その①の続き
続けてさらに2017-12-23付のスポンジ頭さんのコメントには、次の一文があるのだ。
「さらに、例の手術の話ですが、全く裏付けが取れないのだと近頃知りまして、逆に、どうして手術の話が自明の理となったのか、と思いました。ヨーゼフ二世が説得したことになっていますが、彼の手紙では手術の話など出てきません。「二人のやる気の無さ」を原因としているのです。一体何が何やら」
何とルイ16世の例の手術の話は、全く裏付けが取れなかった??ツヴァイクの伝記どおりにベルばらにはこんな解説がある。
「ルイ16世の肉体的な欠陥のために、国王夫妻はまだ完全な夫婦としてむすばれてはおらず、したがって、いまだに少女のままでいるマリー・アントワネットに子どもをのぞむことはできなかった」
結婚数年後も娘夫婦に子供が生まれないことを心配したマリア・テレジアが、息子ヨーゼフ2世を遣わして説得、手術を受けさせたことをツヴァイクは描いている。wikiにもヨーゼフ2世が「新婚夫妻の元に遣わされ、夫妻それぞれの相談に応じ、ルイ16世は先天的性不能の治療を受けた」と解説されている。
スポンジ頭さんは2017-12-29付で続けてコメントしている。
「執刀医も日時も不明です。確かによく考えると、その手の話は一切出てこなかったですよね。オーストリア大使のメルシー(この人は細かいスパイ網を持っています)も現状追認、あの、スペイン大使も同様でしたし」
私の本棚にあるツヴァイクの『マリー・アントワネット』は、初版が1975年12月の河出書房新社の単行本で翻訳は関楠生氏なのだ。改めて本に目を通したが、「寝室の秘密」という章ではルイ16世夫妻の7年間の不毛な性的生活が描かれている。祖父ルイ15世に厳しく問い詰められ、ルイ16世がフランス宮廷の侍医ラソーヌによる診察を受けた結果、彼の不能症は精神的なものではなく、「ちょっとした器官上の欠陥(包皮)に基づくものであることが明らかになった」。
この件で最も熱心だったのはスペイン大使で、大使の秘密報告には詳細な器官上の欠陥が述べられており、それで外科医を呼んで手術を行わせるかどうか、会議に会議が重ねられたことが記されている。母に宛てた1775年のアントワネットも手紙での、「ちょっとした手術を受ける決心をつけさせようと苦心しております」という一文が載っていた。
だが、肝心の手術が何時行われたのか、執刀医の名も著作には記されていないのだ!もしフランス国王がその種の手術を受けたとすれば、各国のスパイを兼ねた外交官が知らないはずがない。こうなると、ツヴァイクは何を根拠に手術説を書いたのだろう?
ただ、手術を受けたか否かは、本当は重要な問題ではない。結婚後7年間も子供が生まれなかったのは否定できない史実だし、王の不能はフランス宮廷はもちろん下町の庶民、他の欧州諸国の王族にまで知られ亘っていたのだった。ルイ15世のように多数の愛人や非嫡出子を持つ王も困り者だが、不能の王はさらに嘲笑され、権威を失墜させたのだ。
アントワネットの不倫説もこれに端を発しており、夫に不満な若い妻が遊び歩き、複数の愛人を持つようになる……と醜聞が広がっていく。「寝室の秘密」で語られる文章は意味深だ。
「一般に人がみとめようと思う以上に多くの世界史的事件が、寝室や帝王のベッドの天蓋のかげにその端を発している」(26頁)
「こういうわけで、この場合、結婚生活上の障害の結果は、個人の運、不運、不幸を超えて、世界史にまでも及んでいるのである。王の権威の崩壊は、実際はバスチーユ監獄破壊に始まるのではなく、ヴェルサイユで始まったのだ」(32頁)
「この寝室のエピソードただ一つが、どんな外的事件にもまして、内側から権威を打ちくだき、瓦解させたのである」(33頁)
ルイ16世の不能症は夫婦関係を決定付け、妻の言いなりになる夫という構造が形成される。ツヴァイクはこれを厳しく描いている。
