性についても色々注文を付けたようだ。このドキュメンタリーでは語られなかったが、ポールはフレディが恋人たちと撮った数多くの写真を大衆紙『ザ・サン』に売り、大衆紙が嬉々として「All The Queen'men」として掲載したのは書くまでもない。この不心得者はフレディの死の三ヵ月前、彼と同じくAIDSで死亡している。
不可解なのはフレディがバンドに干渉するポールを制止しなかったこと。フレディは何かのインタビューで、恋人の喜ぶ顔見たさについ高価なプレゼントをしてしまうと語ったことがあり、愛人には甘くなるところがあったらしい。ビジネスマンとしても抜け目なかったはずだが、 それもドライには慣れきれなかった彼の気質もあるのか。
80年代初めからゲイの間で奇病が流行しており、フレディに男漁りを止めるように忠告したスタッフもいたが、「それが何だ」とばかり彼は無視 したそうだ。そして罹患、夭折することになるが、発病を先ずマネージャーのジム・ビーチに知らせたが、メンバーには口止めを頼んだことを今回初めて知った。
バンドメンバーを気遣ってにせよ、共に仕事をしていて体調の変化に気付かないはずはない。結局フレディの口から直にメンバーに病気を告げられることになる。メンバーも彼の病気について固く口を閉ざし、嘘を付き通すことを決意する。
既にフレディがAIDS感染したとの噂は駆け回っており、彼の自宅には数百人の報道陣が取り囲んでいたという。中には便所の窓を破り、 カメラを突っ込む者もいたそうで、ロジャーは報道人を「人間のクズ」と謗っていた。彼やブライアンも、女性関係でスキャンダル騒動になっており、ビデオのオーディオコメントでも、「英国のマスコミは最悪だ」と語っていた。
ロジャーはフレディの自宅に着く寸前にその死を知らされたそうで、インタビューに応えながら目頭をおさえていたのも悲しい光景だった。バンド結成から20年目の死であり、以前のブライアンの言葉通り、「兄弟を失ったようで、とても悲しい」のは察するに余りある。
今回のドキュメンタリーでは『輝ける日々』のPVメイキングも入っていた。モノクロだったPVと違い、フレディの病状を隠しようもないカラー映像は壮絶な印象さえあった。分厚いメークでも死相は明らかで、見るのも辛い気分になる。それでも力を振り絞り、仕事に立ち向かった フレディ。その強靭な精神力とプロ意識は何処からきているのだろうか。
DAYS OF OUR LIVES がこの作品の原題であり、まさにクイーンの歩んだ日々を描いたドキュメンタリーなのだ。ジョンが参加した最後の曲となった『ノー・ワン・バット・ユー』の歌詞どおり、「いい奴ばかりが早く死ぬ」。それも運命だったのか。
◆関連記事:「Made In Heaven/フレディ没後20年目」
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私は、「いい奴」でない、某天邪鬼さんに嵌められ、某女王様のCDを買い漁ったものですが。そして、私が買った初期のCDに「Queen Rocks」があり、女王の右も左も分からない頃に、この曲を知りました。
この曲は、ある意味、センチメンタルすぎますし、ある意味、商魂逞しいともいえますね。でも、日々接し、一緒に苦楽を共にして来たメンバーにとっては、私が想像する以上におもう事があるのでしょうね。
(私も、あれから20年が過ぎようとしていた時でも、非常に神妙な面持ちのブラさんにはグっとくるものがありましたし、あれが演技かは分かりませんが、当事者でないと分からない事も沢山あるように思えます)
某天邪鬼さんは分かりませんが、「いい奴」の私は、早く逝ってしまうかも。そして、もしも、50を過ぎて、ダルマ体型になったフレ様も想像しつつ、、、。って、フレ様のそんな姿は、想像できませんね(汗)。
貴方も仰るように、No-One but You は折しもダイアナ妃死去と同じ年に作曲されており、ファンの私さえ商魂の逞しさに舌を巻きました。ロックスターはインタビューでも自然体に見える演技にも長けていますから、演技も少しは入っている?と勘ぐりたくなります。
それでも20年間の間、共に苦楽を過ごしてきたのならば、余人には伺えない想いがあるのは確かでしょう。『輝ける日々』の頃の写真を見ると、フレ様よりもブーさんやロジャーの方が辛そうな表情のものがありました。
フレ様の死の翌年に発表されたブーさんのソロアルバム『バック・トゥ・ザ・ライト』に、「ジャスト・ワン・ライフ/Just One Life」という歌があり、これも No-One but You と同じく亡き友に捧げたものです。ロジャーもソロアルバム『ハピネス?』で「Old Friends」の題の、明らかにフレ様への歌を書いている。どちらの曲もさほどセンチメンタルではありませんでした。
自称「いい奴」ほど、本当はワルだったりしますね(藁)。たぶん某軍艦フェチさんは、軽く平均寿命は生きるような…
寒波・豪雪そちらは、大丈夫ですか…?