「毎夜毎夜恥ずかしい思いをし、途方にくれて、こっけいな不能者の正体をさらしているのは、夜が明けたからといってどうして妻の前で亭主面ができようか。男性として無力だったために、ルイ16世は妻に対してまったく無防備のままだった。
それどころか、彼の恥ずべき状態が長くつづけばつづくほど、彼はますますみじめに、完全な従属に、いや、隷属にすらおちいってしまったのである。妻は何なりと欲しいものを彼に要求でき、夫はそのたびにまったく無制限に譲歩しては、ひそかな責任感をつぐなった」(29頁)
もしルイ16世がもっと早く真っ当な夫婦関係を結ぶことができたなら、フランスの歴史は違ったものになっていたのかもしれない。好色家というだけではあまり王は批判されないものなのだ。
その③に続く
昨年後半は何かと忙しくて、自分のブログ更新もままならず、そうなってきますと、何やら書くのも億劫になってしまい、このまま開店休業状態かしらとも思っていましたが、ぼちぼち無理のないよう書いていこうと思っています。
すみません、また個々の記事へコメントを書くべきところ、こちらにまとめて書かせて頂きます。
漢字一文字「老」には考えさせられますね。親の高齢化だけでなく、自分も最近以前よりいろんなことに対して好奇心が薄らいでいるような気がしています。ワクワク感も少なくなりましたし、過程よりも結果を早く得たいというような焦り(?)も感じます。いやいやそれではいけないと思うんですよ、いろんなことへの興味が失われていくようではいけないと…。今年の課題です。
仙台の初売りの豪華さは有名ですよね。私も福袋を買わない派ですので、何故にあんなに夢中になるのかよくわからないのですが、知り合いに「別に中身の問題じゃなく、『福袋』だから毎年一つは買うことにしている」という方もいて、それはそれで楽しみなのでしょう。
福袋に限らず、私も所謂「購買意欲」が年々薄らいでいる気がします。その分「なんでこんなの買っちゃったんだろう」という、勢いと雰囲気で購入し後から後悔することも減りましたが、欲しいものがあまりなくなってきたと言いますか、“これを買ってどうする?”的な経験知なのか、ちょっとつまらない気もします。
私の拙ブログから『戦争と平和』を読まれたとのこと恐縮です。私より深くいろいろ感じ取って下さったmugiさんの記事、興味深く読ませて頂きました。日本の憲法学者についての百田氏の意見には共感するところが多々あります。(神学者云々はともかく…) 憲法は現状に即して必要に応じて変わっていくべきものだと思うのですが、護憲派の憲法学者は「不可侵」のものとし、まさに解釈が仕事と思っているのでしょう。私としては、「せっかく勉強して現行憲法について解釈できているのに、新しい憲法なんて作られたことには、また研究しなくちゃならないじゃないか!」という身勝手な考えもあるのかしらと思ってしまいます。
現行の日本国憲法で、果たして日本国と日本人を守れるのかどうかを本当に考えているのかよくわからない学者達に振り回されるのはたくさんです。解釈として「それは違憲です」と言うのはよいでしょう、でも、そこからどうするのかに対してあまりにも無責任過ぎます。
相互理解は大切なことですが、「他文化強制」は「?」です。留学生は何をしに日本に来ているのでしょうか?異文化を学ぶこともその一つではないのでしょうか。「誰もが心地よく暮らせる街づくり」、大変耳に心地よく聞こえますが、そこに「自分達が住み易いようにすべき」という傲慢さも垣間見えてしまいます。文化が違うことも、生活様式が違うことも承知して来日しているのではないのでしょうか。日本人が他国へ行ってそんなことを言うでしょうか。自分達の文化も大切に思いながらも、その環境に合わせて生きていくのではないかと思います。
冷たい言い方をするようですが、「誰もが心地よく暮らせる街づくり」は自国ですべきでしょう。ムスリムが安心して平和に暮らせることを、他国に求めるのではなく、自分達の国で実現できることが一番だと思います。(本当に難しいことだと思いますが)
ルイ16世、私のイメージはまさに『ベルバラ』留まりで、今回の記事には驚くことばかりですが、一番驚いたのは坂本眞一氏の描いたルイ16世の画像です。坂本眞一氏のマンガを読んだことはないのですが、別冊マーガレット50周年記念の際に、紡木たく氏の『ホットロード』に寄せて描かれたイラストがすごく素敵で、姉に内緒(姉の本でした)でそのイラスト切り取ってきました。特攻服姿でバイクにまたがるその姿、繊細でホント一目ぼれしたイラストです。
『ベルバラ』のイメージとは違うルイ16世、これからの記事も楽しみにしていますね。
とりとめもなく書いてしまいましたが、今年も内容の濃い記事を楽しみにしています。どうぞ宜しくお願い致します。
一応結婚してから三年後に二人は「ゴールイン」しています。マリー・アントワネットが母親に手紙で報告しているのですが、この手紙の存在をツヴァイクは知りませんでした。当時公開されていなかったからです。但し、その後もグダグダとなってヨーゼフ来訪となるのですが。
貴女の最新記事「久しぶりに…」を面白く拝読しました。何年も前から「朝生」は見ていませんでしたが、見なくてよかった(笑)。
本当に酷い出演者ばかりになっているみたいですね。ウーマンラッシュアワーの村本のことはネットニュースで見ましたが、番組での態度は記事で初めて知りました。コイツ、近々仙台講演の予定があります。もちろんタダでも見に行きませんが。
ハハサウルスさんも福袋を買わない派でしたか。私もかつては「なんでこんなの買っちゃったんだろう」と、勢いと雰囲気で購入後に後悔する羽目になったことがよくありました。これが減ったのは「老」にも原因があるのではないか…と思う時があります。色々なことに興味が薄れ、ワクワク感が少なくなったのは私も同じです(汗)。
百田氏の「憲法学者は神学者か」は、氏らしい皮肉に感じました。護憲派の憲法学者が現憲法を「不可侵」のものとするのは、貴女の想像どおり、新憲法が作られると、これまでの学業実績が役に立たなくなることを危惧していることは大いにあり得るでしょうね。
日本に限らず知識人とは自らの言論には責任を取らない輩が多いようです。スターリンや毛沢東、ポル・ポトを讃えていたフランスの知識人も少なくなかったそうで、彼らはそれで責められたことはなかったのです。
相互理解自体が極めて難しいと思います。記事に見る留学生は端から日本の文化を学ぶつもりはないと見ました。マレーシアのムスリム留学生の中には目をギラギラさせ、「日本留学の目的は、イスラームを広めることだ!」と息巻いていた者もいたそうで、インドネシア人も似たようなものかもしれません。
「自分達が住み易いようにすべき」如き暴言は、河北新報やおかしな公益法人が煽っていることもありますが、ならば記事にも書いたように、自分たちの社屋でも礼拝所でも作りやがれ!と言いたくなりますよ。自国でもムスリムが安心して平和に暮らせることが出来ないのに、異教徒の住む「戦争の家」に求めるのは筋違いです。
私もルイ16世のイメージはベルばら止まりでしたが、スポンジ頭さんのコメントで最近は評価も変わってきたことを知りました。紡木たく氏の『ホットロード』という漫画は初耳ですが(最近の漫画には疎いので)、特攻服姿でバイクにまたがるルイ16世のイラストがあったのですか??その発想はお耽美イケメンの設定よりもスゴイ。
私の方こそ、今年も拙ブログをよろしくお願い致します。
何と結婚から3年後、2人が「ゴールイン」していたことも初めて知りました!この手紙のことを知らなければ、7年間もマリー・アントワネットが「乙女」だったと思われて当然でしょうね。せっかく「ゴールイン」しても子供は生まれず、グダグダ状態ではマリア・テレジアが心配するのも無理はない。
すみません、私の言葉が足りませんでした。上記の坂本眞一氏のイラストは、別冊マーガレットに1986年~連載されていた『ホットロード』というマンガの登場人物・春山洋志がバイクにまたがる姿を描いたものかと思います。原作の甘く切ない感じの絵柄ではなく、キリッとした感じでカッコイイのです。