本当、ブライアンさん・ロジャーさん、当時語る姿は、結成40年なんだと…
(私も…ロジャーさんの姿には、驚きでした!!)
『輝ける日々』のカラー・ドキュメンタリー映像には、心撃たれました…。
当時を語る二人の言葉にも、表現出来ない心境が表れてて、映像に釘付け。
映像として、言葉するのにも、20年の時の流れが必要だったと感じました…。
以前…フレディー様のソロのライヴ映像と思い、YahooオークションでDVDを購入したら、フレディーと恋人達のドキュメント番組映像で、元恋人達&友達が当時を語る内容で、驚きでした。(QUEENメンバーのインタビュー無し)
彼らのプライベート写真・映像の数々!!(公開して、大丈夫なのか…?)
ライヴの圧倒的なフレディー様でなく、ゲイ特有な動き&言葉使いの彼が存在してました。
賛否は別として…とても、チャーミングでキュートで幸せそうな、フレディー様が存在してました。それが、夭逝の弾きがねになってしまったけど…
これからも、私は、彼程に魂を奮える、歌唱力&才能を持つロックボーカリストは、存在しえない。と再認識する、DVDでした!!!
40年前に、神様より、ギフトを貰った4人が出逢えた奇跡?!必然に感謝です(笑)
これからも、記事楽しみにしています!!!
ここ暫く仙台では寒波が続いておりますが、積雪はそれほどではありませんでした。同じ東北でも日本海側に住む方の苦労に比べれば、大したことではありません。それでも、雪かきはさすがにイヤになりますが、、、
『輝ける日々』にも収録されていましたが、初来日の頃のロジャーと結成40年後では絶句させられました。もし私が十代の頃にクイーンを見ていれば、絶対ロジャーファンになっていたはず。フレ様はやはり毛深すぎて、“毛嫌い”したと思います(笑)。それでも2010年、30歳も年下の女性と再再婚をするほどなので、大した親父ロッカーです。
フレディーと恋人達のドキュメント番組映像というものがあったのでしょうか??実は未だにYahooオークションに参加したことがないのですが、このようなブートものをゲットされたとはとても羨ましい。前に77年のアールズ・コートのライブをゲットしましたが、画質が悪くて…
フレ様は寄宿学校時代から、「ダーリン」「ディアー」など、既にゲイ特有の言葉遣いをしていたそうです。宗派だけでなく性的にもマイノリティでしたが、多くの人に愛される天性の魅力があった。これだけのカリスマ・ボーカリストはもう現れないでしょう。
40年前、個性の全く異なる4人が出会ったのこそ、まさにミラクル!そのドキュメンタリーこそファンにとって、最高のクリスマス・プレゼントになりました。その感想をお互いに語れるのこそ、ネットの良さですね。今後とも拙ブログを読まれて頂ければ幸いです。