ネット上を探しても出てきませんでしたので見て頂くことはできませんが、その一枚のイラストで知った坂本氏の名前に反応して書いてしまいました。
もしルイ16世がバイクにまたがっていたら…、ホントすごい発想かもしれません。でも、坂本氏の描くルイ16世なら馬にまたがっている姿が似合いそうですね。(未読なので何とも言えませんが…)
特攻服姿でバイクにまたがるイラストはルイ16世ではなく、『ホットロード』の登場人物だったのですね。坂本氏は「写実的で筋骨隆々な男性描写が得意」(wiki)だそうで、キリッとした感じになったのでしょう。坂本氏の『イノサン』の絵はネットで見られますが、処刑人が主人公なのでグロ画像ばかりです。
池田理代子氏の『ベルばらKids』での16世は、相撲大好きという設定にされていました。池田氏自身が相撲好きなそうで、相撲まわしを集めているルイ16世が登場しています。
私がごく軽い気持ちで書いた手術の文章が記事になっていた時は驚きました。馬鹿な事を書いてしまったな、と。とは言うものの、私の知力で高尚な内容の文章は無理なのですが。
実は、CRISPR/Cas9の記事にルイ十六世の話を書き込んだ後、再評価本を購入したのです。購入したのは、「ベルナール・ヴァンサン著 ガリマール評伝シリーズ 世界の傑物3 ルイ16世」、「ジャン=クリスチャン・プティフィス著 ルイ十六世(上下)」です。ついでに「パウル・クリストフ編 マリー・アントワネットとマリア・テレジア 秘密の往復書簡」と言う本も購入しました。この内簡単に読めるガリマール評伝シリーズのみ先日読了しました。結末が破滅と分かっているのでどうしても読むスピードが遅くなります。書簡集はつまみ読み、プティフィス氏著書分は先週から取り掛かりましたが、かなりの分量なのでこちらもつまみ読み状態です。
それはさて置き、「ガリマール評伝」の方を読んでいたら当然結婚騒動が述べられていたのですが、その際、異常ないから手術していない、と言う文言が出てきたのです。これを見た際は驚きました。その時点までルイ十六世の欠陥問題を疑った事はありませんから。
「ガリマール評伝」に基づくと、最初に診察したのはラ・マルティニエールと言う外科医で、ルイ十五世の命令でした。ところが、その際の診断は「異常なし」。1770年7月の事です。二年後に同医師が再診断しましたが、その際も診断結果は変わりません。この時の結果はメルシーにも伝えられています。ここからしてツヴァイクの話と食い違いが生じています。ツヴァイクはメルシーの報告書を重視しているのですけれど。
そこで、私はこの話に根拠があるのかフランス語のウィキペディアを確認しに行きました。結局手術なしと言う見解なのですが、注釈を見るとフランス語版はガリマール評伝を元にして記載されていたので、今度は英語のウィキを参照しました。すると、「現代の歴史家の大部分は手術していないと見ている」と言う文言が出てきたのです。その証拠は例の狩猟日記。安静にしていた期間がないのだそうです。因みに、本日再度確認した所、1772年の後半に複数の医師が「異常を示唆した」とあって分からなくなって来ましたが。でも、ラソーヌは1773年3月に異常なし、と確認していますし、ここに紹介されているヨーゼフの手紙でも「二人が不器用だから」とあるのですよね。外国のサイトは全てグーグル翻訳を使用して確認しています。
そして、狩猟日記が手術を受けていない証拠として挙げられている、と言うのを見た時、カルテなどの医療記録が未発見だと言う事に思い当たりました。手術の有無を言うなら、医療記録の真偽・内容を論じる筈ですから。
ヨーゼフの手紙内容は後に日本語訳の抜粋を偶然ヤフーの知恵袋で見つけて読みました。こちらがその抜粋です。ちなみにこちらの抜粋には「国王は完全な・・・」と言う文がありますが、英語サイトやフランス語サイトで見つけた文章にはそんな文はありませんでした。手元にあるプティフィス氏の「ルイ十六世」にも手紙の内容が記載されてましたが、これにもそんな文言はありません。おそらく知恵袋に記載されている文章の翻訳者が日本語訳の際、補ったものと思われます。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10158960180
国王は「殆ど」目標達成していますし、マリー・アントワネットも「少女のまま」ではない。そして国王の行動は理解に苦しむもので、精神的な抑圧がかかっているとしか思えませんでした。最初読んだ際は呆然としました。その抜粋には記載されていませんが、ヨーゼフは「自分がその場に居て、鞭でぶちのめしたら事は成る」と言う意味合いの事を書いています。要するに異常を認めていない。
ツヴァイクは国王が一方的に彼女に譲歩してきた理由として国王の身体的異常を原因としているのですが、そもそも前提が違えば彼女との関係も異なってきます。だから、手術していない、とはどう言う事か、と思ったのです。
私もスポンジ頭さんのコメントを見るまでは、ルイ16世の欠陥問題を全く疑っていませんでした。読書家のスポンジ頭さんからの情報なので確かだと思い、記事で取り上げた次第です。さらに先のコメント「一応結婚してから三年後に二人は「ゴールイン」しています」には仰天しました。こうなるとツヴァイク説が根底から覆りますよね。
ガリマール評伝シリーズ・ルイ16世の書評サイトもあります。この中で「歴史とは、歴史家が作り上げたフィクションなのかもしれない。蒐集した資料から、何をどう読み取るのか?史実は歴史家のフィルターを通して作り上げられている」、というkeiさんのコメントが印象的でした。
https://bookmeter.com/books/609122
手術なし説の根拠は例の狩猟日記でしたか。カルテのような医療記録があったとすれば、重要な資料となりますよね。しかし未だに未発見の様子。ならば手術の有無を断言出来ないでしょう。にも拘らず、「現代の歴史家の大部分は手術していないと見ている」有様でしたか。身体的な欠陥がなければ精神面が大でしょうけど、やはり不能という印象はぬぐえません。
王妃の金遣いはあの頃では大した事がない、となると、政治に首を突っ込まれるくらいなら、贅沢をさせれば政治から目を逸らせるだろう、と言う心境にこちらもなってきました。この度知ったのですが、国王はオーストリアに相当な警戒心を持っているのですね。それに国王は外交に関しては王妃の介入を拒否していて、言いなりではありません。王妃に面と向かって義兄のヨーゼフを非難するとか。オーストリア側としてはフランスの同盟は意外に使えないものだったのではないかと思いました。
>さらに先のコメント「一応結婚してから三年後に二人は「ゴールイン」しています」には仰天しました。
1773年7月17日の手紙にツヴァイクの時代に伏せられていた箇所があり、その部分がゴールインの話なのです。そして、王太子がまだ人に言うのは止めよう、と言っているのにも関わらず、19日に二人はルイ十五世に報告しているのですね。この部分は8月13日の手紙にあるのですが、打ち明けた部分もツヴァイクの時代には未公開でした。
ここで子供が生まれる状況に至っていればよかったのですが、どうもヨーゼフの手紙を見る限り、「ゴールイン」はしてもゴールテープを切るところまでは到達できなかったのですね。7年間の騒動はアントワネットにも原因があるのじゃないか、とか、最初のトラブルがトラウマになって長引いたのでは、と言う話も出てきていますね。
こちらの2番めのコメントがそれに当たります>原因
https://bookmeter.com/books/609122
正直正しいのかどうか判断できませんが、様々な解釈が出てくるものだと思いました。また、ヨーゼフの手紙を見た後では、スペイン大使の報告書は何だったのか、とも。書簡集でもこのスペイン大使が登場していました。この人物の行動を知ったら腹立たしいだろうなあ、と感じました。
そして、この書簡集ではマリア・テレジアが王妃に対して国王の女友達兼第一の相談相手になれ、とか早く子供をとか、なるべく国王と二人きりで過ごす時間を持つように、と言っており、昔なら両国の同盟関係及び王妃の立場強化の観点のみで私は見ていたでしょう。しかし、マリア・テレジアとメルシーは王妃を使って国王を操る計画を立てていたので、今ではハニトラの下拵えに思えてきて素直に読めません。女帝と大使の印象も変化し、今では冷徹な大国の支配者とその利益代理人、ですね。
また、ツヴァイクは夜遊び他の原因は全てこのトラブルにあるとし、問題解決後、妊娠しない原因としてアントワネットが国王の非協力的な姿勢を母親に報告している手紙を採用していたと思いますが、実際はその後も夜遊びが続き、原因は王妃にある事をメルシーが報告しています。でも、通常ではメルシーの報告を優先するのにこの部分が異なるのは、ツヴァイクの理論の整合性が取れなくなるからだと感じました。色々ツヴァイクも話を「作っている」と思ったものです。
そして、手術となると当時は麻酔なしですから、長身かつ怪力の国王を動かないようにさせるのはそれなりの準備が必要ですが、どのようにしたのかと言う話もないなあ、と思ったりもしました。当時30分程度の手術だそうですが、麻酔なしなので患者の苦痛は大変なものだったそうです。
書簡集、実に面白そうですね!何も言わず、4億円ほどのダイヤの代金を渡すとは、さすが大国フランス王はスケールが違います。それでも王妃の金使いの荒さは大したことがなかった??これだけでも当時の王侯貴族の乱脈な金遣いが伺えますね。こうしてみると王妃への「赤字夫人」という綽名は、不当だったように思えてきました。
仰る通りアントワネットが外国人だったことが不利に働いていますが、国王が公妾を持たなかったことを指摘していた人がいました。贅沢な妾がいれば、国民の非難はそちらに集中され、王妃は攻撃されにくい。国王が妻一筋だったのは、返ってアントワネットを不幸にしました。
そして国王は、オーストリアに相当な警戒心を持っていたことも初耳です。歴史教養のある王だから、オーストリアに警戒心を抱いても不思議はありません。さらに王妃に面と向かって義兄のヨーゼフを非難していたとは…
王妃には何も言えない国王、というのはツヴァイクが作りあげたルイ16世だったようですね。外交では決して王妃の介入をさせていなかったのですか。あの逃亡事件も王妃に引きずられた印象が定着しています。
ガリマール新評伝シリーズの2番目は女性のコメントですが、「公共交通機関で読まなくって良かったと幾度か思った」という一文から結構なラブシーンがあったようですね。ツヴァイクの時代にゴールインが伏せられたいたのは、性的表現の厳しかった当時は普通かもしれません。公開されていたならば、ツヴァイクはどのようにアントワネットの夜遊びの原因を説明したでしょうね。尤も書簡集が公開されていれば、あのアントワネット伝は書けなかったかも。
マリア・テレジアの書簡も、今までは両国の同盟関係及び王妃の立場強化+母親の愛情というイメージが強かったです。しかし、娘を使って国王を操る計画を立てていたのですか??もちろん母親としての愛情は持ち合わせていたにせよ、母よりも国母のほうが大事だった。さすが大国の老獪な政治家らしい。
あのフェルセンも、スウェーデン王により革命阻止のためにスパイとして送り込まれていたし、スウェーデンの国益に繋がるようアントワネットを操る目的があったのは確かでしょう。尤も彼は愛に本気になってしまいましたが。
18世紀後半の例の手術は30分もかかるものだったのですか。麻酔なしで30分、しかも局所では殆ど拷問のようですね。身長192㎝の巨漢相手では、抑え込むにも何人がかり。改めて麻酔の発明に感謝です。